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Episode〈8〉白刃 ⑶
しおりを挟む───「こりゃあ、いい。切れ味の良い“カタナ”みてえだ」
白く、色を失い始めた我が子の髪を見て、片桐組組長は豪快に笑った。
彼は、我が子を学校に入れることも、他の子どもと交流させることもしなかった。ただ毎日、仕事について回らせた。必要とあらば、我が子を囮にすることも厭わなかった。
加えて、彼は子を厳しく躾けた。傷跡が残るほどの体罰は日常茶飯事で、わずかに与えられる食事はまともに食べられたものではなかった。それでも必死に、腹に詰め込んだ。
母親について、彼に訊いたことはない。訊く必要性を感じたこともなかった。どうせ、数多いる遊び相手のうちの一人だろう。
我が子を命の危機にさらしても、過酷な生活で白く変色した髪を見ても、気分良く笑っているような男なのだから。
彼が我が子を“カタナ”と呼び始めてから、片桐組は軌道に乗り始めた。まだ規模は小さいながらも、違法薬物の取引を通じて海外に太いパイプのできた組長は、初めて“後継者”としての子の利用価値に気づいたらしい。
「カタナ、おめえがこの片桐組を継ぐんだ。片桐組のために在れ。それこそが、お前の生きる意味だ」
我が子を幹部に登用したとき、組長はそう言った。
彼はもう、我が子を本当の名前で呼ぶことはなかった。“カタナ”というあだ名を付けた頃に事業が上手くいきはじめたため、験を担ぐ意もあったのだろう。他の組員にも、我が子本人にも、“カタナ”という通り名でやりとりをするよう義務づけた。
そうして、子どもは“カタナ”に成った。片桐組の繁栄だけを生きる意味として、ただそれだけのために存在する者と成った。
昔は無理矢理張らされていた命を、自ら軽んじるようになった。何のためらいも無くなった。すでに身体についている無数の傷が、ただ増えていくだけ。それだけだった。
───それだけの、はずだった。
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