幼馴染の彼

あんにん

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  カーテンの隙間から差し込む日差しが眩しくて目を覚ます
  目元にあったはずのタオルは無くなっていて、はるにぃの姿は見当たらなかった

  携帯を見れば通知が一件入っていた
  
  [明日も出勤だから今日はもう帰るな。
    ゆっくり身体休めながら課題頑張れよ。]

  送られた時間をみれば日付が変わる少し前で
  
  "1時間以上も側にいてくれたのか⋯⋯"

  はるにぃのその優しさに胸が高鳴りそうになるのを必死に落ち着かせる

  "ダメだ、、、諦めるって決めただろ、、、"

  そう思うのに、一度貰った優しさは俺の奥深くに刻み込まれてはるにぃへの恋心へと変わっていく
  
  
  あの夜から、課題をしながらゆっくりと過ごす俺の元へはるにぃはよく訪れるようになった

  課題の分からない所を一緒に考えてくれたり、オススメの映画があるんだと言いながらお菓子と飲み物を持ってきて映画鑑賞をする事もあった

  まだこわくて外に出れない俺を気遣ってくれているのが伝わって、その度にどうしようもない思いに駆られる

  そんな日々を過ごしていれば、大学が冬休みに入り楓が帰ってきた
  それからは3人で過ごす事が増え、はるにぃとの距離が近くなる事が減っていった

  これ以上心を乱されなくなったと安心する気持ちと同時に少し残念に思う気持ちが出てきて慌てて首を振る

  "ダメだ、、、これ以上は、、"


  大晦日、年越しを過ごし冬休みも終わりを迎える頃、俺は両親と今後について話し合うことにした

  楓やはるにぃと過ごす事で、少しづつ外に出る事にも慣れてきた事もあり、休み明けには大学に通いたいと思っていた
  大学を決めた理由ははるにぃだったけど、楓や亮介、湊と一緒に過ごす大学生活が楽しかったし何より、興味のあった分野をより深く学ぶ為にも早く行きたかった

  その事を伝えれば、どこか不安そうな表情で、少し考えたいと言われた

  それから数日後、両親に呼ばれ休み明けから通うことの許可がおりた

  ただ、あの部屋でそのまま暮らすのは俺の精神的にも良くないと言われ引っ越すことになったがなぜか楓と一緒だった

  両親に伝えられた時は驚きで頷く事しか出来なかったけど今、俺の部屋で寛いでいる楓を見て問いかける

 「なぁかえで」
 「んー?」
 「俺とお前一緒に住むの?」
 「そーみたい」
 「そーみたいって、、、お前はいいの?」
 「俺は別に。よくお前の部屋行ってたしなんならそのまま泊まってる事多かったし、そんな変わんねーだろ。」
 「いや、でも、そーなのか?」
 「そーそー。難しく考えなくてもいいんじゃね?最初から同じとこなら楽だし、おじさんとおばさんも少しは安心感が増すんじゃない?」
 「なるほど?」

  そんな会話をしてから数日後、冬休み最終日
  俺と楓の部屋の物を運び終えた前より広めの部屋を見ながら "ついにか⋯⋯" なんて思っていれば楓が横に立つ

  「今日から同じ家でよろしくー」なんて軽く言ってくるから俺も「おー。」と気の抜けた返事をする

  すると鳴り響いたインターフォンの音
  玄関に急ぎ扉を開ければ亮介と湊が大きい袋をそれぞれ持って立っていた

 「なおや!久しぶり!」「引越しお疲れ様。色々買ってきたぞ!」

  なんてお互い被る勢いで話すから笑っていれば2人が目を合わせ微笑んだ後に「「よかった、、、」」2つの声が重なってそう言った

  不思議に思えば「あの後すぐに尚也帰っちゃったから俺ら2人は会えてなかっただろ?だから、、、心配だったんだ、、、」そう亮介が口にする

  湊も頷きながら「だから今、尚也のいつも見せてくれてた笑顔見れて嬉しい、、、」なんて言う

  その瞬間、2人の優しさに胸に温かいものが広がる感覚がした

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