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バキュラビビーの葛藤
バキュラビビーの葛藤(下)
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「話は変わるが…….」
仕切り直して私は話し始めた。
「あの戦闘訓練は、さっきの施設に行かないとできないのか?」
「できる場所は他にもありますけど……シートの数とか会社からの近さを考えたら、さっきのところが一番都合が良いですね」
「ううむ。頻繁に足を運ぶのは難しいと思うのだが……」
茅野宮美郷に「擬態」した生活を続けながら、あの施設に通うのは無理がある気がする。
「せめて自分の部屋から訓練できればな……」
せっかく作成したゲトラスカを発展させたい。
早く敵を殲滅して昇進したい。
新しい能力を獲得して自己拡張に励みたい。
「……そうですね。地上戦でよければパソコン版がありますよ。もちろんネット環境は必要ですが……」
なぜか言いにくそうに、郡山重文が言う。
「パソコンか。それなら私も持っている」
しかし、
「ネット環境とは通信回線のことだな? 残念ながら私の部屋には通信回線は設置されていないのだよ……」
だから今まで佐山定の部屋に行って情報検索していたのだ。
「佐山定の部屋に戻る必要があるか……。なんとも、やりにくいな」
「喧嘩してるんですか?」
「向こうが一方的に敵対しているだけだがな。こちらから和解を提案するべきか」
「いっそ、このまま離れてしまうことをすすめますが」
「それでは地上戦の訓練ができないだろう」
今の私には佐山定の通信回線が必要なのだ。
「自分の部屋にネット引いたらどうですか?」
「なに? 一般人でも新たに通信回線を開けるものなのか? そんな話、茅野宮美郷の知識にはないのだが?」
住宅ができた時点で、回線の有無が決まっているのだと思っていた。
「簡単にできますよ。なんなら手続きしてあげましょうか?」
「ああ、助かる。しかしそうか。それならば佐山定の部屋に固執する理由もなくなるな……」
とは言え、彼の暮らしに闖入してきた私には、彼の今までの生活を極力維持する義務がある。
義務を果たすためにも、このまま関係を断つわけにはいかないだろう。
「いや、通信回線は別にしても、和解に乗り出さねばなるまい」
私が決心したとき、
「それが佐山さんのためになると思っているのですか?」
郡山重文が、非難するような目をして言った。
「はっきりいいます。あなたがバキュラビビーとして目覚めてしまった以上、あなたと彼は、もう共に生きることは出来ません」
今までにない、強い目つきで郡山重文が私を見ている。
「そんなことは……」
何か言い返してやろうと思ったが、彼の目を見ると。何を伝える得るべきなのかわからなくなってくる。
「……君は、私にどうして欲しいんだ?」
「さっきも言ったでしょう。このまま別れてしまうべきだと。あなたはですね……私としか、生きていけないと思います」
郡山重文は、そう言ったきったきり、押し黙ってしまった。
ジュースを吸ってみるが、すでに空だったのでズルズルと空気を吸う音が出るだけだった。
「それでも、私は佐山定と話をするべきだと判断した。彼の生活をないがしろにするわけにはいかない」
まあ、佐山定がなぜ激昂したのかよくわらないのだが。
「そうですか。それなら差し出がましいですが、1つだけアドバイスさせてください」
「なんだ?」
「和解するのは、額の腫れが引いてからの方がいいですよ」
そういえば瞼の上がまだ大きく晴れているのだった。
「こんなもの、あと8時間で修復完了する」
「無茶なことを言わないでください。あなたはもう自己進化型宇宙戦闘機ではないんですよ。茅野宮美郷さん」
仕切り直して私は話し始めた。
「あの戦闘訓練は、さっきの施設に行かないとできないのか?」
「できる場所は他にもありますけど……シートの数とか会社からの近さを考えたら、さっきのところが一番都合が良いですね」
「ううむ。頻繁に足を運ぶのは難しいと思うのだが……」
茅野宮美郷に「擬態」した生活を続けながら、あの施設に通うのは無理がある気がする。
「せめて自分の部屋から訓練できればな……」
せっかく作成したゲトラスカを発展させたい。
早く敵を殲滅して昇進したい。
新しい能力を獲得して自己拡張に励みたい。
「……そうですね。地上戦でよければパソコン版がありますよ。もちろんネット環境は必要ですが……」
なぜか言いにくそうに、郡山重文が言う。
「パソコンか。それなら私も持っている」
しかし、
「ネット環境とは通信回線のことだな? 残念ながら私の部屋には通信回線は設置されていないのだよ……」
だから今まで佐山定の部屋に行って情報検索していたのだ。
「佐山定の部屋に戻る必要があるか……。なんとも、やりにくいな」
「喧嘩してるんですか?」
「向こうが一方的に敵対しているだけだがな。こちらから和解を提案するべきか」
「いっそ、このまま離れてしまうことをすすめますが」
「それでは地上戦の訓練ができないだろう」
今の私には佐山定の通信回線が必要なのだ。
「自分の部屋にネット引いたらどうですか?」
「なに? 一般人でも新たに通信回線を開けるものなのか? そんな話、茅野宮美郷の知識にはないのだが?」
住宅ができた時点で、回線の有無が決まっているのだと思っていた。
「簡単にできますよ。なんなら手続きしてあげましょうか?」
「ああ、助かる。しかしそうか。それならば佐山定の部屋に固執する理由もなくなるな……」
とは言え、彼の暮らしに闖入してきた私には、彼の今までの生活を極力維持する義務がある。
義務を果たすためにも、このまま関係を断つわけにはいかないだろう。
「いや、通信回線は別にしても、和解に乗り出さねばなるまい」
私が決心したとき、
「それが佐山さんのためになると思っているのですか?」
郡山重文が、非難するような目をして言った。
「はっきりいいます。あなたがバキュラビビーとして目覚めてしまった以上、あなたと彼は、もう共に生きることは出来ません」
今までにない、強い目つきで郡山重文が私を見ている。
「そんなことは……」
何か言い返してやろうと思ったが、彼の目を見ると。何を伝える得るべきなのかわからなくなってくる。
「……君は、私にどうして欲しいんだ?」
「さっきも言ったでしょう。このまま別れてしまうべきだと。あなたはですね……私としか、生きていけないと思います」
郡山重文は、そう言ったきったきり、押し黙ってしまった。
ジュースを吸ってみるが、すでに空だったのでズルズルと空気を吸う音が出るだけだった。
「それでも、私は佐山定と話をするべきだと判断した。彼の生活をないがしろにするわけにはいかない」
まあ、佐山定がなぜ激昂したのかよくわらないのだが。
「そうですか。それなら差し出がましいですが、1つだけアドバイスさせてください」
「なんだ?」
「和解するのは、額の腫れが引いてからの方がいいですよ」
そういえば瞼の上がまだ大きく晴れているのだった。
「こんなもの、あと8時間で修復完了する」
「無茶なことを言わないでください。あなたはもう自己進化型宇宙戦闘機ではないんですよ。茅野宮美郷さん」
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