幼馴染の彼

あんにん

文字の大きさ
上 下
30 / 54

30

しおりを挟む


  カーテンから漏れる明かりで目を覚ませばそこに楓の姿はなくて
  起き上がってみればマシになった体調に安堵し携帯を手に取る
  見れば楓から一通だけメッセージがきていた

   [俺は帰るな。起きたらまた連絡して。] 

  それにすぐ既読をつけ返事をする

 [今起きた。昨日はほんとありがとな。]
 [おはよ、体調は?平気そう?]
 [おはよ。もうばっちりだよ。]
 [それならよかった。今日は家で大人しくしとけよ、また悪くなっても困るだろ。]
 [そうだね。まだ残ってるダンボールでもゆっくり片付けるよ。]
 [無理はすんなよ。夕方行くわ、そんで一緒に飯食お。]
 [分かった。]

  そう会話を終えれば目の前にまだ積まれているダンボールに手を伸ばす
  そのダンボールに入っていたのは漫画や雑誌等で、買っていた本棚を苦戦しながら何とか組み立てる
  終われば組み立てた際に出たゴミを先に捨ててしまおうと玄関に来てからノースリーブに短パンと随分とラフな自分の格好に気付く
  一瞬どうしようか迷ったけどせっかく纏めて手に持ったダンボールを再び置いて着替えに戻るのは面倒くさくてそのまま部屋を出た

  こんなお昼過ぎに誰にも会わないだろうと思いながらも素早く捨てに行きエレベーターに乗り込めば、「乗ります!」と慌てて走ってくる男性の姿が目に入り、急いで開のボタンを押し待っていれば「ありがとうございます。」と会釈しながら乗り込んできた男性

  男性は俺より上の階のボタンを押した
  軽く会釈して降りれば、そのまま部屋に戻り組み立てたばかりの本棚に収納していく  
  最後は何かと覗いて見ればアルバムが目に止まる

  気になって床に座りページをめくれば、産まれたばかりの俺と両親の写真が1番最初に出てきた

  ゆっくりとめくっていけばピタリと手がとまった
  そこには涙目の俺と笑顔のはるにぃが手を繋いで写っている写真があって、、、
  写真の横には〈引越しの挨拶に行ったら人見知りしている尚也に優しく声をかけてくれた陽斗くんと!〉母親の文字でそう書かれていた

  そのページからはるにぃと写った写真が増えていく
  ランドセルを背負って学校に行こうとしているはるにぃに抱きついて泣いている姿や、家の前で帰りを今か今かと待つ姿、一緒に昼寝をしている所。
  どの写真を見ても俺の隣には はるにぃがいた、、、

  写真を見たことで少し進めたと思った心は簡単に引き戻されて

 「あの日写真ぐらいは撮ればよかったかな.....」

  なんて後悔の声がもれる

  そんな時に響くインターホンの音
  顔を上げれば、お昼だった空には夕焼けが広がっていた

  "もうそんな時間になっていたのか..." なんて思いながらモニターを見れば楓の姿
  「開いてるよ」そう言えば開かれる玄関

  入ってきたと思えば「お前、、、戸締りはちゃんとしとけよ。」なんて心配そうに言う

 「ゴミ出しに行って忘れてた。今度から気をつける。」そう言えば「そうしてくれ。」と少し呆れたように言う楓

  部屋に上がり「ダンボールは減ったか?」なんて言いながら本棚に目をやり床に置かれたアルバムに視線を移す

  その姿を見た俺は「つい懐かしくなって見てたら途中から片付け止まっちゃった....」と笑うように零す

  その言葉に「、、、そっか。」と短く、小さく言いながらアルバムを閉じる楓の表情は見えなかった

しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

言い逃げしたら5年後捕まった件について。

なるせ
BL
 「ずっと、好きだよ。」 …長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。 もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。 ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。  そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…  なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!? ーーーーー 美形×平凡っていいですよね、、、、

孤独を癒して

星屑
BL
運命の番として出会った2人。 「運命」という言葉がピッタリの出会い方をした、 デロデロに甘やかしたいアルファと、守られるだけじゃないオメガの話。 *不定期更新。 *感想などいただけると励みになります。 *完結は絶対させます!

ふしだらオメガ王子の嫁入り

金剛@キット
BL
初恋の騎士の気を引くために、ふしだらなフリをして、嫁ぎ先が無くなったペルデルセ王子Ωは、10番目の側妃として、隣国へ嫁ぐコトが決まった。孤独が染みる冷たい後宮で、王子は何を思い生きるのか? お話に都合の良い、ユルユル設定のオメガバースです。

夫から「用済み」と言われ追い出されましたけれども

神々廻
恋愛
2人でいつも通り朝食をとっていたら、「お前はもう用済みだ。門の前に最低限の荷物をまとめさせた。朝食をとったら出ていけ」 と言われてしまいました。夫とは恋愛結婚だと思っていたのですが違ったようです。 大人しく出ていきますが、後悔しないで下さいね。 文字数が少ないのでサクッと読めます。お気に入り登録、コメントください!

十七歳の心模様

須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない… ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん 柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、 葵は初めての恋に溺れていた。 付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。 告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、 その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。 ※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。

【BL】こんな恋、したくなかった

のらねことすていぬ
BL
【貴族×貴族。明るい人気者×暗め引っ込み思案。】  人付き合いの苦手なルース(受け)は、貴族学校に居た頃からずっと人気者のギルバート(攻め)に恋をしていた。だけど彼はきらきらと輝く人気者で、この恋心はそっと己の中で葬り去るつもりだった。  ある日、彼が成り上がりの令嬢に恋をしていると聞く。苦しい気持ちを抑えつつ、二人の恋を応援しようとするルースだが……。 ※ご都合主義、ハッピーエンド

むしゃくしゃしてやった、後悔はしていないがやばいとは思っている

F.conoe
ファンタジー
婚約者をないがしろにしていい気になってる王子の国とかまじ終わってるよねー

生まれ変わりは嫌われ者

青ムギ
BL
無数の矢が俺の体に突き刺さる。 「ケイラ…っ!!」 王子(グレン)の悲痛な声に胸が痛む。口から大量の血が噴きその場に倒れ込む。意識が朦朧とする中、王子に最後の別れを告げる。 「グレン……。愛してる。」 「あぁ。俺も愛してるケイラ。」 壊れ物を大切に包み込むような動作のキス。 ━━━━━━━━━━━━━━━ あの時のグレン王子はとても優しく、名前を持たなかった俺にかっこいい名前をつけてくれた。いっぱい話しをしてくれた。一緒に寝たりもした。 なのにー、 運命というのは時に残酷なものだ。 俺は王子を……グレンを愛しているのに、貴方は俺を嫌い他の人を見ている。 一途に慕い続けてきたこの気持ちは諦めきれない。 ★表紙のイラストは、Picrew様の[見上げる男子]ぐんま様からお借りしました。ありがとうございます!

処理中です...