刃に縋りて弾丸を喰む

Episode〈5〉再逢 ⑶

　朝起きて、ご飯を食べて、映画を見て、ご飯を食べて、映画を見て、ご飯を食べて、お風呂に入って、映画を見て、ともに眠る。
　そんな生活を、私たちは二日続けた。
　二日間で様々な種類の映画を見た。途中で特定の映画を選ぶことに疲れて、適当にザッピングした。恋愛、アクション、コメディ、ミステリー、ホラー。どの映画を流している間も、カタナは一言も喋らなかった。じっと見入っているようだった。
　そして、カタナの休暇が終わる最後の夜がやってきた。
　「……あのさ」
　最後の夜の、最後の映画として選んだのは、一組の夫婦が子どもを授かって幸せな結末を迎える邦画。そのエンドロールで、彼は初めて口を開いた。
　「”朗報”の話、覚えてる？」
　驚いてとっさに隣へ向くも、彼の視線は画面へ向けられたまま。言葉だけが、私に向けてかけられる。
　「あ、ああ。たしか、昨日の朝の……」
　瞬きもせず前を見たままの彼から、す、と短く息を吸う音がした。

　「“フウマくん”が、目を覚ましたって」

　エンドロールが終わる。テレビ画面が真っ暗になったまま、静止する。
　「明日、お見舞いに行ってきなよ」
　カタナがソファーから立ち上がった。そのまま、寝室に向かったようだった。
　扉が閉まる音がする。
真っ暗な画面と、動けないままでいる私。
二つの静謐だけが、夜更けのリビングに残されていた。