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混ぜるな危険
混ぜねば分からぬ事もある(前編)
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紫ちゃんのターンです。思いのほか、紫ちゃんが変な方向に……。元気な彼の方がいい!と言う方はちょっとお気を付けて。ギャグ8、シリアス2(独断と偏見)です。
**********
「学習能力」
以前の経験(ミスの場合は恐怖体験が殆ど)を基に学習できる、教訓を持って臨める能力。
学習能力が低いタイプは頭が悪いというよりは面倒臭がり屋の傾向が見られ、物事の原因などは理解しているが対策を怠るあるいは忘れてしまう為、中々進歩しないのである。覚えた時柄をその場で実行できることが学習能力の高さを証明するものである。
――ピクシブ百科事典より――
――――――――――
「って書いてあるんですけど、ご存知ですか?」
「え、知ってるに決まってるじゃん!これでも最高学府を主席卒業してるんだ。なめてもらっちゃぁ困るね!」
「うーん。この反応。どうしてくれようか」
今日も今日とて学ばない二人の密会である。正確に言えば、密会にすらならないか。なにせ、青葉の部屋でまったりしていた碧の元を襲撃してきた紫の姿に悲鳴を上げたメイドの声に釣られて使用人達が大挙して訪れ、挙句、鬼の形相をした紫付きのメイドが恐ろしい勢いで現れたのだから。
「紫様!碧様もお疲れでしょうし、部屋にお戻りを!」
「えぇ?可愛い義弟君のお嫁さんだよ?仲良くしたいじゃん。ちょっとくらい良いでしょー」
「お嫁さんって……。まぁ俺は構わないですけど、青葉が怖いかなぁ」
ニコニコとベットを占領した紫が笑う。じりじりと間合いを詰めるメイドと無言の争いをしているその姿をのほほん、と眺めていた碧が紅茶を口に含む。
うーん、今日もいい香り。ここの使用人さんって本当に優秀。パフェもあると尚良し何だけどなぁ。そんな風に思いながらメイドを見やるも、青ざめた顔でオロオロしている彼女に言う事も出来ず諦める。どうせパフェ禁止令がこの屋敷では発布されているから出てこないしなぁとクッキーをかじりつつ頬を膨らませる。ついでに下手に紫さんと話すると青葉がキレるんだよな、と不思議そうに呟いている。
αの嫉妬?でも、その場合は青河さんが俺にキレるはずなのに、なぜか青河さんは紫さんにキレ、青葉が俺にキレるんだよな、と首を傾げるその様は可愛らしい。勉強はできても、そちらの機微には疎い。使用人達が可愛がるわけである。なにせ紫はそちらの機微に関しては理解しているかどうかをさておいて、暴走するのだから。
いい加減使用人達も紫に対する態度が砕けたものになるのは仕方ないだろう。
「という事ですので、紫様。お部屋にお戻りを」
「僕疲れて動けないぃ」
「ここまで来ておいて今更?!」
「ここまで来たら力尽きたぁ」
てへ、と可愛くあざといポーズを取って見せる紫。うわ、流石Ω可愛い、と見惚れているのは碧だけ。メイドに至ってはにっこり満面の笑顔。完璧すぎて、もはや面である。それが通じる相手であれば話は早いが、そうともいかず。
「昨日も青河に無茶されたんだもん。体痛いからちょっと休んでく。あ、すぐに回復するし部屋戻るから手助けいらないよ?」
「青河様、お労しや……」
自業自得なのにも関わらず青河の所為になっている。というか、している。あっけらかんと言い放つ紫をジト目でみたメイドがため息を漏らして引き下がる。こうなったら梃子でも動かないので、諦めた方が早いのだ。一度食い下がってへそを曲げられた結果、さらに面倒な事になったのは経験済みである。
「相変わらず強かというか、図太いですね」
「そりゃ勿論!そうでなければハーレムで勝ち残れないでしょ!」
ふふん、と得意げに胸を張っているが、その体はぐったりとベットに寝そべったまま。なんの何の言いつつ、体が辛いのは確からしい。まぁかく言う俺もそうだけど、とそっと腰を撫でる碧。
「絶倫じゃないここの兄弟?」
「うーん。青葉以外は知らないからアレですけど、まぁ、いつまでやるのと悲鳴を上げた回数は数えられませんね。むしろ、悲鳴をあげなかった日を数えた方が早い気が」
「そうそう。どうせならハーレム作ってその精力を均等配分してくれても良くない?一石二鳥!流石僕。天才だよね」
「はぁ」
どこまでいってもハーレムから思考が離れないらしい。紫の頭の中は、1にハーレム、2にハーレム、3・4飛ばして5にハーレム、忘れた所に青河、では無いかと常日頃から思っているくらいである。激しい同意を使用人達から得ている事を考えれば、彼らも代々同じことを考えているのだろう。いい機会なので聞いてみる事にする。
「ずっと気になってたんですけど、どうしてそんなにハーレムを作りたいんです?」
「ふぇ?聞いてないの?」
きょとん、と首を傾げて見せる紫。サラリとした髪がその動きに伴って流れ、美しい絵画のよう。会う回数は少ないとは言え、それなりに顔を合わせれば慣れるもんだなぁ、と思いつつ碧は同じように首を傾げて見せた。タイプの違う二人の美人が同じように小首をかしげている姿は、可愛らしい。
「なんか、昔読んだ本でハーレムがあって、それに惹かれたってのは聞いたんですけど。でもなぜにハーレム?」
「うーん。羨ましかったから?」
遠い所を見つめるような瞳で、ほっそりした指を顎に当てる紫。思いがけない台詞に碧が目を瞬かせる。その後ろでは、そわそわとしていたメイドたちも動きを止めている。ちょっと待て、冗談じゃない、そこまでして女Ωにもてたかったか。そんな怨念じみた黒い影が、メイドを包み込んでいるが、そんな様子に気付くことなく二人は会話を続けている。
「羨ましい?そんなに女性とかΩとかに囲まれたかったんですか?」
「ん?うーん」
迷いも容赦もなく踏み込んでいく碧。メイドたちからは拍手喝采である。内心だが。天然ゆえのつっこみか、と現実に戻った紫が視線を向けると、意外な程にしっかりした瞳に射抜かれ苦笑した。ああ、普段はのんびりしているけど、そう言う事には敏感なんだった。あえて突っ込んできているな、と人によっては不快に思える問いを、紫は受け止める事にした。
普段ならば受け流してネタにするが、この子にそう言う対応したくはない。青葉が惚れるくらいには清廉で、一途な可愛い義理の兄弟になる予定の子だ。お気に入り登録している事を自覚しているくらいには、碧の事を可愛がっていた。
「正確に言えば、ちょっと違うかな」
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「学習能力」
以前の経験(ミスの場合は恐怖体験が殆ど)を基に学習できる、教訓を持って臨める能力。
学習能力が低いタイプは頭が悪いというよりは面倒臭がり屋の傾向が見られ、物事の原因などは理解しているが対策を怠るあるいは忘れてしまう為、中々進歩しないのである。覚えた時柄をその場で実行できることが学習能力の高さを証明するものである。
――ピクシブ百科事典より――
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「って書いてあるんですけど、ご存知ですか?」
「え、知ってるに決まってるじゃん!これでも最高学府を主席卒業してるんだ。なめてもらっちゃぁ困るね!」
「うーん。この反応。どうしてくれようか」
今日も今日とて学ばない二人の密会である。正確に言えば、密会にすらならないか。なにせ、青葉の部屋でまったりしていた碧の元を襲撃してきた紫の姿に悲鳴を上げたメイドの声に釣られて使用人達が大挙して訪れ、挙句、鬼の形相をした紫付きのメイドが恐ろしい勢いで現れたのだから。
「紫様!碧様もお疲れでしょうし、部屋にお戻りを!」
「えぇ?可愛い義弟君のお嫁さんだよ?仲良くしたいじゃん。ちょっとくらい良いでしょー」
「お嫁さんって……。まぁ俺は構わないですけど、青葉が怖いかなぁ」
ニコニコとベットを占領した紫が笑う。じりじりと間合いを詰めるメイドと無言の争いをしているその姿をのほほん、と眺めていた碧が紅茶を口に含む。
うーん、今日もいい香り。ここの使用人さんって本当に優秀。パフェもあると尚良し何だけどなぁ。そんな風に思いながらメイドを見やるも、青ざめた顔でオロオロしている彼女に言う事も出来ず諦める。どうせパフェ禁止令がこの屋敷では発布されているから出てこないしなぁとクッキーをかじりつつ頬を膨らませる。ついでに下手に紫さんと話すると青葉がキレるんだよな、と不思議そうに呟いている。
αの嫉妬?でも、その場合は青河さんが俺にキレるはずなのに、なぜか青河さんは紫さんにキレ、青葉が俺にキレるんだよな、と首を傾げるその様は可愛らしい。勉強はできても、そちらの機微には疎い。使用人達が可愛がるわけである。なにせ紫はそちらの機微に関しては理解しているかどうかをさておいて、暴走するのだから。
いい加減使用人達も紫に対する態度が砕けたものになるのは仕方ないだろう。
「という事ですので、紫様。お部屋にお戻りを」
「僕疲れて動けないぃ」
「ここまで来ておいて今更?!」
「ここまで来たら力尽きたぁ」
てへ、と可愛くあざといポーズを取って見せる紫。うわ、流石Ω可愛い、と見惚れているのは碧だけ。メイドに至ってはにっこり満面の笑顔。完璧すぎて、もはや面である。それが通じる相手であれば話は早いが、そうともいかず。
「昨日も青河に無茶されたんだもん。体痛いからちょっと休んでく。あ、すぐに回復するし部屋戻るから手助けいらないよ?」
「青河様、お労しや……」
自業自得なのにも関わらず青河の所為になっている。というか、している。あっけらかんと言い放つ紫をジト目でみたメイドがため息を漏らして引き下がる。こうなったら梃子でも動かないので、諦めた方が早いのだ。一度食い下がってへそを曲げられた結果、さらに面倒な事になったのは経験済みである。
「相変わらず強かというか、図太いですね」
「そりゃ勿論!そうでなければハーレムで勝ち残れないでしょ!」
ふふん、と得意げに胸を張っているが、その体はぐったりとベットに寝そべったまま。なんの何の言いつつ、体が辛いのは確からしい。まぁかく言う俺もそうだけど、とそっと腰を撫でる碧。
「絶倫じゃないここの兄弟?」
「うーん。青葉以外は知らないからアレですけど、まぁ、いつまでやるのと悲鳴を上げた回数は数えられませんね。むしろ、悲鳴をあげなかった日を数えた方が早い気が」
「そうそう。どうせならハーレム作ってその精力を均等配分してくれても良くない?一石二鳥!流石僕。天才だよね」
「はぁ」
どこまでいってもハーレムから思考が離れないらしい。紫の頭の中は、1にハーレム、2にハーレム、3・4飛ばして5にハーレム、忘れた所に青河、では無いかと常日頃から思っているくらいである。激しい同意を使用人達から得ている事を考えれば、彼らも代々同じことを考えているのだろう。いい機会なので聞いてみる事にする。
「ずっと気になってたんですけど、どうしてそんなにハーレムを作りたいんです?」
「ふぇ?聞いてないの?」
きょとん、と首を傾げて見せる紫。サラリとした髪がその動きに伴って流れ、美しい絵画のよう。会う回数は少ないとは言え、それなりに顔を合わせれば慣れるもんだなぁ、と思いつつ碧は同じように首を傾げて見せた。タイプの違う二人の美人が同じように小首をかしげている姿は、可愛らしい。
「なんか、昔読んだ本でハーレムがあって、それに惹かれたってのは聞いたんですけど。でもなぜにハーレム?」
「うーん。羨ましかったから?」
遠い所を見つめるような瞳で、ほっそりした指を顎に当てる紫。思いがけない台詞に碧が目を瞬かせる。その後ろでは、そわそわとしていたメイドたちも動きを止めている。ちょっと待て、冗談じゃない、そこまでして女Ωにもてたかったか。そんな怨念じみた黒い影が、メイドを包み込んでいるが、そんな様子に気付くことなく二人は会話を続けている。
「羨ましい?そんなに女性とかΩとかに囲まれたかったんですか?」
「ん?うーん」
迷いも容赦もなく踏み込んでいく碧。メイドたちからは拍手喝采である。内心だが。天然ゆえのつっこみか、と現実に戻った紫が視線を向けると、意外な程にしっかりした瞳に射抜かれ苦笑した。ああ、普段はのんびりしているけど、そう言う事には敏感なんだった。あえて突っ込んできているな、と人によっては不快に思える問いを、紫は受け止める事にした。
普段ならば受け流してネタにするが、この子にそう言う対応したくはない。青葉が惚れるくらいには清廉で、一途な可愛い義理の兄弟になる予定の子だ。お気に入り登録している事を自覚しているくらいには、碧の事を可愛がっていた。
「正確に言えば、ちょっと違うかな」
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