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しおりを挟む「あれから何年たったんだっけか」
ルイスはふっと闇夜に浮かぶ月を見つめて目を細めた。初めて会ったエルドレッドは、まるで太陽の様だった。しかし、今はと言うと、手が届かないのは変わらないのに、冷たい光を放つ月の様。イアリスと共に守ると誓った存在を守れていない現状に歯噛みする。己の無力さを呪わない日は無い。
やれやれと頭を振ってひやりとした空気に満ちた廊下を歩く。守りたいという純粋な心が、恋情に変わったのは何時頃だったか。一目惚れと言えばそうとも言える気がするし、初めて会った時にはむず痒い想いを感じ取れどそれが恋情だったかと聞かれればなんとも言い難い。
そんな事をつらつらと考えながら、ふと顔を上げると窓から見えるバルコニーに、ほっそりとした影を見つけた。四六時中彼の事を考えているせいか、幻覚でも見え始めたかとも一瞬思ったが、どう見てもそんな感じがない。
「アイツ、また抜け出しやがってっ……!」
今日は普段よりも一層冷え込んだ夜である。血相を変えてバルコニーに駆け込むと、ピクリと肩が揺れ、それでも振り返らなかった。
「こんな所で何してる」
「……」
頑なに答えないエルドレッド。無性に苛立ちを感じ、その華奢な腕を掴む。冷え切った腕を手のひらに感じ、まずは無理にでも引きずり込んで温めなければと考えをめぐらすが、ゆっくりと向けられた視線に立ち竦む。夜闇を切り取ったかの様なその双眸は、空気と同じように冷え切っていた。
「それは、俺が聞きたい」
「まだ、俺をここから追い出したいか」
「当然だろう?言ったはずだ。俺にはもう、お前は必要ない」
ゆっくりとルイスに向き直ると、手すりに体を預け睨むように見上げてくる。こんな状況だというのに、久方ぶりに会話し、その瞳に己が映っている事に歓喜した体が微かに震える。微かに伏せられているせいで、視線は合わないが。
すっと小さな顎に手を添える。虚を突かれた所為か空でその手を叩き落とされなかったが、一瞬の空白の後にいやいやと首を振られ手が離れそうになる。危なげなくその顎を掴み、傷をつけないように、けれど離れないように気を付けて力を籠める。ひゅっと息をのんだ彼が動きを止める。
「お前に俺が必要なくても。俺はお前が必要で。側に居たい。それだけだ」
「お前を必要とする人間は掃いて捨てる程いる。それにお前は幾つになった。いい加減女の一人や二人抱き込んで子でもなしたらどうだ。家族も安心するだろうに」
「27だな。だが、生憎な事に女に興味はない。抱いたことはないとは言えないが。子だって別にほしいと思った事は無い。その上もってきて、お前を放り出して女に走ったらオヤジにぶん殴られてお袋に家を追い出されそうだ」
「相変わらず愉快な家族だな」
「お陰様で。ウチの事を考えてくれるなら追い出さない事だ。幸いなことに弟がさっさと惚れた女を連れてきて孕ませた結果、喧しいとお袋がぼやくくらいに賑やかな家になってる」
「……愉快な家族だな」
「ああ。あの猪突猛進な感じ、いい加減卒業して欲しいんだがな。たまに会うがその度に新婚さながらにべたべたされてうっとおしい」
話を逸らしつつお道化て見せると、エルドレッドはクスクスと笑った。ふう、と息をつくと視線を流しクタリと手すりに寄り掛かる。
「兄さまにも、そんな子供が出来たのかな」
「そうかもな。心配なのは子供とお前を天秤にかけて悩んだ末に政務を放り出さないか、だ。結局両方を溺愛して政務を放り出す癖に」
「違いない。兄さまは俺に甘かった」
「お前は、子を可愛がってイアリスを放置しそうだ。拗ねるから勘弁してほしいが」
「違いない。絶対可愛いもん」
想像するだけでげんなりする光景に、方や遠い目をし、方や楽しそうに笑う。切なげに瞳を揺らしてエルドレッドは微笑む。
「絶対可愛いもん。兄さまの子も……お前の子も」
小さな声が、ルイスの心に亀裂を与える。欲しいのはエルドレッドであって、女でも、子でもない。でも、その心は届かないし、届けていいのかいまだに悩み続けている。
「要らないさ。そんなもの。これ以上煩いのが増えたらお袋がキレる」
「そうは言いつつも面倒見てくれるだろ?いい母親じゃねぇか」
「王妃様もお優しいだろう」
「当然だろ?俺の母だぞ?」
ゆっくりゆっくりエルドレッドの心に近づこうとする。その心を取り囲む堅牢な壁を乗り越えられる場所を探す。そんなルイスの足掻きを知ってか知らずか、エルドレッドはそれとなくルイスの手を振り払い、重力に従うようにずるずると座り込む。寒さに耐えるかの様にぎゅっと体を抱きしめ、顔を伏せる。
「強く、なりたい」
ポツリと零された声は小さくて。でも、エルドレッドの心からの叫びでもあった。目を細めて小さな声を掬い上げると、そっとその前に膝をついた。小さな頭を撫でると、冷え切った柔らかな黒髪がルイスの大きな手のひらを擽った。
「これ以上、皆を嘆かせたくない」
「そうか」
「怖い」
「俺がいるだろう」
「お前がいたら、俺は立ち上がれない」
「なんで」
「これ以上、俺を、甘やかさないでくれ」
震える声に、無力さを噛みしめる。エルドレッドは既に周囲に甘え切っていると思っているし、実際にその通りでもある。それでも、傷ついた心は今だ癒えず、その焦りがエルドレッドを追い詰める。悪循環そのものである。甘やかすべきか、突き放すべきか。どちらかを選ぶ段階に来ていて、聡いエルドレッドもソレに気付いていた。だからこそ、離宮という庇護者から離れた寂れた場所に来たのだ。エルドレッドが選んだのは突き放される方。それに対し、ルイスが選ぶのは甘やかす方。
「悪いな。俺はお前の手を離すことが出来ない」
「ほんと、お前のそう言う所が、嫌いだ」
「しってるさ」
絞り出される呪詛の様な声に、ルイスが悲し気に微笑む。嫌いと言われても、突き放されても。何があっても手を離さない。それは、幼き日の誓いであり、望みであり、願いでもある。それと同時に、もう一つの理由。
「約束したからな」
突き刺さるような冷たい空気に溶け込む言葉。くっと唇を噛むと、やおら手を伸ばし、冷え切った体を抱き寄せる。そのままの勢いで抱き上げると、エルドレッドは既に夢うつつの状態だった。早く温めなければ危険だと思いつつ、そっと抱きしめる。
足早にエルドレッドの部屋へと戻ると、音を立てずに滑り込む。思った通り、ルーナにも見つからないように抜け出したようだ。部屋の前の護衛騎士のぎょっとした顔を見る限り、上手い事抜け出したのか秘密の抜け穴があったのか、どちらにせよ説教と扱きは決定だと心に決める。温められた部屋を横切り寝室を目指す。大きくあけ放たれた窓を一瞥するとベットにそっとエルドレッドをおろし、窓を閉める。冷たい空気に満たされた部屋が温まるのには時間がかかりそうだ。ひとまず暖かな布団で包みこんでホッと息をつく。すぐそばに腰を下ろし、青ざめた顔を見下ろす。
冷たい月の光が二人を照らし出していた。
予想外の謁見で出会った王子たちは、ルイスの想像を超えて滅茶苦茶だった。イアリスは外面は良いが、兎に角悪戯好きで腹黒い性格。エルドレッドは体が弱い癖にあちこち抜け出して遊び回った結果、熱を出す。共通するのは学習能力の低さじゃないかと本気考える程に懲りない性格をしていた。実際は揃って頭が切れすぎて、捕まえるのが一苦労。いい迷惑である。そんな二人に付き合って走り回るルイスは、すぐに周囲から世話係と認識され、同情の視線を向けられつつ体よく厄介ごとを押し付けられるという非常に哀れな立場に追いやられていた。
「で、俺の言いたいことは何かわかるな?」
「さあて。なんのことやら」
しれっと明後日の方向を向くイアリス。その前に仁王立ちするルイスは既に額に青筋を浮かべており、フルフルと震える拳は今にもイアリスの頭に落ちそうなくらいである。しかし、クスクスと可愛らしい囀りが聞こえてきた事で、がっくりと肩を落として頭を抱えた。
「よしよし、いい子だエル。ルイスを黙らせるにはお前が持ってこいだな」
「ふふ。兄さまもルイスもへんなの」
「黙ってろこの猫かぶりの大馬鹿王子共」
最初こそ礼儀正しくを心掛けていたルイスだが、いつしかそんなモノはかなぐり捨てた。そこにこだわっていたらこの王子たちとは付き合えないと割り切ったのだ。父は微妙な顔をしていたが、国王が見て見ぬふりをしているので暗黙の内に認められるようになったのだ。ものすごく遠い目をしていたが。子の性格を一番把握しているのはやはり親であるという事だろう。
はあとため息をついて前髪をクシャリと握りしめ、じとっとした目を向ける。大好きな兄に抱き上げられてご満悦な弟王子に、溺愛する弟に甘えられてデレっとした顔をする兄王子。最早手の施しようがない。視線に気づいたエルドレッドが、にっこりと笑ってルイスに手を伸ばす。むっとしたイアリスが意地でも渡すまいという雰囲気を醸し出したが、愚図る弟に諦めた顔をしてルイスに引き渡す。兄の細い腕と違って、少年の割にはしっかりとした体つきのルイスにしっかりと支えてもらって満足気なエルドレッド。疲れるんだけどと内心後の事を考えつつ、小さな体を腕に乗せる。
「何だかんだ言ってもエルに甘いよなルイス?」
「煩い」
ギュッとしがみついてくる、何気に強い力を目を細めて受け入れつつ、茶化してくるイアリスを切り捨てる。ニヤニヤした顔をしつつ、何処か拗ねている色を宿した瞳をしている時は要注意。一言で言うと面倒くさい。そんな風に思っているのが伝わったのだろうか。少年らしい孤を描くようになってきた頬を膨らませ、いーっと歯をむき出したイアリスが拗ねた口調で噛みついてくる。
「エルは嫁にやらんぞ!」
「よめ?」
「イアリス!」
どうやら効果は抜群だ。きょとんとした顔の側で、耳を赤く染めた精悍な顔をした少年がなんてことを言うんだ、と叫ぶ。ふふん、と細やかな復讐に成功した悪ガキは益々ニヤけた顔をしてルイスに指を突き付ける。
「もっともぉっと強くならなければエルはやらん!つか、お前にエルはもったいない!おとといきやがれ!」
「このブラコン!」
「はっはっは。なんとでも言いやがれ!」
ギャアギャアと舌戦を始める兄たちに、付いて行けないのがエルドレッド。暫くはニコニコと兄たちのじゃれ合いを見ていたが、ややあって飽きたようだ。しがみついていたルイスの髪を遠慮がちに引っ張る。すぐに気づいた二人がすぐさまエルドレッドの機嫌をとろうと優秀と評される二人の頭が凄まじい速さで回転を始める。だが、くしゅんと可愛らしいくしゃみが聞こえ、慌てて部屋に戻る事を決定する。まだ遊びたいと駄々をこねるエルドレッドを宥めつつ、部屋に戻った三人はソファに座り、当時侍女見習いだったルーナのいれた紅茶を飲むことにした。
遊び足りないといっても、体力は限界だったのか、すぐに船をこぎ始めたエルドレッドはそのままルイスの膝を枕に夢の世界に旅立った。兄の膝じゃないのか、と愕然とするイアリス。悩むことなく選ばれたルイスは得意満面でドヤ顔を見せる。ルーナも呆れる程に低レベルな争いである。
「ったく。なんで優しい兄さまの膝じゃないんだか」
「腹黒を感じ取ってるんじゃないか」
「お前だって猫かぶりの癖によく言うぜ」
コソコソと会話しつつ、ルイスは指通りの良い髪を撫でる。気持ちよさそうに喉を鳴らしたエルドレッドがすり寄ってくるのを感じ、相好が緩む。嫉妬深い視線は完全無視。
「……なあ、ルイス」
「なんだ」
「頼みがあるんだけど」
「場所は変わらんぞ」
軽口を返しつつ、イアリスに向き直る。こういう時のイアリスは、真剣に何かを考えている時なので、真正面から受け止めると決めているのだ。想像通り、イアリスは、優しい顔をして弟を見つめていた。
「まぁ、なんだ。こんな事、言いたくないけど」
「なんだ」
「ほんっと、死ぬほど言いたくないんだけど。ルイスだけには言いたくないけど!」
「さっさと本題言え。鬱陶しい」
「エルの事、頼むな」
散々溜めた末の、小さな頼み事。意外な言葉に眉を上げると、イアリスは苦笑していた。
「なんつーかさ。エルはすごくいい子で、頭よくて。可愛いし、空気も読める凄い子なんだよな」
「自慢かブラコン」
「ま、それもあるんだけど」
そう言うとソファに寄り掛かったイアリスの顔は、歳に似合わぬ大人びた憂いを帯びていた。
「その反面、すげー繊細な心してるんだと思うんだよな。体が弱いのもあると思うけど」
「……かもな」
「何かあったら、賢さが邪魔をして、酷く心を傷つけそうで、すごく、怖い」
「考え過ぎだろう」
「そうだといいけど」
ルイスと視線を合わせ、その憂いを帯びた瞳を揺らす。兄は人を見る目を、弟はありとあらゆる知識を吸収する頭脳を与えられたと称される兄弟。イアリスの人を見る目は本物で。ルイスは考えすぎだと窘めつつ、忠告を頭の片隅に置く事を決めた。
「エルを守れ、ルイス。この際、お前の心さえも利用してやらあ」
ニヤリと笑って飄々と告げられる。やはり見透かされていたか、と居心地悪げに身じろぎする。その際、収まりが悪くなったのかエルドレッドが唸り、もぞもぞと動き出す。ピキンと固まるルイスを他所に暫く蠢いていたエルドレッドは、やがて収まりのいい場所を見つけたのか、満足そうに息をつくと再び寝息を立て始める。ホット息をつくと、ニヤニヤ顏に行き当たり、顔に熱が集まる。軽くキャパオーバーな顔をする悪友を見つめ、クスクス笑ったイアリスだったが、笑いを収める。
「エルを愛して、その手を離すなよ」
「……ったく。縁起でもない。俺に頼むのは嫌なんじゃなかったか」
「まあ、それはそれ、これはこれってヤツ。俺が思うにさ、エルは人一倍繊細で、何かあれば空に引きこもって自らを犠牲にするって言うか、封じ込めてしまう気がするんだよね」
心配そうに弟を見つめて、軟な心を心配するその姿は、一国の王子ではなく一人の兄だった。
「何かあった時にさ。俺も側に居てやりたいし、そのつもりだけど、やっぱり俺は王子なんだよな」
一人の兄の顔をしていても、現実の身分はいつ何時もその細い肩にのしかかっていて、降ろす事は出来ないのだとルイスも理解していた。
「もしかしたら、何か理由があって、側に居てやれないかもしれない。そうなったらさ、お前が傍に居てやってくれよ」
「俺でいいのかブラコン王子」
「嫌に決まってるだろ、大事な大事な弟に手ぇ出しそうな煩悩むき出しな男なんて」
「誰の話だ誰の」
心底嫌そうな顔をする主君に、顔を引きつらせて突っ込む。そんな顔をしていないと睨みあうが、ふっと肩を竦めて視線を逸らしたのはイアリスの方だった。
「ま、それとは別にしてこんな事を頼めるのはお前位って事さ」
「へぇ。そこまで信頼されていたとはな」
「へそ曲げんなよ」
軽口を叩きながら、ルイスの膝で眠る小さな宝を静かに見下ろす。
「エルもお前に懐いてるしな。腹立つけど」
「少なくともお前よりは好かれている気がするな」
「不敬罪だぞ畜生」
「冗談だ。まぁ、その内、きちんと振り向かせるけどな」
「やっぱり下心ありありじゃねぇかこのショタコン」
「煩い。つか、俺ら自身、んなに歳いってねぇじゃねぇか。ちょっと年下の子を好きになっただけでショタコン扱いは無いだろうが」
「何が悔しいって、エルも満更では無さそうな所だけどな!」
「自分で言って自分で沈むなよ……」
ズーンと重々しい空気を背負ったイアリスをみて鼻で笑う。
「エルは俺が守るさ。ついでにお前もな」
「俺の護衛の癖についでは俺の方か?」
「違ったか」
「まぁいい。寧ろそっちの方が俺としても気楽に動ける」
ため息交じりにそう言うと、すっと拳をルイスに突き出す。
「大切にしろよ」
「言われずとも」
こんっと軽く合わせた拳は、胸の内を熱くした。イアリス《兄》からエルドレッド《弟》を託された日の事。
とても大切な思い出の一つ。
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