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15. 存在の大きさ
しおりを挟むあれから半年が経った
俺は何度か美容室にお邪魔して髪を切ってもらうようになり、竣くんもよく俺のバイト先へ来るようになった
前より会う頻度は増えたが友人としての距離感はそのままで
そんな日々を繰り返し再び冬を迎えようとしていた
すると、竣くんの方から「今年はどうしますか?」と問いかけられた
「行こうかと思ってる...」
「1人で大丈夫ですか?」
「、、、」
「やっぱり、まだ不安ですか?」
「そう、、だね、、」
「じゃあ今年は近くまで一緒に行きます!」
「えっ?」
「花白さんの地元、最寄り駅まで一緒に行きます。その後、あきらさんの所には一人で行ってみるというのはどうでしょう?一気に一人でじゃなくて少しづつ、、、ね?」
「俺はありがたいけど、本当にいいのか?」
「もちろんですよ。」
「、、ありがとう。」
変わらず俺の気持ちに寄り添ってくれる竣くんに俺は深く頭を下げた
「俺がそうしたいって思ったんですから、気にしないでください。」
一回りも下の子に甘える形になって情けなさを感じるけど、俺は竣くんの提案にのることにした
去年と同じように向かう前に髪を切ってもらい用意をし、当日にはセットをしてもらった
新幹線から見える景色に去年は握りしめた拳が今年は緩められていて気持ちの変化を感じた
電車を乗り継ぎ去年と同じホテルにチェックインを済ませる
明日の為にと用意していた物を取り出し準備する
そして去年と同じように思い出の場所を巡った
ほんの少し、落ち着いた気持ちで巡れた気がした
そして当日、近くまで一緒に来てくれた竣くんに「行ってくるね。」そう言ってあきらの元へ向かう
「少し助けてもらったけど、今年も来れたよ。」そう言いながら花を飾り線香に火をつける
手を合わせ話しかければ風が吹き花を揺らし、彼が好きだった匂いがした
「またくるな。」そう言い残して竣くんが待つ場所へ足を進める
風に吹かれながら少し寒そうに俺を待つ竣くんの姿が見え小走りで近寄れば、俺の姿に気付いた竣くんが「大丈夫でしたか?」そう言いながら乱れた俺の髪を整えた
「あぁ、大丈夫だった。ありがとう」
「よかったです。」
「せっかくだから近くで食べて帰ろうか。身体冷えただろう、温かいものでも食べよう。」
「いいですね!」
そう言葉を交わしながら近くのお店へ向かった
チェーン店に入り期間限定の冬らしい食べ物に二人で盛り上がりながら食事をする
目の前で「美味しいですね!」と笑顔を見せる竣くんを眺めながら、自分の中で竣くんの存在が大きくなってきている事を実感した
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