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あんにん

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10. そばにいたいから [ 竣side ]

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 「俺には番がいたんだ」

  その言葉に俺は驚いた
  まさか番がいたなんて、、、、

  その後に花白さんの口から語られる内容は俺が予想していたものを遥かに超えるもので
  そんな過去があったなんて、、

  その人を思い浮かべているのだろう
  出会いから番になるまでの話をしている表情は穏やかで、時々頬が赤くなることもあった

  だけどその表情がだんだんと曇り始め出てきた言葉は

 「事故にあった」

  助からずそのまま帰らぬ人となったその人を思って流す涙に花白さんの悲しみが伝わって胸が苦しくなった
  どれだけ願ってももう会えないという事に気付かされた辛さはどれ程だっただろう
   何度眠れぬ夜を過ごしたのだろう

  だけど前を向く事に決め、どん底から今こうして自分で生活出来るようになった花白さんの強さに俺は気付けば涙が溢れていた

 「気持ちに応えられることは出来ない」

  全てを聞いた上で改めて言われたこの言葉がずしりと重くのしかかった

  でも、それでも、やっぱり花白さんの事が好きな事に変わりはなくて

 「1人で生きていくって決めた」

  その言葉には寂しさも感じられたから、、
  だから傍で支えたいって
  何気ない事で笑いあいたくて
  辛く泣いてしまいそうな時にはただ静かに肩を貸したいって思ってしまった

  だけど、自分がこれからどれ程想ったとしてもこの気持ちが報われることはない事がはっきりと分かってしまった

  だから、、、今もこうして想われているその人が羨ましくて
  亡くなってしまった人に対してこんな風に思ってしまうなんて、、、
  それでも、、灯ってしまった嫉妬の炎は消えることはなくチリヂリと俺の心を蝕んでいく

  羨ましい
  俺だってあなたの事がこんなに好きなのに
  どれだけ思ってももう会えないのに、寂しがり屋だというあなたを置いて先にいってしまった人なのに、、、
  それなのに、、、まだその人が良いと言うんですか?


  そう思ってハッとした
  最低最悪だ、、、自分がこれ程までに醜い人間だったなんて
  こんな人間と一体誰が一緒になりたいと思うのだろうか
  
  深く長い深呼吸をした

  大丈夫、大丈夫

  俺はこの気持ちに蓋をするから、、

  時間はかかるかもしれない

  でも、これからもあなたの近くにいたいから、、

  もうこの気持ちをあなたにぶつける事はしないから、、

  だから友人として傍にいさせて欲しいです

  
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