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番外編:ハラダレミーの友愛
トライアングルトーク
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「小笠原さんとレミーはいつから付き合ってるんですか?」
ドリンクを注いでいると、一音が透に聞いていた。
「まだ2週間くらい前かな?」
「どっちから声をかけたんですか?」
「いや、一応、俺からかな」
「え! そうなんですか!」
驚いたように一音が声を上げた。
まあ、いつも私から手を出してるからね。
今回だって、そんなに違わない。
あれは、ハロウィーンでバカ騒ぎした翌朝のこと。
飲みすぎて、シャッターの降りた駅前でぐったりしているところに、
「大丈夫ですか?」
と、声をかけてきたのが透だったのだ。
「ナンパはお断りよ」
と言って、追い払った……つもりだったが、
「はい、これ飲んでいいから」
透は戻ってきて、水のペットボトルを差し出してきた。
あー、いいやつじゃん、こいつ。
とか思いつつ、
「ちょっとー、中途半端に介抱しないでくれない。ちゃんとベッドまで運んでよ」
とか悪態をついて、すぐそばにあるラブホの看板を顎で差したのだった。
そして私はラブホに連れ込まれた。
体の相性も悪くなかった。
だから、
「これってさ、俺たち付き合うってことでいいのかな?」
事後になって、おずおずという透に、
「いいよ」
と私は答えたのだった。
「ドーチンこそ、彼氏はできたの?」
カルーアミルクの入ったグラスを置きながら私は聞いた。
「レミーじゃないんだから、そう簡単にはできませーん」
ふくれっつらで一音は答えた。
「でも、そろそろ気になる人とかできたんじゃないの?」
「気になる人かぁ……」
カルーアミルクの入ったグラスを、カラカラと回しながら、
「そういえば、うちの会社にね、すごい人がいるんだ」
と、一音が語りだした。
「シャキシャキしてて、バリバリなんだけど、事務処理とかスカスカで、パソコンはダメダメなのね」
「ああ、いるいる。そういうオッサン」
「いや、女の人なんだけど」
「オバンかよ」
「伝票もミスだらけだったから、うちの部の人は、みんなその人の相手を嫌がってたんだよね」
「 てことは、一音がその人の相手をしてたってことね」
人のいい一音にメンドウな係を押し付ける同僚の姿が目に浮かぶ。
「まあ、そうなんだけどさ……」
そこまで言うと、一音は頬に手を当てて嬉しそうに微笑んだ。
「その人、最近は伝票ミスしなくなったのよ」
「 へえ」
「やっばりね、根気良く付き合っていけば、いつかは分かってくれるものなんだなあ~って思って嬉しくなっちゃった」
まあ、シャキシャキでバリバリの人らしいから、飲み込みも早かったんだろうな。
でも、
「ドーチンの教え方がいいんだよ」
と、私は言った。
一音は人と話すときに、絶対に相手を否定しない。
相手の気持ちに寄り添って、同じ話を嫌がらずに何度でもできる人間なのだ。
ああ、一音とおしゃべりするのは癒やされるなあ。
このままお客が来なかったらいいのに。
でも、さすがにそれは困るか。
売上が立たないと私のお生活費がなくなってしまう。
「じゃあレミー、そろそろ聞かせて」
話が一段落したところで、一音がニコニコしながら言った。
一音が来た時は、いつもピアノで何か引いている。
一音は今でも私のピアノが好きらしく
「私はレミーのファンクラブ会員番号1番だからね」
とか言っている。
ピアノのほうに向かおうとしたとき、カランとドアベルが鳴った。
ちっ、客か。
「ドーチン、ピアノはまたあとね」
コクンと頷く一音。
ああ、かわいい。
癒やされるわあ。
ドリンクを注いでいると、一音が透に聞いていた。
「まだ2週間くらい前かな?」
「どっちから声をかけたんですか?」
「いや、一応、俺からかな」
「え! そうなんですか!」
驚いたように一音が声を上げた。
まあ、いつも私から手を出してるからね。
今回だって、そんなに違わない。
あれは、ハロウィーンでバカ騒ぎした翌朝のこと。
飲みすぎて、シャッターの降りた駅前でぐったりしているところに、
「大丈夫ですか?」
と、声をかけてきたのが透だったのだ。
「ナンパはお断りよ」
と言って、追い払った……つもりだったが、
「はい、これ飲んでいいから」
透は戻ってきて、水のペットボトルを差し出してきた。
あー、いいやつじゃん、こいつ。
とか思いつつ、
「ちょっとー、中途半端に介抱しないでくれない。ちゃんとベッドまで運んでよ」
とか悪態をついて、すぐそばにあるラブホの看板を顎で差したのだった。
そして私はラブホに連れ込まれた。
体の相性も悪くなかった。
だから、
「これってさ、俺たち付き合うってことでいいのかな?」
事後になって、おずおずという透に、
「いいよ」
と私は答えたのだった。
「ドーチンこそ、彼氏はできたの?」
カルーアミルクの入ったグラスを置きながら私は聞いた。
「レミーじゃないんだから、そう簡単にはできませーん」
ふくれっつらで一音は答えた。
「でも、そろそろ気になる人とかできたんじゃないの?」
「気になる人かぁ……」
カルーアミルクの入ったグラスを、カラカラと回しながら、
「そういえば、うちの会社にね、すごい人がいるんだ」
と、一音が語りだした。
「シャキシャキしてて、バリバリなんだけど、事務処理とかスカスカで、パソコンはダメダメなのね」
「ああ、いるいる。そういうオッサン」
「いや、女の人なんだけど」
「オバンかよ」
「伝票もミスだらけだったから、うちの部の人は、みんなその人の相手を嫌がってたんだよね」
「 てことは、一音がその人の相手をしてたってことね」
人のいい一音にメンドウな係を押し付ける同僚の姿が目に浮かぶ。
「まあ、そうなんだけどさ……」
そこまで言うと、一音は頬に手を当てて嬉しそうに微笑んだ。
「その人、最近は伝票ミスしなくなったのよ」
「 へえ」
「やっばりね、根気良く付き合っていけば、いつかは分かってくれるものなんだなあ~って思って嬉しくなっちゃった」
まあ、シャキシャキでバリバリの人らしいから、飲み込みも早かったんだろうな。
でも、
「ドーチンの教え方がいいんだよ」
と、私は言った。
一音は人と話すときに、絶対に相手を否定しない。
相手の気持ちに寄り添って、同じ話を嫌がらずに何度でもできる人間なのだ。
ああ、一音とおしゃべりするのは癒やされるなあ。
このままお客が来なかったらいいのに。
でも、さすがにそれは困るか。
売上が立たないと私のお生活費がなくなってしまう。
「じゃあレミー、そろそろ聞かせて」
話が一段落したところで、一音がニコニコしながら言った。
一音が来た時は、いつもピアノで何か引いている。
一音は今でも私のピアノが好きらしく
「私はレミーのファンクラブ会員番号1番だからね」
とか言っている。
ピアノのほうに向かおうとしたとき、カランとドアベルが鳴った。
ちっ、客か。
「ドーチン、ピアノはまたあとね」
コクンと頷く一音。
ああ、かわいい。
癒やされるわあ。
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