まさか転生? 

花菱

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「どりぇい?」

 この世界に奴隷いるの? なんだかなぁ……

「ご存じありませんか? 奴隷にはいくつか種類があります。犯罪奴隷、戦争奴隷、借金奴隷ですね。
 私どもで色々話あって考えたのは、借金奴隷です。それもギャンブルなど自分達の楽しみのための借金ではなく、家族のため生活のために借金するしかなかったという者をお勧めしたい。
 まだ3日しかたっていませんが、エアさんの下で働くには口が堅い者の方が良いでしょう」

「奴隷とは言葉は悪いですが、特に借金奴隷の場合は人材紹介所のようなものとお考え下さい。
 奴隷側からある程度購入者に関して条件を付ける事も出来ますし、衣食住の保障やケガ・病気の際の治療の権利、適度な休みの権利があります。
 また契約中に知りえた情報を漏らしてはならないことになっており、契約終了後も継続されます。
 購入者側も、契約に無い不当な事をさせたり、奴隷の権利を侵すようなことがあれば当然罪になり罰せられます」

「奴隷購入とは魔力を使用した契約ですので、契約違反を犯せば一目瞭然なのですよ。
 そして今回エアさんの下にお勧めしたいのは、一家族全員が奴隷になっている者たちです。この場合離れ離れにならずに済んだ事と、自身の買戻しが済んだ後の生活を考えるのか、とても良く働いてくれますし不利益になることもしません」

「もし奴隷以外となると、正直……金に目がくらんで情報を外に流すような者も出てきやすいんだ。
 奴隷ってのに抵抗を感じる部分もあるだろうが、考えてみてくれないか?」


 ギルマスさん達の説明はわかった。でも……奴隷ってのがなぁ


「エアさん。店舗を持つには従業員を雇う必要があり、奴隷も働いていずれは自身を買い戻したいと願っているんです。
 ですからギルマス達の言う一家で奴隷になられている方達がいて、契約しても良いと思える方達であれば、買い戻すための手助けと考えてみてはどうでしょうか?」

 わたしが抵抗を感じている事に気が付いたカイルさんが、助言をしてくれたが手助け?

 人材紹介……契約……雇用……雇用契約? 奴隷って考えなければ? 仕事と住む場所を準備して、雇用契約を結んで、賃金を払う。住み込みか社員寮みたいな感じか?
 わたしの考え方の問題か!?


「おにゃじいえにしゅむひちゅようがありましゅか?」

「どこか別に住む場所が準備できるんですか?」

「てんぽけんじゅうきょは? かじょくにゃりゃ、かじょくでくりゃしたいはじゅ」

「一軒家を持たせるおつもりですか!?」

「ん? おみしぇしゅりゅにょは、たいへんでしゅよ? けいやくがありゅにゃりゃ、だいじょうびゅ? ちやう?」

 ……おやあ? みんなどうした? 男の人同士で見つめ合っちゃって……やだぁ~。あ……すみません。

〘エア……何かおかしなことを考えている顔になっていたぞ?〙

『あらやだ、考えてたことバレた!? だからみんなに睨まれたのか!』



「確かに契約していて、衣食住・治療と休みが約束していただけるのでしたら問題はありませんが……」

「ところで、店舗に良い場所ってのは?」

 ザックさんは、わたしの考えに賛成なのかサッサと店舗の話を変えてくれたし、他のみんなも賛成みたいで、なんだかニコニコしてるのを見ると、わたしの考えは間違ってないみたい♪



「屋台通りの平民街に近い場所なんですが、現在は2軒続きの空き家なんです。
 2軒続きとは言っても大きくないので2軒を購入して改修・修繕すれば店舗と住居になりますし、エアさんのアイデア商品の多くも取り扱うことが出来ると思います」

 2軒続きの空き家? なんか最近聞いたような……いや見たか? 気のせいかな!?

「それってさ~、結構高額なんじゃないの~?」

 そうだよ2軒もの家を買うとなればとんでもないよね、普通!


「それがですね、長い間空き家だった事で見た目ではそれほどハッキリと傷みはわからないんですが、中がかなり傷んでいまして、とてもそのまま売り渡す事が出来ない状態なんです。
 すべて建て替えていただいても良いので、2軒同時購入をしていただけるのなら、2軒分の土地代だけで結構です。正直なところ、立地は良くてもあれでは買い手はつきませんから」

「あそこが2軒の土地代のみで? 店舗にすれば、屋台通りと平民街の通り道にある以上、利用する人が多そうだな」

「かなり良い場所じゃない~?」

「どうですか、エアさん? 建物は何とかなりそうですし……」

「……安くて……好きに出来る?」

 ライルさん……今……あなた……今何とおっしゃいました~!? 好きに出来る~!?

 そうよ、この家や別荘みたいに1から10まで、いいえ! 100まででも思うがまま! 多少はセーブする必要があるけど……でも、あんなことやこんなことが……

「ぐふ、ぐっふっふっふ、ぐへへへ~」

「「「「うわ~~、きもちわる!」」」」

〘エア、さすがにそれはちょっと……ないな~〙

「「「だ、大丈夫ですか?」」」

「うわっ! おい、エア? 大丈夫か、顔気持ち悪いぞ!? 頭おかしくなったか!?」

「なんでしゅか!? みんにゃ、しちゅれーでしゅね! しょんにゃこちょいうと……(ニヤリ)パリパリパリ……」

 もうあげませんからね! まったくもう、失礼しちゃう! 気持ち悪い~とか、頭おかしくなったか~だなんて、こんなに可愛い3歳の幼女に対して言う言葉!?

「「「「「「「「〔うわーーー!! 待って、ごめん、悪かったからーー!!〕」」」」」」」」





「「「「「「「「あ~、美味いな~」」」」」」」」

〔この塩加減が美味いな!〕

 まったくわたしも甘いな。でも美味しいものはみんなで食べるほうがもっと美味しいし、仕方ない。


「「……あの~、ビャクさん……今しゃべりましたか?」」

 しまった! 商業ギルドのビクターギルマスさんとハリスサブマスさんには、ビャクのこと説明してなかった!

〔言っていなかったな、我は神獣フェンリル、エアと契約を交わし名を貰い家族となった者だ〕

「「神獣!?」」

「あ~、言ってなかったな。そう言うことなんで、家族のエアを利用したり危害を加えられたら……な?」

「家族……危害……神獣!?」



 改めて異世界からの転生以外の話をちゃんとしたら、しばらく4人とも固まっちゃった。



「それでどうする? 場所はわかってるし、土地を買って奴隷と契約するかしないか決めるだけだぞ?
 俺はどっちを選んでも賛成する、それで何かあれば全力で守る。だから思うようにすると良い、もちろん間違っている時は止めるし怒るぞ?」

「オレはしたら良いと思うけどな~。勿体ないもん」

「私も同じです。身を守るためには全てを隠すより、実力を示した方が良い場合もあります」

「……良いと思う……何かあっても守る」

〔何があろうと必ず守る。思うようにするが良い〕

 ヤバい、みんな見た目も中身もイケメン過ぎですよ~!


 どうする? もちろん頑張るって決めたけど、そんなに大きな事が出来る? でも農場は稼働し始めた……
 
「……やりまちゅ! がんばりましゅ、よりょちくおねぇがいちまちゅ」




 それから、お店を始めると作物を農場から収穫して店舗へ運ばなければならないが、それは今後奴隷が決まった際に孤児院と改めて話し合う事にして、全員でどんなお店と住居はどうするか、奴隷を購入したら賃金・食事等どうするかなどの相談とアドバイス、また注意すべきことを説明(特にわたしが常識を知らないから全員に力説)された。
 
 店舗契約は、商業ギルドの2人が職員全員に候補地として通達しているとのことで、正式契約は明日ギルドで行えばいいらしい。

 ただ奴隷商へはわたし達5人とビャクだけで行くのだろうと思っていたが、なぜか今集まっている全員で明日行くことに……なぜだろう?



 今回の話し合いで決まった事は、
 ①店の場所と従業員として奴隷を購入すること
 ②商品として、農場の作物は予定通りだが、ポーションとポーションではない薬(飴ちゃんとか完成したらシャンプーとか)あとお菓子
 ③お菓子にしても、薬にしても何か作ったら、今集合しているメンバーに報告する
 ④作物、ポーション、お菓子と販売予定の物が多いので、もし可能であれば2家族購入した方が良いかも?



 ギルマスさん達はまだ仕事があるって事で、しばらく話し合いして帰っていった。



「⦅別荘に行って、向こうで店舗作っちゃダメかな?⦆」

「店舗を作る? あ~、この家みたいにか……じゃあ、今ある建物は解体するのか」

 2階リビングに扉を出して移動。

「はぁ~。ここはホントにキレイだな」

 そうだね~、昼前にも見た景色なのに、全然飽きないもんね。




 別荘から少し森寄りの広場に集まって、どんな建物にするか相談中……さぁ、どうしよう

「どちらにしても人が住める状態にないそうですから、問題ないでしょうがくれぐれもやり過ぎないように!」

「エアちゃんは、加減を知らないからね~」

「……2か所……分けるの?」

〔エアの店なら、守りはしっかりする必要があるな〕

「やり過ぎたり、無理するなよ? それで、どんな感じにするんだ?」

 時々失礼な言葉が聞こえるのが気になるけど!

「⦅う~ん、そうだな~2か所か~。うん、分けようかな? 2家族を雇うとなったらそれぞれの生活スペースがある方が良いと思うから、2階に上がる階段は1つにして左右に家族で分けよう。
 作物販売はどうしても商品の陳列が広くなるから半分よりちょっと広くして、ポーションその他はその残り部分。在庫置き場が必要なのと、休憩室それから……⦆」

「「ふんふん、なんか聞くだけでも良さそう」」

「……エアの店……思うようにすると良い」

「そうだな……良さそうというか……良すぎじゃないか?」

 ん? ザックさんどこ見てるの?

「⦅よーし。じゃあ作るよ!⦆」

〔エア? あそこにあるのは何だろうか?〕

「⦅何? ……え? 本当に……何!?⦆」

「良かった、俺だけに見てるのかと思った!」

 ザックさんとビャクは気付いてたの? 一体何度目だろうか……ちょっと想像を膨らませただけなのに……考えた通りだから問題はないけど!




〔おお! エア。薬草があれからまた育って増えているぞ!〕

「⦅うわ~! いっぱ~い。これだけあれば色々作れるよ! 楽しみだね♪⦆」

 予定外にも店舗が早々に完成しちゃったから、こうなったら色々作ってみよ~!

「何を作ってみるって?」

「⦅普段売ってあるポーションの改良……かなぁ? 出来たらだけどね!⦆」

 飲まなきゃいけないのに飲めないんじゃ……薬らしく不味くても良いけど……



「美味しいものに頼む!」

「⦅ううん。美味しいのにはしないよ? 薬だからね、でも飲める味にはしたいな~⦆」

「じゃあ~、苦くても良いから、ちょっと甘いのか?」

「スッキリしたのはどうです?」

「⦅難しい、でも頑張ってみるね。ほんの少しでも飲みやすくなれば、ポーションにたいする抵抗感が少しはよくなるでしょ! あとは、ポーションの代わりになる薬っぽいものの開発も♪⦆」
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