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あんにん

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3.お隣さん

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  寒かった日も少しづつ息を潜め春が訪れようとしていた
  今日もバイトへ向かう為に準備をしていれば何やら隣が騒がしくて
  
  "確か隣は空き部屋だったよな、、、誰か入ったのか?" そう思いながら準備を進める
  
  いつもの様に写真に「いってきます。」と告げ家を出れば隣の部屋のドアは開かれ微かに声が聞こえてくる
  "やっぱり誰か入ったのか。" そう思いながら歩き出した

  3月、春休みということもありいつもより賑やかなお店で忙しく動き回り、少し疲れた身体で帰宅し鍵を回したその時、隣の扉が開かれた

  「あっ、あの!」扉が開いた勢いそのまま話しかけてきた男の子に驚けば「あっ、すいません。」と謝られる

 「いや、大丈夫。少し驚いただけだから。」
 「俺、今日ここに引っ越してきました。よかったらこれ。」

  そう言って差し出されたのは有名店の包装紙で包まれた箱

  「ありがとう。」そう言って受け取れば嬉しそうに笑った

 「俺、神楽 竣かぐら しゅんって言います。」
 「俺は、花白 結。よろしくね、竣くん。」

  自己紹介をしてそう言えばさらに顔を綻ばせながら「こちらこそよろしくお願いします!」と言い頭を下げた

 「元気なのはいいけどここだと声響いちゃうから少し静かにね。」
 「あっ、、、すいません、つい、、、」

  そう言ってシュンとする姿がおかしくて笑えば照れた表情をみせた 

 「じゃあ俺はバイトで疲れてしまったからこれで、、」
 「あっ、そうですよね。お疲れの所引き止めてすみません。」
 「大丈夫だよ。これありがとうね。」

  そう言って笑顔で箱を動かせば「はい!」と笑顔を見せ「それじゃあおやすみなさい。」そう言って部屋へと戻って行った

  俺も扉を開け部屋へと入る
  写真に向かって「ただいま。」と声をかけ、疲れた体をお風呂で癒せばいつも通り眠りについた


  それから数日後
  お店が店休日でバイトが休みの為、朝から始めていた掃除が一段落し早めに買い出しに行くかと部屋を出ればちょうど隣の扉も開いた

  俺と目が合った竣くんは「あっ!花白さんこんにちは!」と挨拶をしてくれた
  それに「こんにちは。」と返せば「これからお出かけですか?」と投げかけられる

 「スーパーに買い物に行こうかなと思って」
 「そうなんですね!実は俺もなんです、あの、もし良かったら一緒に行ってもいいですか?」
 
  遠慮がちにそう言われ少し戸惑っていれば

 「引っ越してきたばかりでこの辺まだ詳しくなくて、それで、、、その、、、」

  最後は小さくなりながらそう口にする竣くんに断ることが出来ず「いいよ、行こうか。」そう言っていた

  「ありがとうございます!」そう言いながら笑顔で俺の隣にやってくる
  その表情に "俺も行くついでだしまぁいっか、、、" と思いながら歩き出す

  スーパーに着けば隣にいたはずの竣くんはいつの間にか居なくなっており驚くが "店内回っていたら会うだろう" そう思いながらカゴを手に取り商品を見ながら夕飯のメニューを考える

  すると「花白さーん」俺の名前を呼びながら何か大きな物を手に竣くんがやってきた
  
 「ここのスーパーすごいですね!ピザとかも売られてる!」

  そう言いながら俺の前に見せたのはお惣菜コーナー等に置かれてるのを見かける出来上がったピザだった
  
 「これすごく美味しそうじゃないですか?」
 「そうだね。」
 「俺、気になるのが2枚あって、でもさすがに1人で2枚は無理なんですよね」
 「まぁ、それはそうかもね」
 「花白さんってお昼は食べました?」
 「まだだけど、、、もしかして、、、」
 「良かったら一緒に食べませんか?」
 「いや、それは、、、」
 「そうですよね、、、いきなりこんな、、、ごめんなさい。」
  
  そう言って落ち込む姿に少しの胸の痛みを感じるけど、ここで絆されてはいけないと何となく感じ取ってしまった
  それにきっとこの子はアルファだ
  オメガである自分の直感がそう言っている
  だから余計に絆されてはいけない、、、

  
  だけどそれから竣くんは何かと理由をつけては俺を誘い続けた

 「慣れない料理で、量の加減が分からなくて、それで作りすぎてしまって....良かったら一緒に食べませんか?」
 「友達から映画のチケット貰ったんです。花白さんはこの日空いてたりしませんか?」
 「ここ気になってるんですけど、花白さんは行ったことありますか?もし良かったら、、、」

  ここまできたら嫌でも察してしまう彼の気持ち
  俺を見かけたら嬉しそうに近寄ってくる姿
  断った時にみせる悲しげな表情
  彼の行動その全てが俺への好意を表していて
  だけど俺はそれに応える気はなくて
  だから何度誘われようと断ってきた

  それに彼は俺がオメガである事に気付いている

  
  そっと首元のチョーカーに触れる
  
  俺はもう1人でいると決めたんだ
  もう二度とあんな思いはしたくない
  あの喪失感をまた味わったら今度こそ俺は壊れてしまうだろう
  だから、、、お願いだから、、、
  俺の心の隙間に入ってくるのはやめてくれ


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