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しおりを挟むどれだけの時間そうしていただろうか
「なおや?」名前を呼ばれて顔を上げれば母親が帰ってきていて玄関で座り込む俺を心配そうに見つめる。涙はいつの間にか止まっていた
「玄関でどうしたの?陽斗くんは?今日は勉強教えてもらう日じゃないの?」
「はるにぃ、、、予定あるからなしになったよ。」
「そうだったの。それで、玄関でどうしたの?」
「何でもないよ。」
そう言って自分の部屋へ向かう
俺の事を心配して家まで様子を見に来たはるにぃ。
本当は家へ来るかと思ってわざと今日まで返事をしなかった。はるにぃの事だから来てくれるだろうと、、、実際はるにぃはきてくれた。やっぱりはるにぃにとって俺はどんな時でも気にかけている存在なんだって、、そう思ったのに、、、、顔を見たらすぐに恋人の方へ行ってしまった。
あの姿を思い出すだけで苦しくて、、、
彼の1番である恋人の存在が憎くて、、、
その翌日だった、、、
学校が終わり、用事のあった楓と別れて帰ることになったことで少し寄り道して帰っていた
そこでふと視線を横にした時、反対側にはるにぃの姿が見えた。思わず駆け出しそうになった足はすぐに止まった。
はるにぃの横から1人の男性が顔を出したのだ。
その男性ははるにぃの腕に自分の腕を絡めカフェを指さし楽しそうに話している。そんな男性の姿を笑顔で眺めるその姿に "あぁあの人が恋人か、、、" そう確信した
その途端胸が苦しいくらいに痛み出す
これ以上見たくなくて走り出した
目の前で見た2人の姿を忘れようとただひたすらに走った。
でも消えてはくれなくて、、、
気付けば家の前まできていた
そのまま部屋に行けば、堪えていた涙がとめどなく溢れてくる
忘れたくても何度も頭の中で勝手に流れてくるさっきの光景を現実と認めたくなくて
どうしても受け入れたくなくて俺はその日からはるにぃを避けるようになった、、、
そして迎えた受験当日
緊張する中準備をして家を出ればはるにぃが立っていた
「おっ、ちょうど良かった!」
「はるにぃ、、なんで、、、。」
「んっ、おはよう。本当はもう少し前に渡したかったんだけど最近お前全然会えなかったから。」
そう言って差し出してきたのは合格祈願のお守り。
「頑張れよ!」そう言って笑顔を向けてくるその姿に思わず泣きそうになって、、、
「ありがとう。じゃぁもう行かないと。」お礼を言いながら下を向き足早に去ろうとした時腕を掴まれた。
「大丈夫か?」そう優しく問いかけるはるにぃに「大丈夫だよ。ちょっと緊張してるだけ。」そう言えば「そっか、気をつけろよ。」そう言って優しく頭を撫でてくる。
その優しさが嬉しくて、
だけど苦しくて、
じんわりと視界がぼやけそうになった時
「なおや!!」俺の名前を呼ぶ声に顔を上げれば、楓が手を振っていた。
「おはよう!迎えにきたぞ一緒に行こう」
そう大きい声で叫ぶ
その声につられて楓の元へ急ぐ
俺の顔見た楓はなんとも言えない悲しい顔をした後に俺を後ろにさりげなく引き寄せれば、俺の後にやってきたはるにぃに声をかける
「陽斗さんおはようございます!」
「楓くんおはよう!」
「それじゃぁ俺たちは行きますね。」
「あぁそうだね、、、いってらっしゃい。」
「行ってきます!」
楓はそう言うと俺の手をとり歩き出した。
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