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あんにん

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16.近付いた距離

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  無事に今年の墓参りも終え、いつも通りの日常を過ごす
  
  ある日、いつものように竣くんと食事を終え映画を観ていた時だった

 「花白さんってヒート大丈夫なんですか?」

  ふいに問いかけられた
  
 「あまりこういう話は良くないって、分かってるんですけど、前に道でヒートを起こしていた時、その、結構キツそうだったので、、」
 「心配して言ってくれてるんでしょ?分かってるから大丈夫だよ。それにあの時みたいなヒートは起こってないから大丈夫。」
 「それなら、よかったです。」
 「昔ね、大量に飲んでいた薬の影響で身体がおかしくなってさ、俺ヒート止まってたんだ。」
 「えっ、、、」
 「だけどね、ここに来てから生活を改めたおかげで良くなってさ、あの時が久しぶりにきたヒートだったんだ。それで今までの分が一気にきた!みたいな感じで少しひどかっただけなんだよ。」
 「そうだったんですね、、」
 「うん、でも今はさ、ほんとに調子がいいんだよ!そりゃ番はもういないからさ、ヒートがきたら薬は飲むけどその時だけだし、定期的に病院も行って診察もして貰ってるから」
 「それなら、安心ですね」
 「そう!だから大丈夫だよ。」
 「はい。」
 「ごめんね、心配させまいと今までヒートの時は用事があるからって断ってたけど、ちゃんと説明してたらよかった」
 「いえ、俺がただ気になっただけなので、、、」
 「ほんと、竣くんは優しいね。」
 「花白さんだって優しいですよ。」
 「ふふっ、ありがとう。ねぇ竣くん」
 「なんですか?」
 「名前で呼んでいいよ」
 「えっ?」
 「友達になってからもう1年以上、いつまでも苗字呼びなのも変な感じだしさ。俺は竣くんって名前で呼んでるしそうしない?」
 「いいんですか?」
 「もちろんだよ」
 「、、ゆぃ、さん」
 「はい。」
 「ゆい、さん。」
 「呼びすぎだよ、、?」
 「結さん!凄く嬉しいです!!」
 「そこまで喜んでもらえるならならもう少し早めに呼んでもらえばよかったかな。」

  なんて言いながら笑顔を向ければそれ以上の笑顔でまた俺の名前を呼ぶ竣くんがいた

  それからはお互いの部屋を頻繁に行き来するようになり、どちらかの部屋に泊まるようにもなった
  気になる場所があれば2人で出掛けるようにもなった

  前よりもぐんと近付いた距離感に、良くないかなと思いながらも竣くんと過ごす日が楽しくて、初めのよそよそしい距離感に戻るのは嫌だと思ってしまった
  この時間がなくなるのは嫌だと、、、思ってしまった

  正直、竣くんが自分の事を完全に諦めきれていないのは薄々感じ取っていた
  ここまで自分の事を気にかけて優しくしてくれるのも少なからず好意があるからだと
  だけど、竣くんが好意をはっきりと言葉にしないから
  これ以上の関係になる事を望む言葉を言わないから

  だから気付いていないふりをして今日も彼を誘う
  
  自分からそんな言葉を言わせないようにしたくせに、、、
  それを理由にこんな行動をとる俺は
  なんてずるい人間なんだろう、、、

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