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34. ようやく
しおりを挟むあれから俺は、見舞いの後に山城さん家族の元で夜を過ごすこともあった
話した事で軽くなっても完全に不安な気持ちが無くなったわけではない
でも、あの時以上にマイナスな方に考える事はなくなった
その日もいつもの様にランチ営業のバイトに入っていた
ピークも過ぎ落ち着いたタイミングで休憩に入れば一通の不在着信
それは、あの時交換していた竣くんの父親、雅也さんからだった
急いで折り返し電話を掛ければ「結さん!?すぐに病院に来れますか!!?」と酷く慌てた様子に心臓が大きな音をたてた
まだ何か話していた気がするけど、俺は着ていたエプロンを脱ぎ捨て、休憩室に入ってきた凪くんに「病院行かなきゃ!」とままならない説明のままお店を出て走った
病院までの距離は歩けば30分程
1秒でも立ち止まる時間が惜しくて、、、
苦しい、、、息が上手く出来ない、、、
それでも、、早く彼の元に向かいたくて
俺はただひたすらに走った
乱れた息のまま辿り着いた病院の中を早足で移動する
すると見えた竣くんの両親の姿
俺の姿に気付いた2人が慌てて近寄り俺の手を取る
その目には涙が浮かんでいて、、、
バクバクとさらに早くなる鼓動に俺は深く息を吸って吐いた
そんな、俺の耳に届いたのは
「さっき、、、竣の目が覚めたんだ」
ずっと待ち望んでいた言葉だった
俺はその場にへたりと座り込み「よかった、、、よかった」と同じ言葉を繰り返した
そんな俺に竣くんの両親も頷きながら「ほんとによかった、、」と言葉をもらす
そのまま俺を立たせ近くの椅子へと座らせればお医者さんから聞いた話を伝えてくれた
今はまた眠ってしまったけど、しばらくしたらまた目を開けてくれるだろうという事だった
その後新たに移動した病室へと案内してもらいベッド横の椅子に座り再び目を開けてくれるその時を待った
それからどれだけの時間が経っただろう
握っていた竣くんの手が動いた気がして名前を呼ぶ
「竣くん!!?」
俺のその声に反応するかのように指が動く
その手をギュッと握りもう一度名前を呼ぶ
するとゆっくりと目を開け動く視線
乗り出すようにして竣くんの顔を覗き込めばその視線が俺を捉えた瞬間、力なく笑った
「竣くん、、、よかった、、、」
そう言えば、握られていない方の手を上げれば、その手がそっと俺の頬に触れた
「なかな、、いで、、、」
頬に触れた竣くんの手に擦り寄りながら「お前が、、心配させるから、、、」そう言えば眉を下げながら「ごめんね。」と謝る
「ほんとに、、、よかった、。毎日、、不安で仕方なかったんだからな、、、、」
「ごめんね、、、」
「ずっと、、俺のそばにいろよ、じゃなきゃ許さない」
「もちろんだよ、ずっと、、結さんのそばにいる。」
竣くんの目が覚めてから半年
骨折していた足も完全に治り、やっと普通の生活に戻ってきた
そして今日、今まで住んでいた家から新しい家へと引っ越した
「結さーん!荷物全部運び終わりましたよ!」
「あぁ、ありがとう。それにしても治ったばかりなんだからあまり無茶するなよ、、、」
「分かってますよ!無理はしてないです!!」
そう言いながら俺の横に立てば部屋の中を見渡し「今日からここで一緒に暮らせるんですね、、」と嬉しそうに呟く
「結さん、これからよろしくお願いします。」
「ふふっ、、こちらこそよろしくな。」
「あぁなんですかその笑顔、、可愛すぎます」
そう言って俺に抱きつけば「俺、ほんと幸せです。」俺の肩に頭を押しつけながらそう言った
そんな竣くんの背中に腕を回し抱きしめた
「俺も幸せだよ。好きになってくれてありがとう。」
その時だった
感じた身体の違和感にビクッと反応する竣くん
「結さん、、、この匂い、、、」
「んっ、、ヒート、、きたみたい、、、、」
すると俺の顔を覗き込み
「今日、結さんの全て、、貰ってもいいですか?」
と聞いてくるその口にそっと自分の唇を重ねた
𝓯𝓲𝓷
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