まさか転生? 

花菱

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 地魔法で作り出した岩の的に近づいた4人とビャクから大きな声が上がるが、わたしが放った魔法は皆が使った《火矢》を無詠唱にしただけのもの。

 4人は焦げ跡だけだったりちょっと削れていたりだったのに対して、その威力は一目瞭然で1センチ程度の穴が開いていてしかも貫通しているのだから、正直驚くのは無理もない。わたしも正直ここまでの違いが出るとは思わなかったのでちょっと引いた……。


「こりぇは、みんにゃとおなじまほうでしゅ。じぇんじぇんちがうでちょ?」

「同じ!? 火矢なのか?」

「しょうでしゅ! ただえいちょうはちてましぇん」

「詠唱してないのにこの威力なの?」

「普通詠唱しなけれは威力が落ちるはずなんですが……」

「……これがイメージ」

「しょうでしゅ。しゃっきのまほうの、《ひ》をみしぇてくだしゃい」

「え!? 飛ばさずに?」

「だいじょうぶ、いめーじでしゅよ。ちんぱいならまとにむけてためちてくだしゃい」




「うう~ん。飛ばさないってなかなか大変だ~」

「……飛んでく」

「できた! エア見てくれ、これが俺の《火》だ! ああっ!」

「エアさん、私も出来ました。……あ~、消えてしまいました」

 攻撃魔法を発動したまま手元に留めるのが難しいらしく苦戦しているが、徐々に感覚が掴めてきたようで、互いに意見交換しながら挑戦しているので、上達が早い。



「「「「出来た!」」」」

「おめでちょう! みんにゃ《ひ》をよくみくらべちぇくだしゃい」

「見比べる?」

「こりぇが、わたちの《ひ》でしゅ」

 …………

「青い? なんでだ?」

「うわ~、きれいだね」

「同じ《火》なんでしょうか?」

「……不思議」

〔本当に不思議だが、間違いなく《火》のようだ、なぜ色が違うのかわからん〕



 みんなが口々に疑問を呟いて、違う物なのではないかと心配する気配も感じ始めた所に、ビャクの言葉でさらに混乱。
 確かに同じ《火》で色が違うなんて知らなかったら驚くよね。順番に説明した方がよさそうなので




「もういちど、よくみててくだしゃいね」

 再度《火》を発動するが今度は皆と同じように、赤い火を作り出す。



「今度は同じ色ですね」

「みんにゃは、こにょいりょでしゅね? よくみててくだしゃいね、ちゅぎはこりぇが……」

 酸素を送り火力をどんどん上げていくことをイメージすると、火の色が赤色→黄色→白色→水色→青色と色が変わっていく。


「「「「〔色が!?〕」」」」


「なんで色が変わるんだ!?」

「同じ《火》なんですか? 違う物では?」

「こりぇは、ひにょおんどがたかくなりゅように、いめーじをちていましゅ」

「温度が違うの?」

「みんにゃのひは、いちばんおんどがひくいんでしゅ、しょちておんどがいちばんたかくなりゅとあおでしゅ。
 いりょのちがいで、こうげきのちがいをみてみまちょう」

 足元に温度の違う《火球》を温度の低い物から順に落として見ると、うっすら焦げた感じの物から一気に加わった高温で石が割れる物、どろっと溶けたりと様々で、溶けた物は熱が冷めると、部分的にガラス化している所もあった。



「温度の違いで色が変わるといっていたよな? ただ温度が違うだけでこんなにもハッキリと違うのか?」

「俺達のとエアちゃんの攻撃が違うわけだね~」

「そうですね、ただの焦げと溶けるのでは全く……」

「……青い火なら……素材が守れる?」

「「「!!」」」



「しぇいかちゅまほうでみょ、こまかくいめーじしゅるといりょいりょできまちた、しょれといっちょでしゅ。
 どんにゃまほうも、こうげきにもまもりにもなりゅんでしゅよ。
 あちょこをみちぇくだしゃい、くだもにょがありまちゅ」


 少し離れた木にブドウ発見!
 以前桃を見つけた時は水と風を使ったけど、今回は思い付くものを順番にやってみよー

 まずは水魔法から。水で包み洗いながら《水刃》《水弾》《高圧水》で取り、風魔法で手元に。次は風魔法で優しく浮かせながら《風刃》《風弾》を。
 残りの火魔法と地魔法は中々果物の採取にはむいていないので水や風で支えながら採取。




「「「「ええ!?」」」」

〔相変わらず不思議な魔法の使い方を……以前も見たがなんとも……〕

「しゅべては、いめーじでしゅ! いめーじがあれぇば、なんでもできましゅ!」

「イメージ……確かに生活魔法でもイメージ次第で今までしたことがない事が出来ました……」

「ああ。思い付かなかった事も理由だが、これからは色々試してみるか!」

「……また教えて」



「イメージ……イメージ。ねえ、何でさっき《水刃》じゃないのに切れたの?」

「みじゅを、ぎゅう~っとほしょ~く、でみょ、ちからじゅよくだしゅんでしゅ。しょちたら……」

 地魔法で近くに岩の的を作り《高圧水》で切断。

「こんにゃこちょもできまちゅ。ちゅかいかたでしゅよ♪」

「岩が切れた!? 水で?」

「すごいね~♪」

「……僕も出来るようになる」

「頑張れば私達にも出来るようになるんでしょうか?」





 そんなこんなで魔法の練習にもやる気が出て、料理の時は練習を兼ねて手伝ってくれるし暇を見つけたら、互いに話し合ったり質問されたり。

 その甲斐あってドンドン上達して、移動中に遭遇した魔物に対しても以前はほとんど剣や槍が中心の戦いだったのに、魔法の威力が上がってきたことで4人共が余裕をもって躱し、魔物の素材も最小限の傷に抑えるなど冒険者としての能力も向上。

 魔物との闘いで効率がよくなると、それまでは常に慎重に移動していたのにも変化が起こり、油断はしないが魔物との遭遇を必要以上に恐れる事がなくなった事で移動もスムーズで、良い事ばかりと全員で大喜びしながら気付いたらもう街が目の前に。



 カイルさんに聞いた説明では大きな街で名前はザーリアだったよね? どんな街なのか楽しみ♪
 
 入街の列は貴族や大きな荷物の商人は別の列があるらしい、それでも2列あり、かなり並んでいる。最後尾に並び順番をおとなしく待つ間に何をするか考えておく。

 冒険者ギルドにあの悪い人達の事を説明しないといけないし、魔物の買取もある……登録もしなきゃ! あと宿はちゃんとビャクも一緒にいられる所を見つけないと……



 ぐふふふ……初めての場所に行くのもビャクと蒼の剣のみんながいるからか、不安とかよりワクワクしてる方が大きいのが自分でもわかり、ついつい顔がにやけてしまう



『ビャク街に入るよ~、楽しみね~』

〘側を離れるなよ、どんな者がいるか分からんからな〙

『わかった! なるべく背中にいるね? 宿も良い所があると良いんだけど……もしなかったら、街の外にテント張ればいいかな? 名案じゃない!? あとでみんなに相談しよ~』

〘エア、イヤーカフで伝えればいいのではないか?〙

『おお! ビャク頭良いねぇ! そうだね~』



「⦅みんな~、もしビャクと一緒にいられる宿が取れなかったら、街の外にテントを出しちゃダメ?⦆」

「⦅いいなそれ!⦆」

「⦅最初からそれでもいいんじゃないの?⦆」

「⦅どんな宿より、テントの方が充実していますし、落ち着けるのでいいかもしれませんね⦆」

「⦅……素晴らしい、名案!⦆」

「⦅よ~し! そうと決まれば今日の用事が済んだら、門が閉まる前にサッサと外に出よー♪
 ビャク~、今日もテントだよ! 一緒に寝ようね~⦆」



「次どうぞ!」

 順番がやってきました!

「お! 依頼は完了したのか!? ん? その狼?……と女の子は……」

「おい!? 蒼の剣か? お前ら生きてたのか!?」

「蒼の剣!? 本当だ! 無事だったのか……良かったぁ」

 最初に誘導した門番さんの周りにいた仲間の人達が、ザックさんたちを見て騒ぎだした。
 この騒ぎ方は……逃げた人たちがあることない事言ってるのかも?
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