インスタントフィクション 400文字の物語 Ⅱ

蓮見 七月

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月のお迎え

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 目を閉じているはずなのに明るいな、と少女は思った。

 冷たいけど柔らかい。
 目蓋をゆっくりと明けると月の光が差していた。西の窓のカーテンを閉め忘れたのだ。

 少女は天蓋付きのベッドから起きて窓に近づいた。
 広い部屋を満たす程のたっぷりの月光。
 
 窓から見下ろす街は白く輝いている。

 あの通学路を走って見たかった。と少女は思う。
 それから学校の近くにある駄菓子屋というお店にも。

 なんだか今なら走れそうな気がする。
 少女は微笑んだ。
 そして自分の体に管が一本も付いていない事に気が付いた。
 
 けれど、ばあやを呼ぶ気は起きなかった。眠っているところを起こしちゃいけない。

 綺麗な夜だわ。
 少女は窓から外の世界を見て呟いた。
 
 月は沈み、彼女も眠った。

 翌朝、ばあやが部屋に入り少女に声を掛けたが反応は無かった。
 ばあやは体中に繋がれた管を外してやった。

 昨夜は雨で暗い雲が大空を覆っていた。
 苦しまずに旅立ったのだろうか。
 
 ばあやは少女のために祈った。

 
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