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あんにん

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26. 変わらずずっと [ 竣side ]

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 「俺は竣くんの事が好き。」

  その言葉を貰った時、本当は凄く嬉しかった

  "一目惚れをして一度は振られたけど、諦めきれずに想いを寄せ続けた人に告白をして貰った"

  こんな幸せな事はないと思う

  でも、、、俺にはその好意を受け取る資格がない事に気付いてしまった

  
  実家から帰った時に隣に結さんがいるあの家には帰りづらくて、駅近くにあるホテルに向かった
  それからもう何日目か分からない夜を過ごす

  結さんはあの事故についてどこまで知っているんだろう
  事故の原因となった俺の存在はどこの記事にも書いてあった
  でも俺の名前は書かれていなかったから、、、あの時の子供が俺とは気付いていない可能性の方が高い、、、
  結さんが分からないなら、それなら、俺が気付かれないようにすれば、大丈夫かもしれない
  やっと振り向いて貰えたのだから、このまま何も知らなかった時のように変わらない笑顔を向けて「俺も好きです」と言えば良かったのではないか
  
 「ほんとにそれはあの時と変わらない笑顔なのかな....」

  そうぼそりと呟けばかわいた笑みがこぼれた

  そんなわけない
  笑えたとしてもそれはあの時と絶対に違くて
  それに

  "いつか気付く時がくるかもしれない" 

  そんな不安を抱えたままなんて誰がどう見ても上手くいくわけがなくて、、、でも

  「もう会えないのか....」

  玄関で涙混じりに小さく聞こえたあの声が頭から離れなくて何度もリピートされる
  肯定と取れる言葉を言った時無理して笑う姿を思い出す度苦しくて
  思わず抱きしめてしまったあの時に、正直な気持ちを伝えてしまいたかった
  心はずっとぐちゃぐちゃで

 「一目惚れしたあの時からずっと変わらず大好きです」

  苦しげに呟いたその言葉は伝えたい相手に届くことなく消えていった


  それから半年
  俺は結さんのバイトの時間に合わせて家に帰り、引っ越しを済ませ、最後に会うことなく実家へと戻っていた
  仕事は実家から通うには少し遠いが辞めることなく続けている
  いっそ辞めてしまおうかとも思ったけど、自分を指名してくれているお客様の事もあり思い留まった

  一度だけお店の前を通りがかった結さんと目が合ったけれどすぐに逸らした
  それからは一度も姿を見ていない
  
  これでいい
  これでいいんだ
  俺はそう自分に言い聞かせた
  
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