夜が明けるまで嘘を抱く

雛菊ニゲラ

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第一章

1-5 なりきり *

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 部屋の電気を消して、上裸にさせた壱星をベッドの上に押し倒す。

 薄暗い中に浮かび上がった白い肌を、鎖骨から腹の方にかけてゆっくりと指先でなぞる。

 壱星は骨格が華奢な上に脂肪も筋肉も薄く、ひねれば千切れそうなくらいひ弱な見た目をしている。

「重森先輩……あの、くすぐったいです」

 しかし、その実、意外と大胆なところがあり、体力や性欲は人並み以上――少なくとも俺以上ではある。最初にセックスを誘ってきたのも壱星だ。滾るような生命力が、薄い肌に透ける血管を流れているのが見える気さえする。

「砂原、俺に抱かれて嬉しい?」

 胸元にあるピンク色の突起を爪で軽く挟むと、壱星は小さく吐息を漏らしてから俺の首筋に手を伸ばした。

「……嬉しいです。先輩、俺……こんなの嘘みたいで……」

 嘘か。まさしく嘘なのに。上手いこと言ってるようにも聞こえるけど興醒めする。責めるような気持ちで摘んだ部分をねじりながら引っ張ると、壱星の体が大きく仰け反った。

「あぅっ……い、痛い……」
「嘘じゃないから。冷めるようなこと言うなよ」
「は、はい……ごめんなさいっ、重森先輩っ……」

 壱星は謝りながらも嬉しそうに喘いだ。俺はそのツンと尖って熱を持つ突起を口に含み、股間に手を伸ばす。

 そこもすっかり硬く勃ち上がっていて、ヌルヌルしたものが溢れているのがスウェット越しにもわかった。

「もう濡れてるんだな」
「ああ、そんな、恥ずかしいです……」

 壱星はか細い声を出すが、薄笑いを浮かべて自身の下半身を覗き込み、俺の手に擦り付けるように腰を動かす。恥ずかしがっているのは演技で、もっと煽ってほしいと言っているみたいだ。

 パンツの中に手を入れて直接触れると、先走りが手に絡みクチュクチュと水音を立てる。

「やらしい音。意外とエロいんだな、砂原って」

 普段はこんなこと言わないが、壱星に煽られたからノッてみる。

「あっ、あっ、重森先輩、あの……」

 壱星の手が俺の股間に伸びてくる。こいつは俺が一番感じる動きを知っていて、ジーパンの上からでも的確な強さで扱いてくる。

「んっ……なぁ、砂原、これが欲しい?」
「……欲しいです、重森先輩」
「じゃあ……」

 一度体を起こしてジーパンのボタンとチャックを外し、パンツをずらす。

「舐めろよ、砂原」

 俺の言葉を聞いた壱星は興奮したように目を見開き、半開きの口元を指で撫でた。

 理由は知らないけど、こいつはフェラが好きだ。壱星は静かに起き上がると、すぐに舌を伸ばして俺の股間に顔を埋めた。

 じっとりと濡れた舌先が敏感な部分に触れ、思わず体が跳ね上がる。

「ふっ……ん、もっと奥まで咥えろよ」

 壱星はぐるりと一周俺の周りを舌でなぞり、小さな口を目一杯開いてそれを咥え込んだ。熱い口腔内に包まれると、それだけで鼓動が早くなり、ドクドクと血液が下半身に流れ込んでいくような感覚がある。

 こいつのフェラはエロくて、めちゃくちゃ気持ちがいい。わざと空気を取り込んで、じゅぽじゅぽと大袈裟な音を立てている。

 しばらくその快感を味わっていたが、やがてイキたくなった俺は壱星の顔を押し退ける。

「もういいよ。いっせ……砂原、仰向けになって」

 思わず壱星と呼びそうになって慌てて訂正する。すると壱星は言われた通り寝転びながら、挑発するように真っ直ぐ俺の目を見た。

「重森先輩、挿れて……ほしいです」

 自分から始めたことだけど、こうも真正面から別人の名前を呼ばれると変な感じがする。俺は何も答えずに、違和感を誤魔化すように唇を重ねた。

 体の下に手を差し込んで細い腰に触れる。そのままスウェットを下ろそうとすると、壱星は自分から腰を浮かせてそれとパンツを脱ぎ始めた。

「ねぇ、重森先輩、早く……」

 唇が離れた隙をついて壱星は重森の名前を呼ぶ。

「……じ、じゃあ自分で脚開いて見せて。その気にさせてよ」

 その様子に苛ついた俺がそう言うと、壱星は躊躇うこともなくベッドサイドの引き出しからローションを取り出してそれを手に出した。

「はい、重森先輩。見てて下さい、俺のここ……」

 そして……細い指が、あっという間に2本飲み込まれる。

「うわ、すげぇ……」

 今までこんな変態みたいなことさせたことないけど、悪くないかも知れない。

 グチュグチュと音を立てて、片脚を持ち上げた壱星の中を指が出入りする。さらに、その指をぐっと開き壱星は俺を誘った。

「先輩っ、重森先輩。ぁん、俺、早く先輩が……」

 ピンク色の直腸内が見え、堪えきれなくなった俺は壱星に覆い被さりコンドームに手を伸ばす。

「あっ、先輩っ……」

 それを装着すると、壱星の指を乱暴に引き抜いて自身を押し当てた。ずぶっと突き破るような快感が俺を包み、壱星の甘く高い声が耳に纏わりつく。

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