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第一章 人気ウェブ作家
第4話
しおりを挟む100話を超える長編小説の各話ごとに、10000近くのPVが整然と並んでいる。
そのPVを見つめる六地蔵の顔に、また、ひきつれのようなものが走り、同時に毛虫マユが動いた。
すかさず真木は言った。「ものすごい閲覧数ですね……」
「自分の好きを追求する。自己満足で書く。この私のスタイルを貫いてきたからこそ、今の地位があると思うのですね。読者や人気は後から付いてくるという事です」
六地蔵は、にわかに饒舌になった。
「今、こんなに読まれている私の作品ですが、昔、公募に送っていた時は一次選考にも通らなかったのですね。客観的に判断して、一次で落とされるような作品ではないのにです。KADOYAMAさんの公募に送ったこともあるのですね」
「申し訳ございません。当時のうちの下読みの質が悪かったという事だと思います」
六地蔵の毛虫マユの動きが、ワサワサと一段と激しくなった。
「今はよくわかるのですね。公募なんてものは出版社の都合次第で、どうにでもできてしまうのですね……」
「業界として、そういう側面がある事は否めないと思います。どうかそれに懲りず、いつか出版する際には弊社をご贔屓にしていただければ」
「期待されているのはわかっているのですね。ただ、やはりウェブ小説優先になるのですね、それはわかってもらいたいのですね」
「もちろんです。六地蔵さんがウェブ小説を大切になさっている気持ちは、とてもよくわかりますので」
今日のところは、そろそろ頃合いか……。真木はそう判断した。
「それでは今日は、これで失礼させていただきます。あまりお邪魔をしてはいけませんし、ごあいさつだけでしたので。またご連絡させていただきます」
「どうもなのですね……」
六地蔵は、真木に顔も向けずにそう言い、キーボードを叩き始めた。
「失礼します」そう声をかけて玄関に向かった。
丁寧にドアを閉め、大きく息を吸った――。
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