5 / 22
第一章 人気ウェブ作家
第4話
しおりを挟む100話を超える長編小説の各話ごとに、10000近くのPVが整然と並んでいる。
そのPVを見つめる六地蔵の顔に、また、ひきつれのようなものが走り、同時に毛虫マユが動いた。
すかさず真木は言った。「ものすごい閲覧数ですね……」
「自分の好きを追求する。自己満足で書く。この私のスタイルを貫いてきたからこそ、今の地位があると思うのですね。読者や人気は後から付いてくるという事です」
六地蔵は、にわかに饒舌になった。
「今、こんなに読まれている私の作品ですが、昔、公募に送っていた時は一次選考にも通らなかったのですね。客観的に判断して、一次で落とされるような作品ではないのにです。KADOYAMAさんの公募に送ったこともあるのですね」
「申し訳ございません。当時のうちの下読みの質が悪かったという事だと思います」
六地蔵の毛虫マユの動きが、ワサワサと一段と激しくなった。
「今はよくわかるのですね。公募なんてものは出版社の都合次第で、どうにでもできてしまうのですね……」
「業界として、そういう側面がある事は否めないと思います。どうかそれに懲りず、いつか出版する際には弊社をご贔屓にしていただければ」
「期待されているのはわかっているのですね。ただ、やはりウェブ小説優先になるのですね、それはわかってもらいたいのですね」
「もちろんです。六地蔵さんがウェブ小説を大切になさっている気持ちは、とてもよくわかりますので」
今日のところは、そろそろ頃合いか……。真木はそう判断した。
「それでは今日は、これで失礼させていただきます。あまりお邪魔をしてはいけませんし、ごあいさつだけでしたので。またご連絡させていただきます」
「どうもなのですね……」
六地蔵は、真木に顔も向けずにそう言い、キーボードを叩き始めた。
「失礼します」そう声をかけて玄関に向かった。
丁寧にドアを閉め、大きく息を吸った――。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

炎と消える_僕を消したアイツ 戻レナイ
石川 直生
ミステリー
河本 瞬は、ある男に消されそうになる。炎に包まれて次に意識が戻ったときには、自分が誰なのかもわからなくなっていた。
「助けて、イツキ__」
イツキとは誰なのか。自分はどうしてここにいるのか。瞬は、未来を取り戻すことができるのか。
__少しBL。タイムリープ、時間跳躍、22歳男主人公→小学5年生。瞬は、現実1と現実2(タイムリープしたもう一つの現実) をなんとか生きていこうとする。
無断転載、複製、アップロードそれに準する一切を禁止します ©️石川 直生 2023.


悪役令嬢カテリーナでございます。
くみたろう
恋愛
………………まあ、私、悪役令嬢だわ……
気付いたのはワインを頭からかけられた時だった。
どうやら私、ゲームの中の悪役令嬢に生まれ変わったらしい。
40歳未婚の喪女だった私は今や立派な公爵令嬢。ただ、痩せすぎて骨ばっている体がチャームポイントなだけ。
ぶつかるだけでアタックをかます強靭な骨の持ち主、それが私。
40歳喪女を舐めてくれては困りますよ? 私は没落などしませんからね。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる