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番外編:ハラダレミーの友愛
レミのお仕事
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「こんなところにピアノバーがあったのか」
「いいところでしょ、ナカザトさん。ここのママがまた色っぽくて……」
話しながら入ってきた客は二人。
最後の言葉はコソコソと喋っていたが、しっかり聞こえている。
誰がママだ。ここはバーだ。スナックじゃない。
そんな失礼なことを言っているのは、たまーに来る中年のオッサン。
名前は……なんだっけ?
くたびれたスーツ来てメガネかけてて中間管理職っぽいから、チューカンって呼んどくか。
「カウンターにします? それともテーブルがいいですか?」
満面の愛想笑いを浮かべて接客する私。
「カウンターにしよう。あんたの顔が良く見えるように」
ナカザトと呼ばれた男が応えた。
しれっと調子のいいことを言っているが、あえて聞き流すことにした。
チューカンと一緒でメガネにスーツなのに、ナカザトは全然くたびれた感じがしない。
シュッとしてる。
「お客さんは初めてですね。よろしくお願いします」
カウンターに座る二人の前にオシボリとコースターを置きながら話しかけると、ナカザトがジロジロと私を見つめていた。
あまりいい気はしない。
「どうかされましたか?」
私は負けじと見つめ返す。
「レミさんが、あんまりキレイなんで見とれてるんですよ、ハハハハハ」
なぜか隣のチューカンが代わりに応えた。
あんたには聞いてないって。
チューカンに気を取られている隙にナカザトは私から視線を外していた。
「……なんだ、まだガキじゃねぇか」
と、呟きながら!!
何か言い返してやろうと思って身を乗り出したとき、またもやカランとドアベルが鳴った。
6人ほどの団体客が入ってくる。
「いらっしゃいませ、こちらのテーブル席でいいですか?」
そう言ったのは私じゃない。一音だ。
私が動く前に、客のはずの一音が案内して、そのまま注文まで取りだしていた。
実は、この店ではよくあることだったりする。
「生ビール3杯と、ジントニック、ブルドッグ、ボンベイサファイヤですね」
一音が復唱していると、
「カクテルは、俺がつくるよ」
透がカウンターの中に入ってドリンクの用意をしだした。
おや、透が手伝ってくれるのは珍しい。
一音の前でいいところ見せようと思ってるとか?
癪だけど、正直、団体客が来たときには助かるなぁ。
「おい、俺たちも注文いいか?」
「あら、ごめんなさい」
ナカザトの言葉に我に返り、私も粛々と仕事をすることにした。
店内の全員にドリンクが行き渡ると、静かなバーも、あっという間に賑やかな雰囲気になる。
しばらくナカザトたちの話に適当に相槌をうっていたが、
「いやー、ナカザトさんにはかないませんとも。ガハハハハ」
酒を飲んで、チューカンの声が大きくなってきた。
うるさい。
正直しんどいので、
「それじゃー、そろそろピアノでもきいてもらおっかな」
と、ピアノのほうに向かうことにした。
するとナカザトが驚いたように聞くのだ。
「あんたが弾くのか?」
「他に誰がいます?」
「あっちのスラっとした子のほうがピアノって感じだろ」
ナカザトが一音のほうを見やる。
「そーゆーことは、聴いてから言ってもらえますか~」
「まあ、聴くけどさ。背伸びするとロクなことがないぜ、おチビちゃん」
なんですって?
おチビちゃんと言いました? このメガネ。
このレディに向かって!
……。
いやいやおこっちゃダメダメ。仕事中仕事中。
接客業だもの。こんなことで腹を立ててたら持たない持たない。
私は心を落ち着けると、にっこりとナカザトに微笑んで言った。
「いいから黙って聞きやがれ、この野郎」
「いいところでしょ、ナカザトさん。ここのママがまた色っぽくて……」
話しながら入ってきた客は二人。
最後の言葉はコソコソと喋っていたが、しっかり聞こえている。
誰がママだ。ここはバーだ。スナックじゃない。
そんな失礼なことを言っているのは、たまーに来る中年のオッサン。
名前は……なんだっけ?
くたびれたスーツ来てメガネかけてて中間管理職っぽいから、チューカンって呼んどくか。
「カウンターにします? それともテーブルがいいですか?」
満面の愛想笑いを浮かべて接客する私。
「カウンターにしよう。あんたの顔が良く見えるように」
ナカザトと呼ばれた男が応えた。
しれっと調子のいいことを言っているが、あえて聞き流すことにした。
チューカンと一緒でメガネにスーツなのに、ナカザトは全然くたびれた感じがしない。
シュッとしてる。
「お客さんは初めてですね。よろしくお願いします」
カウンターに座る二人の前にオシボリとコースターを置きながら話しかけると、ナカザトがジロジロと私を見つめていた。
あまりいい気はしない。
「どうかされましたか?」
私は負けじと見つめ返す。
「レミさんが、あんまりキレイなんで見とれてるんですよ、ハハハハハ」
なぜか隣のチューカンが代わりに応えた。
あんたには聞いてないって。
チューカンに気を取られている隙にナカザトは私から視線を外していた。
「……なんだ、まだガキじゃねぇか」
と、呟きながら!!
何か言い返してやろうと思って身を乗り出したとき、またもやカランとドアベルが鳴った。
6人ほどの団体客が入ってくる。
「いらっしゃいませ、こちらのテーブル席でいいですか?」
そう言ったのは私じゃない。一音だ。
私が動く前に、客のはずの一音が案内して、そのまま注文まで取りだしていた。
実は、この店ではよくあることだったりする。
「生ビール3杯と、ジントニック、ブルドッグ、ボンベイサファイヤですね」
一音が復唱していると、
「カクテルは、俺がつくるよ」
透がカウンターの中に入ってドリンクの用意をしだした。
おや、透が手伝ってくれるのは珍しい。
一音の前でいいところ見せようと思ってるとか?
癪だけど、正直、団体客が来たときには助かるなぁ。
「おい、俺たちも注文いいか?」
「あら、ごめんなさい」
ナカザトの言葉に我に返り、私も粛々と仕事をすることにした。
店内の全員にドリンクが行き渡ると、静かなバーも、あっという間に賑やかな雰囲気になる。
しばらくナカザトたちの話に適当に相槌をうっていたが、
「いやー、ナカザトさんにはかないませんとも。ガハハハハ」
酒を飲んで、チューカンの声が大きくなってきた。
うるさい。
正直しんどいので、
「それじゃー、そろそろピアノでもきいてもらおっかな」
と、ピアノのほうに向かうことにした。
するとナカザトが驚いたように聞くのだ。
「あんたが弾くのか?」
「他に誰がいます?」
「あっちのスラっとした子のほうがピアノって感じだろ」
ナカザトが一音のほうを見やる。
「そーゆーことは、聴いてから言ってもらえますか~」
「まあ、聴くけどさ。背伸びするとロクなことがないぜ、おチビちゃん」
なんですって?
おチビちゃんと言いました? このメガネ。
このレディに向かって!
……。
いやいやおこっちゃダメダメ。仕事中仕事中。
接客業だもの。こんなことで腹を立ててたら持たない持たない。
私は心を落ち着けると、にっこりとナカザトに微笑んで言った。
「いいから黙って聞きやがれ、この野郎」
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