幼馴染の彼

あんにん

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  何度か聞こえるコール音に "やっぱり明日にしよう。" そう思って切ろうと耳から離した時だった「もしもし、なおや?」はるにぃの優しい声が聞こえた

  急いで耳元に携帯をあてれば「どうした?」と変わらず優しい口調で聞いてくる

 「はるにぃ、こんな時間にごめんね。」
 「大丈夫だよ。どうしたの?」
 「あのさ、俺しばらく実家に帰る事になって、、、はるにぃにはあの時助けてもらったから、、伝えとこうと思って、、、」
 「そうなんだね、、もう帰ってるの?」
 「うん、今日の夜ついた。」
 「そっか、、、じゃあ今日はもう疲れてるんじゃないか?それなのにありがとうな、報告してくれて。」

  変わらず優しい口調で話してくれるはるにぃに心が落ち着く
  
  少しの無言の時間が流れた後に「まだ時間大丈夫?」と聞かれ「うん。」と小さく応えれば「それならもう少し話していたい。」と言われ気付けば頷いていた

  昨日観た番組がおもしろかったとか今日食べたお昼ご飯が美味しかった等、そんな他愛もない会話が繰り広げられる
  するとふいにはるにぃが心配そうに「大丈夫か?」と問いかけてきた
  "急にどうしたんだろ、、、" そう思って「なんで?」そう聞けば「泣いてるだろ。」なんて言葉が聞こえて慌てて自分の頬に触れれば濡れていて

 「なんでだろ、、、別に何も無いのに、、おかしいな、、、、」
 「なおや、、、もう帰ってきてるんだったよな?」
 「えっ、うん、、、」
 「分かった」

  そう言えば切られた電話
  不思議に思っていればすぐにチャイムの音が聞こえ、対応する母親の声が微かに聞こえたかと思えば、階段を上る音
  すぐに部屋の扉をノックする音に変わる
  立ち上がり扉を開ければそこにははるにぃが立っていて、、、

  "どうして⋯⋯⋯"
  
  そう思いながらドアノブに手をかけたまま立っていればそのままはるにぃに抱きしめられた

 「はるにぃなんで、、、」
 「こわかったよな、でもお前のことだから心配かけないようにっておじさんやおばさんの前でも平気なふりしてたんだろ、、、」
 「、、、そんな、、」
 「我慢しなくていいから。」

  そう言いながら俺の背中をゆっくりとさするその手はあたたかくて
  
  こわかった
  自分の力じゃ到底かなわなくて
  ただ怯えることしか出来なかった
  1人じゃなくても外に出るのがこわくなって
  もうあの人は捕まってるから大丈夫だって頭では分かってても心はそうもいかなくて

  気付けばはるにぃが来た驚きで止まっていた涙は再び溢れ出す
  そんな俺を支えながらベッドまで連れていきゆっくりと座らせれば再び抱きしめてくれた

 「もう大丈夫、大丈夫だよ。」

  そう耳元で優しく言ってくれる言葉
  俺は、はるにぃの腕の中で声を上げて泣いた


  どれだけ泣いていたのだろう
  少し落ち着いた事で恥ずかしさがじわじわと襲ってくる
  はるにぃの前であんな風に泣くなんて
  そう思って少し距離を取り「もぉ、大丈夫だよ、、、」下を向きながら呟いた言葉は思ったよりも小さくて
  だけどはるにぃはちゃんとその言葉を聞き取っていて、「ほんとに?」そう聞きながら俺の顔を覗き込む

  「ほんとに、、大丈夫。」これ以上見られないようさらに顔を逸らせば、はるにぃが立ち上がり「少し待ってて。」そう言いながら俺の頭を一度くしゃりと撫でれば部屋を出ていった

  数分後再び俺の部屋にやってきたはるにぃの手には水の入ったペットボトルとタオル

  動けずに座ったままだった俺の隣に座り「水分取った方がいいと思って。」そう言いながら水を手渡した
  
  ゆっくりと口に含み飲み込めば冷たい水が乾いた喉を潤していく
  何口か飲んだ後に水をテーブルに置く
  すると、はるにぃが立ち上がり俺をベッドに横になるよう促す

  不思議に思っていれば「いいから!」と布団を手に持つ
  それでも俺が動けずにいれば「ほら!早く!」と急かしてきた
  恐る恐るベッドに横になれば、上から布団をかけるとベッド横に座る
  
  「目つぶって。」そう言いながら持ってきたタオルを手に持ち俺の顔元に持ってくる
  それで何となく察した俺は大人しく目を閉じた。
  思った通りタオルが目元に置かれて、それがいい感じに温かくて気持ちがよかった
  すると、はるにぃが布団の中にある俺の手をそっと握る
  
  「はるにぃ?」思わず名前を呼べば「んっ?」なんて優しく聞き返すから、、、
  「なんでもない」って言いながらその手を軽く握り返した

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