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最終章 理由と真相
第17話
しおりを挟む「質問をよろしいでしょうか?」真木は言った。
教授は、無言でうなずく。
「今日、六地蔵さんを訪問した際、作品のアクセス数を見せてもらいました。すさまじい数でした。いつから彼の小説は、あれほど読まれるようになったのでしょうか」
その真木の問いに、教授は無言でマウスを操作し、壁面のモニターの1つに彼のある作品のアクセス数を表示した。それが六地蔵の部屋で見たものと同じ作品なのかはわからなかったが、PVは同じく驚異的なものだった。
教授はしばらくモニターを見つめた後、口を開いた。
「彼のカコヨモIDには、運営から特殊な細工がほどこされている。AIが自動的に彼の全作品に不自然でないよう、PVを加算していく。同時に、彼が喜ぶようなコメントが書かれ、適当な割合で★もレビューもつけられる」
そういう事か……と真木は合点がいった。そして一つの疑問を口にした。
「実際の数字はどうなのでしょう」
教授がマウスでPVをダブルクリックすると、PV欄の全ての数字が変わった。
「これは……」といったきり、真木は絶句した。
話数ごとに10000前後ならんでいたはずの数字が、すべて一桁のものに変わっている。
これが実際のアクセス数……、ならば彼が大量にあると言っていたコメントも全てAIが書いたという事か……。
また教授がマウスを操作する。六地蔵の作品群が表示された。10万字、20万字、50万字、100万字、長編がひしめいている。それらの作品の実際のアクセス数が表示された。どの作品も、実質ほとんど読まれていない。
真木は、教授に問うた。
「六地蔵さんの作品は、なぜここまで読まれないのでしょうか……」
「その答えは、君の報告書に書かれている」教授は言った。
私の……真木は、自分が書いた報告書に頭を巡らせる。
「君はこう書いている」
そう言って教授は、真木の報告書を読み上げた。
「六地蔵氏の言う『自分の好きなように書く、自分の好きを詰め込む』という書き方であれば、その比重が高まれば高まるほど、よほど技術と経験が伴っていない限り、独りよがりの作品になる懸念が高まると思われるが、アクセス数から見るにそれは回避できているようである――と」
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