まさか転生? 

花菱

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 あの後何とか少しでもあっさりで……と作った肉料理は、オオネをおろしかけたり、塩味にしたり頑張った甲斐があって大好評の朝食となりました。


 子供たちの到着を待つ間に、ビャクと話し気になった事の確認も済ませて一応の今日の予定を相談してみたら、初日な事もあり、子供達もギルドもいつ訪ねてくるか分からないので、今日は転移はしない方が良いだろうと決まった。
 そりゃそうだよね、初めての事に挑戦するんだもん。

 みんな手探りで確認しながらの作業になるのは当然で、そうなると計画したわたしに聞きに来ることになるのかぁ……思い付くままに行動したけど結構大変かも?
 まあ、孤児院の事とか後悔はないけどさ!


「⦅ちょっとメープルの森に行ってくるね? 樹液採取に取り掛からないと、あれは時間が掛かるからね~。それから果樹園にも行こうかな?⦆」

「……一緒に行く」

「樹液採取が気になりますね。手伝える事があるかもしれませんし私も一緒に行きましょう。ザック達はどうします?」

「「行く!」」

「⦅じゃあ、早速転移で行こうか!?⦆」




「⦅どうやる?⦆」

 いきなりの私からの質問に、みんなが戸惑ってるのが分かる……当然か、樹液採取の考えが無かったんだから知る訳ない

「「「「……え?」」」」

〔知らないのか!? エアが知ってると思ってたんだが……〕

「⦅わかるんだけど、道具がね?⦆」

 イメージとしては、木の幹に穴を開けて、穴に刺す筒と容器に樹液を入れるホースを付ける口のあるL型のノズルなんだけど、ホースが無い……金属でするか? でも金属なら外で使うんだからステンレスだよね~。
 ホースって何とかならないのかな? ゴムの木ってないかな……あれあると全然違うと思うんだけど……。

 他に必要なのは樽? …………防水加工した木でストローと樽を作ったらいいかも!? でも木だとストローが曲がらないから動かすのがなぁ。

  

「うわ~、あれ、絶対にまた気付いてないよね? ビャク、これって今までもこれからも起こることなのかな~?」

〔慣れるしかないな……おそらくエア自身も同じだろうが〕

 集中してイメージしてると周りでみんなが話してるけど、呆れた感じの声に聞こえる……?

 集中してイメージ? 今までにもあった気がする……こんな時って、決まって想像した物が目の前かインベントリに、違うインベントリの場合はお知らせ音がした!


 そろりと目を開けてみる……助かるよ? 助かるけど……ね?

 想像した物と寸分違わぬ……どころか、想像以上の品が目の前に並んでる。

 《樹液採取器具》 製作者 エア・ルミナード
 庭にあるゴムの木の樹液とユグドラシル、ステンレスを使用。
【防汚・防水・破壊不可・サイズ自動調整・空間拡張・軽量化】

 あるんだ、ゴムの木……知らなかった。後で見に行こう♪


 道具も揃ったし早速取り付けて……鑑定さん素晴らしい仕事です。どの木のどこに穴を開ければいいか最適な所を教えてくれる♪
 ただ指示通りにしていけばいいなんて簡単!

 木々には穴をあける事と樹液をもらう事で、お願いとありがとう・頑張っての意味で抱き着いておいたが、気のせいかな? 樹液の出が良くなったような……。

『無理しなくていいからね~』

 この樽はサイズも変わるし拡張されてて見た目以上の大容量なので、夜までこのままにしよう。



 ゴムの木の林がありました。果樹園とは逆だったので気付かなかったんだね~


 果樹園にもあったよパナプルが! ぐふふ、たべるのもかんたんだからうれしいね~。パナプルとミイカンを沢山収穫して缶詰みたいなシロップ漬けにしよう。シロップ漬け好きなんだよ~、あの甘みがたまんない♪

 みんなで夢中で収穫してたら訪問者の通知を受けたので、転移で移動……超便利だ転移!!


「おはようございます。すぐに場所わりましたか?」

 孤児院のメンバーは院長先生をはじめ全員がそろってる、場所と、仕事内容の確認があるからだろう。でも、商業ギルドと冒険者ギルドのギルマス・サブマスが揃う必要があるの?

「なんで冒険者ギルドが~?」

 アーロンさんも同じ疑問を持ったみたい

「おはようございます。すみません、昨日ハリスから話を聞いてギルマスと孤児院に行ってたんです。
 こんなことになっているとは思わなかったので、正直驚いています」

「昨日ここの領主は良い貴族だと説明したのになぁ。俺としても正直残念な事だが、今回孤児院との契約については話を広めるつもりはないし、もし実際に話が進み始めたら領主に気付かせるための策を商業ギルドのビクターとも相談中だ」

「徐々に孤児院の運営が厳しくなってきているのは様子を見ていてわかっていたのですが、まさか打ち切られたとまでは……領主様には何度もお会いしているのに……。
 我々もとても我慢出来る事ではないので、ブルックとも話し合って思い知らせることにしました。
 ハリスが話したという店舗計画進めましょう!」


 なんだか疑問があるけどギルマス達が話している横で、孤児院のみんなは……


「こんな……すご……農場? ここで働くの? え!?」

「ひろ~い! いろいろいっぱいある~!」

「あら? これ今の季節に……出来たかしら?」

「うわ~! 大きいシロナだ~」

 孤児院の子供もお世話をしている大人(院長先生を含め)4人は、広大な敷地に広がる畑とそこに育っている作物を前に興奮と驚き……。


 おや~? 真っ赤な宝石がわたしを呼んでますよ?

「みんにゃ~、きてくだしゃい! こりぇ、イチゴでしゅよ。まっかでおいちちょ~♪
 きょうだけ、とってたべていいでしゅよ!」

 これは……食べなきゃダメでしょ! もちろん、今日だけね!


「「「ほんと!? いいの!?」」」

「「「「だめでしょう!?」」」」

「あじみ? ‹わたちもたべたいち?› きょうだけ! やくしょくちまちゅ!!」

 孤児院の先生たちがビックリして反対したけど、今回だけ!

「くくく、どうしてもエアさんは食べたいらしい。いいですよ、ただし今日だけです。食べ過ぎはいけません、そうですね……1人5個です、約束できますか?」

「「「「「「は~い、やった~!!」」」」」」

 わたしの小さな声を聞いたカイルさんが、代わりに許可を出してくれたので子供達と一緒に大喜び♪ 5個と制限されたけど食べられるなら満足!

「「「「「おいし~! あま~!」」」」」」



「本当にいいんですか!? これは売るのでは?」

 先生たちは許可が出たのにまだビクビクしてる。

「いんちょうしぇんしぇ~、きょうだけでしゅよ? おいちいのあじをちることみょ、だいじぃ!
 はい、あ~ん!」

「あ、あら、でも……」

「あ~ん!」

 何とか無理やり口に詰め込むことに成功! しかも相手は院長先生……ぐふふ、これで反対は出来まい!

「「「「なんて甘いの!?」」」」

「今までにも食べた事はありますが……こんなに甘かったかしら?」

「ここまでの甘さは初めてです!」

 先生たちも商業ギルマスも甘さにびっくり。でも本当に

「おいちいね~♪」

〘おお! とても甘いのだな、初めて食べたが美味い♪〙
 


「ここには見ていただいておわかりのように、野菜と向こうには果物がなっています。これらの収穫をしていただきたいんです。もちろん休憩をしながら無理せずにで構いません。
 今はいませんが、いずれは生き物も育てていきたいんです、そうなった場合のお世話も……と考えています」

「お世話と収穫をして子供たちが1日銀貨1枚もいただけるんですか!?」

「収穫した物もいくつか差し上げます。賃金は毎回にするか、しばらくして孤児院が落ち着くようでしたら日にちを決めてひと月分のお支払い……という事にも出来ますので相談なさってください」

 昨日の段階で子供たちは、自分達でも出来る仕事で先生達の助けにもなるなら頑張ると言っていたので、話はトントン拍子に決まっていく。


「はりしゅしゃん、こども、ぎんいちまいちょだいどうしゃんまい。おちょにゃ、しゃ……ぎんにまいちょだいどうりょくまいにへんこうでしゅ!」

 賃金の値上げには反対ではないみたいだけど、多すぎはダメみたいで両ギルドと蒼の剣の目が怖かった……ガクブル


「「「「えっ!?」」」」

「よろしいのですか? では子供1人1日銀貨1枚と大銅貨3枚、先生方は1人1日銀貨2枚と大銅貨6枚になります」

「お待ちください! 栽培と収穫で銀貨1枚と大銅貨3枚? いくら同じ事をするにしても付き添う大人が銀貨2枚と大銅貨6枚とは……もらい過ぎです!最初のお話でも多いと思っていたんですよ?」

「ですが……オーナーの希望ですし?」

 もう決定です、諦めてくださいね?

 話し合いの結果、今月と来月は日々の支払いで、再来月からは月終わりに支払いとなりました。食生活が落ち着くまで日にちが掛かりそうだもんね~。

「体調が悪い時は絶対に無理してはいけませんよ? もし無理して働くようなことがあれば……ひと月仕事は禁止します。早めに体調を整えて頑張ってください。
 ひと月禁止にするのはその方だけではありません、全員ですからね?」

「全員ですか!?」

「はい。オーナーの意向です。簡単な話、無理をしなければいいんです。それでは今日から働いていただけますか? 院長先生、孤児院にて契約を行いましょう」

「「「「「よろしくお願いします!」」」」」



「いんちょうしぇんしぇ~、こじいんもどりゅ?」

「はい。私と他にも二人、戻りますが?」

「いっちょいってい? じゃっくしゃん、らいりゅしゃんいってきま~しゅ」

「気をつけてな? アーロン、カイル、ビャク頼むな」

「……いってらっしゃい」



「では本日より、子供たち16人、院長先生を含め大人4人で31200Gをお支払いしますが、お1人ずつにお渡ししますか?」

「あの? 付き添う大人は1人ですのに、本当に4人なのでしょうか?」

「オーナーであるエアさんの意向ですが、ご説明しましょう。
 子供はもちろん農場で仕事を行います、ですが大人は付き添いが1人であと3人は農場で働く者の為に生活環境を整えるのが仕事でしょう?
 生活環境を整えてくれる者がいるからこそ、子供たちは農場で頑張れる。皆がそれぞれ割り当てられた仕事を行っているのだから当然の報酬とのことです」

「エアさん……あの方は、一体……なぜここまで良くしていただけるのでしょうか?」


 孤児院の一室でハリスサブマスと院長先生が、そんなことを話しているとは想像もしていないエアはというと……

「⦅どうしよう? 絶対ダメ~?⦆」

「駄目でしょう。誤魔化しようがないですよ」

「⦅じゃあ、やっぱり復元か~、でも無いのは……⦆」

「作るしかないよ~」

〔⦅ここで暮らす者のためには必要だ⦆〕

「では……あのくらいの大きさで、順番でいいですからね。あとは分けた方が良いでしょう」

「⦅ふむふむ……了解!⦆」

「じゃあ、全員建物から出て貰いますね?」




「エアちゃん、全員建物から出たよ~」

「は~い!」

 壊れ、崩れている所はそうなる前の新しかった時のように、すきま風の入らない綺麗な状態。お手洗いは浄化とクリーンで清潔に。みんなの寝る場所は暖かく清潔で、ぐっすり眠れるように。キッチンもクリーンと浄化で清潔に。食材保管庫は……内緒で時間停止。

 注意すべきは、今後何があるか分からないから外側は変えないって事。

 今までと違うのは……あまり大きくはないが1か所、増築するところかな?
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