男は絵画に興味が無かった。

蓮見 七月

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男は絵画に興味が無かった。上

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ボッティチェッリ、フェルメール、ミレイ、もちろんピカソも名前だけは知っていた。しかし、彼にはなぜ彼らが偉大な画家として評価されているかまったく分からなかったし、また分かろうともしなかった。

人間には記憶をつかさどる海馬があるし、必要ならば写真を撮ってしまえばいいじゃないか。

彼はそんな風に考えている人種だった。

それに女性にまるで縁の無い生活を送ってきた彼には、ことさら、例えば絵画の女性像などに興味を持つことが出来なかった。 

それは自分が恋愛経験に乏しいという劣等感の表れかもしれないし、ただ純粋に興味を持つ機会が無かっただけなのかもしれなかった。

そんな彼が大学から帰ろうとするとき、キャンパス内の図書館の前で手を振る女を見つけた。

彼女は、彼の1つ年下の後輩であった。

「先輩!」

彼女の声が届いた。

二人は取り立てて仲が良いと言うわけではなかったが、これまで数回、二人きりで話したことがあり、なんとなくお互いが気の合う人間同士なのだと感じていた。

彼から見た彼女は、勉強と読書に打ち込む清純そうな女性だった。

小柄でショートヘア、いつもつけている眼鏡、それに丸みを帯びた全体像が、彼女からある種の母性的な魅力を彼に感じさせていた。

ただ、やはり彼ら二人は恋仲ではなかった。

彼は恋愛にほとんど諦観の念を抱いていたし、彼女には年上のボーイフレンドが居た。

彼が彼女と数回、話した中で驚かされたことがいくつかある。

清純そうな彼女にだいぶ年上のボーイフレンドが居ると言うことも数回の会話の中で驚かされた話だった。

さらに彼にとっては意外に思えたことだが、彼女は大変豊富な恋愛経験があると言うことだった。

また、それを隠したりせずにオープンに自分に話してくれることにも驚いた。

時に話がセクシャルな部分に触れることもある。

彼にとって、彼女との会話はまるで恋愛や性体験のアウトソーシングだった。

一見清純そうなこの後輩から聞く刺激的な恋愛話は、彼の鬱々とした生活に適度の潤いをもたらした。

だから、彼女の行きつけのカフェへの招待を断る理由は無かった。

二人はそろって大学を出て、彼女行きつけのカフェへと向かった。

時刻は午後3時を回ったところ。秋風が二人の頬をなでる季節だった。

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