with you

あんにん

文字の大きさ
上 下
32 / 35

32. 対面

しおりを挟む


  近くへ駆け寄った俺の目に映ったのは頭から血を流しぐったりとしている竣くんの姿で
  その近くでは先程の女の子が父親らしき人に抱きしめられながら泣いていた

 「竣くん!!!」
 
  名前を呼びながらさらに近くに寄るけれどその目は閉じられたままで反応を示さない
  すると聞こえてきた救急車の音
  駆け寄ってきた救急隊員に言われるがまま距離を取り、目の前でストレッチャーに乗せられるのをただ呆然と眺めていれば近くにきていた凪くんに「一緒に行かなくていいんですか!?」と強めに言われた
  その言葉にハッとして後を追いかけ友人であることを伝え同乗させてもらい一緒に病院へ運ばれた

  その間も目を覚ますことはなくただ無事を祈る事しか出来なくて、、、

  病院に着き運ばれていく彼の後を追えば声を掛けられ止められた
  そこからは言われた場所で待つ事しか出来なくて
  
  しばらくすると、バタバタとこちらに向かってやってくる男性と女性の姿が見えた
  すぐに竣くんの両親だと分かり立ち上がって軽く頭を下げれば2人も頭を下げる

 「初めまして、花白結と言います。」

  そう自分の名前を告げれば2人が固まり顔を見合せた
  
 「初めまして。竣の父親で、雅也といいます。こっちは妻の美菜子です。」
  
  紹介された美菜子さんはそのまま頭を下げた
  その後は、連絡を受けた後からショックで疲労のみえる美菜子さんをソファに座らせ、雅也さんと少し離れた場所で会話を交わした

 「竣からこの間話を聞きました。」

  あの時、2人の気持ちを確認した日に言っていた "両親に話す" の言葉、それの事だろうと思い静かに言葉を待った

 「竣に事故の話をした時も結さんの話を聞いていたんです。お隣さんで、優しくて自分の好きな人なんだって」

 「でも、全てを知って諦めるんだって泣きながら言ってました。その後すぐにこっちに戻ってきたけどずっと暗くて、、、」

 「ある日、いきなり家を飛び出して行ったんで驚いたんです。慌てて連絡したら "行ってくる" だけで、、、翌日帰ってきた姿を見て驚きました。笑ってたんです。もう数ヶ月、家で笑ってなかった竣が笑顔で「ただいま」って。」

 「その日のうちに結さんとあの場所で再会して話した事を聞きました。やっぱり好きなんだって、そして、結さんも自分の事を想ってくれているという事も、、、結さんやその友人からも暖かい言葉を貰ったことも、、ほんとにありがとうございます。」

  そう言って頭を下げる雅也さんに慌てて顔を上げるように言う

 「私、あきらが死んでからずっと閉じこもってたんです。これじゃあいけないって地元出てここに来て、そこで隣に引っ越してきた竣くんと出会って助けられたんです。お礼を言うのはこっちの方なんですよ、、、。」
 「そうなんですね、、、」
 「聞いた通り、私は竣くんに想いを寄せています。出来るのならこれからは恋人として一緒にいたいと思ってます。でも竣くんよりも10以上も年上の私ですから、、、オメガですが、子を産むことももう出来ないと思います。親御さんからしたら、、、
 「私達は気にしていません。息子の、、竣の気持ちが第一ですから。竣が結さんといたいと言うなら私達はそれを応援するだけです。」
 「ありがとう、ございます。」
 「まずは一緒に竣の無事を祈りましょう。」
 「そうですね、、、」



  
  
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺にとってはあなたが運命でした

ハル
BL
第2次性が浸透し、αを引き付ける発情期があるΩへの差別が医療の発達により緩和され始めた社会 βの少し人付き合いが苦手で友人がいないだけの平凡な大学生、浅野瑞穂 彼は一人暮らしをしていたが、コンビニ生活を母に知られ実家に戻される。 その隣に引っ越してきたαΩ夫夫、嵯峨彰彦と菜桜、αの子供、理人と香菜と出会い、彼らと交流を深める。 それと同時に、彼ら家族が頼りにする彰彦の幼馴染で同僚である遠月晴哉とも親睦を深め、やがて2人は惹かれ合う。

キンモクセイは夏の記憶とともに

広崎之斗
BL
弟みたいで好きだった年下αに、外堀を埋められてしまい意を決して番になるまでの物語。 小山悠人は大学入学を機に上京し、それから実家には帰っていなかった。 田舎故にΩであることに対する風当たりに我慢できなかったからだ。 そして10年の月日が流れたある日、年下で幼なじみの六條純一が突然悠人の前に現われる。 純一はずっと好きだったと告白し、10年越しの想いを伝える。 しかし純一はαであり、立派に仕事もしていて、なにより見た目だって良い。 「俺になんてもったいない!」 素直になれない年下Ωと、執着系年下αを取り巻く人達との、ハッピーエンドまでの物語。 性描写のある話は【※】をつけていきます。

絶滅危惧種オメガと異世界アルファ

さこ
BL
終末のオメガバース。 人々から嫌われたオメガは衰退していなくなり、かつて世界を支配していたアルファも地上から姿を消してしまった。 近いうち、生まれてくる人間はすべてベータだけになるだろうと言われている。 主人公は絶滅危惧種となったオメガ。 周囲からはナチュラルな差別を受け、それでも日々を平穏に生きている。 そこに出現したのは「異世界」から来たアルファ。 「──俺の運命に会いに来た」 自らの存在意義すら知らなかったオメガの救済と、魂の片割れに出会う為にわざわざ世界を越えたアルファの執着と渇望の話。 独自のオメガバース設定となります。 タイトルに異世界とありますがこの本編で異世界は出てきません。異世界人が出てくるだけです。

完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました

美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

【完結・ルート分岐あり】オメガ皇后の死に戻り〜二度と思い通りにはなりません〜

ivy
BL
魔術師の家門に生まれながら能力の発現が遅く家族から虐げられて暮らしていたオメガのアリス。 そんな彼を国王陛下であるルドルフが妻にと望み生活は一変する。 幸せになれると思っていたのに生まれた子供共々ルドルフに殺されたアリスは目が覚めると子供の頃に戻っていた。 もう二度と同じ轍は踏まない。 そう決心したアリスの戦いが始まる。

Endless Summer Night ~終わらない夏~

樹木緑
BL
ボーイズラブ・オメガバース "愛し合ったあの日々は、終わりのない夏の夜の様だった” 長谷川陽向は “お見合い大学” と呼ばれる大学費用を稼ぐために、 ひと夏の契約でリゾートにやってきた。 最初は反りが合わず、すれ違いが多かったはずなのに、 気が付けば同じように東京から来ていた同じ年の矢野光に恋をしていた。 そして彼は自分の事を “ポンコツのα” と呼んだ。 ***前作品とは完全に切り離したお話ですが、 世界が被っていますので、所々に前作品の登場人物の名前が出てきます。***

君はアルファじゃなくて《高校生、バスケ部の二人》

市川パナ
BL
高校の入学式。いつも要領のいいα性のナオキは、整った容姿の男子生徒に意識を奪われた。恐らく彼もα性なのだろう。 男子も女子も熱い眼差しを彼に注いだり、自分たちにファンクラブができたりするけれど、彼の一番になりたい。 (旧タイトル『アルファのはずの彼は、オメガみたいな匂いがする』です。)全4話です。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

処理中です...