14 / 22
第3章 狂いに至る過去
第13話
しおりを挟む書いても書いても、何をしても、更新ごとに絶望的な閲覧数が並んだ。
自分はこんなに楽しく書いてるのに……。自分の好きをふんだんに詰め込んでいるのに……。
そう思いながら彼は幾度かはPCの前で、白目を向いて失神した事もあったかもしれない。
赤いインジケーターが絶望的に足りない――。
灯れ! 灯れ! 灯れ! ベルマークを見つめ、狂ったようにページを更新する。
その状態が、六地蔵をさらに愚かな行為に走らせた。
「自分の作品の解説」だ――。
「君は小説が好きか?」不意に教授が、真木に問いかけた。
教授の話に聴き入っていた真木は、慌てて「はいッ、好きです」と答えた。
おそらくは、自作の解説……? という真木の表情を、教授は読み取ったのだろう。
教授は小さく頷き、話を続けた――。
私も今は医学書や論文ばかりだが、若い頃には小説もよく読んだ、小説が好きなら君もよくわかるだろう。作者自身が読者に解説するというのが如何に愚かな事か。
六地蔵はそれを始めた。自分の作品の世界観や登場人物の隠れた魅力を自分で語りだした。
「拙作の✕✕君は実はこういう魅力がありまして……拙作の世界観としましては……」というように。
だが、それは読者が読み取るものだ。自由に想像をふくらませてね。
作者が読者の解釈や想像に介入する。普通ならそんな愚かな事はしない。
だが、六地蔵は、それが愚かな事だと認識できない領域に入ってしまっていた。
すべては自分の書いた小説を、もっと誰かに読んでもらいたいという欲求から来ている。
だが、現実がついてこない。書いても書いても、どれだけ労力を費やしても、宣伝しても解説しても、何をしても自分の作品に人が寄り付かない。
六地蔵は心から渇望した。赤いインジケーターが欲しい、と。
その頃から、精神の均衡が如実に壊れていく。
それはリアルな生活空間にまで波及した――。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

炎と消える_僕を消したアイツ 戻レナイ
石川 直生
ミステリー
河本 瞬は、ある男に消されそうになる。炎に包まれて次に意識が戻ったときには、自分が誰なのかもわからなくなっていた。
「助けて、イツキ__」
イツキとは誰なのか。自分はどうしてここにいるのか。瞬は、未来を取り戻すことができるのか。
__少しBL。タイムリープ、時間跳躍、22歳男主人公→小学5年生。瞬は、現実1と現実2(タイムリープしたもう一つの現実) をなんとか生きていこうとする。
無断転載、複製、アップロードそれに準する一切を禁止します ©️石川 直生 2023.



悪役令嬢カテリーナでございます。
くみたろう
恋愛
………………まあ、私、悪役令嬢だわ……
気付いたのはワインを頭からかけられた時だった。
どうやら私、ゲームの中の悪役令嬢に生まれ変わったらしい。
40歳未婚の喪女だった私は今や立派な公爵令嬢。ただ、痩せすぎて骨ばっている体がチャームポイントなだけ。
ぶつかるだけでアタックをかます強靭な骨の持ち主、それが私。
40歳喪女を舐めてくれては困りますよ? 私は没落などしませんからね。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる