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本編
絹の少女と小さなお針子さん
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(これは…なんの冗談だろうか…)
奉公に出ている屋敷の女主人に突然呼ばれ、何か粗相があったのではないかと考えていた自分は今その女主人の娘と刺繍をしている。
「まぁ!なんという繊細なステッチ‼︎ペルドナさんは筋がよろしいですわね‼︎」
「しょうでしょう‼︎ぺりゅどなはゆうしゅうなおひゃりこしゃんなにょでしゅよ‼︎」
ベガお嬢様と刺繍の家庭教師であるオリビアンヌ様が私の刺繍に驚いていた。
「仕事でも刺繍はしますし…オリビアンヌ様の教え方がとても丁寧ですので…。お嬢様も洗礼式までにはきっと素晴らしいドレスやハンカチーフをご用意できますよ。」
そう…普通の家庭以上の御令嬢たちは洗礼式に行けるのだ…。
私のような貧しく弟妹を養う為に幼い頃から働いく私と違って…
(あぁ…なんか涙出てきちゃった…)
「ぺりゅどなもしぇんれいしきにでりゃれましゅきゃらね。」
「え…?」
私の気持ちを知っているかのようにお嬢様は私の顔を覗き込んだ。
「ベガお嬢様がペルドナさんを一緒に講義に誘った時に最初私が拒否をしたのです。」
少し眉を顰めたオリビアンヌ様の表情で理由はわかった。
私が平民の…さらに貧困の部類の人間だからだ。
ここの旦那様と奥様は身分による差別を行わないがこれは貴族界隈では珍しいらしい。
「…申し訳ございません。」
私が深々と頭を下げるとオリビアンヌ様は続けて話し始めた。
「…ベガお嬢様が提案してきたのですわ。最初の講義でペルドナさんの刺繍が素晴らしかったら、あなたの洗礼式の準備を手伝ってほしいと…。」
しかし、私には洗礼式のドレスを用意するなどの費用など全くない…。全く無駄な事なのだ。
「子爵夫人にお話を伺ったところ、あなた方兄弟は孤児だとか…。」
一瞬肩がビクッと跳ねてしまった。
親なしの弟妹を養う貧民の孤児という事でオリビアンヌ様はきっと不快に思われるだろう…。
(もしかしたら子爵夫人に有る事無い事言われて解雇されてしまうかもしれない…‼︎)
怖くて手が震える。
「…私と夫には子どもがおりません。お医者様の診断によると2人とも子どもができない体質らしいですわ…。」
(…え?どういう事なんだろうか…。)
「とおまわしのはちゅげんにしても、わきゃりにきゅいでしゅわよ。」
お嬢様は苦笑いをしながらオリビアンヌ様に子どもらしからぬ発言をした。
「えぇっと…私たちには子どもが来ないのですので夫とは養子縁組を相談しておりますの…。」
ますますそんな事を言うのか全くわからず思わず首を傾げてしまった。
「ですので…‼︎夫と今晩相談してあなた方ご姉弟を引き取ろうと…思って…おりますの…。」
養子として…と小さく呟く声に思わず私は目をぱちくりさせてしまった。
高貴な女性も照れることがあるのかと驚いてしまった。
「…私だけならともかくどうして弟たちまでですか?」
思わず溢れた疑問にオリビアンヌ様は驚いた表情を見せた。
「だって、弟のルベウスさんと妹のサファイロスさんは魔力が高くまだ幼いのでしょう?魔力が高く体の均衡が崩れやすい状態の幼子を見捨てるなんて、貴族の風上にも置けませんわ‼︎」
当たり前のように私たち姉弟の心配をするオリビアンヌ様に少し胸が暖かくなった。
「…それに……離れ離れになってしまうのは誰だって寂しいものですわ…。」
少し悲しそうに目を伏せたオリビアンヌ様を見て去年亡くなった母を思い出した。
「しぇんしぇは、ぺりゅどなたちをまもりたいんでしゅよね?」
お嬢様が笑いながら楽しそうにオリビアンヌ様に顔を向けた。
後から聞いた話ではあるが魔力量の多い孤児を無理やり家族から引き剥がして貴族の養子にするという卑劣な大人もいるのだとか…。
(どちらにしろ、私の命運はお嬢様方にかかっているということが…)
オリビアンヌ様のことはとりあえず家族を引き剥がす外道じゃないことだけは信じてみようと思った。
奉公に出ている屋敷の女主人に突然呼ばれ、何か粗相があったのではないかと考えていた自分は今その女主人の娘と刺繍をしている。
「まぁ!なんという繊細なステッチ‼︎ペルドナさんは筋がよろしいですわね‼︎」
「しょうでしょう‼︎ぺりゅどなはゆうしゅうなおひゃりこしゃんなにょでしゅよ‼︎」
ベガお嬢様と刺繍の家庭教師であるオリビアンヌ様が私の刺繍に驚いていた。
「仕事でも刺繍はしますし…オリビアンヌ様の教え方がとても丁寧ですので…。お嬢様も洗礼式までにはきっと素晴らしいドレスやハンカチーフをご用意できますよ。」
そう…普通の家庭以上の御令嬢たちは洗礼式に行けるのだ…。
私のような貧しく弟妹を養う為に幼い頃から働いく私と違って…
(あぁ…なんか涙出てきちゃった…)
「ぺりゅどなもしぇんれいしきにでりゃれましゅきゃらね。」
「え…?」
私の気持ちを知っているかのようにお嬢様は私の顔を覗き込んだ。
「ベガお嬢様がペルドナさんを一緒に講義に誘った時に最初私が拒否をしたのです。」
少し眉を顰めたオリビアンヌ様の表情で理由はわかった。
私が平民の…さらに貧困の部類の人間だからだ。
ここの旦那様と奥様は身分による差別を行わないがこれは貴族界隈では珍しいらしい。
「…申し訳ございません。」
私が深々と頭を下げるとオリビアンヌ様は続けて話し始めた。
「…ベガお嬢様が提案してきたのですわ。最初の講義でペルドナさんの刺繍が素晴らしかったら、あなたの洗礼式の準備を手伝ってほしいと…。」
しかし、私には洗礼式のドレスを用意するなどの費用など全くない…。全く無駄な事なのだ。
「子爵夫人にお話を伺ったところ、あなた方兄弟は孤児だとか…。」
一瞬肩がビクッと跳ねてしまった。
親なしの弟妹を養う貧民の孤児という事でオリビアンヌ様はきっと不快に思われるだろう…。
(もしかしたら子爵夫人に有る事無い事言われて解雇されてしまうかもしれない…‼︎)
怖くて手が震える。
「…私と夫には子どもがおりません。お医者様の診断によると2人とも子どもができない体質らしいですわ…。」
(…え?どういう事なんだろうか…。)
「とおまわしのはちゅげんにしても、わきゃりにきゅいでしゅわよ。」
お嬢様は苦笑いをしながらオリビアンヌ様に子どもらしからぬ発言をした。
「えぇっと…私たちには子どもが来ないのですので夫とは養子縁組を相談しておりますの…。」
ますますそんな事を言うのか全くわからず思わず首を傾げてしまった。
「ですので…‼︎夫と今晩相談してあなた方ご姉弟を引き取ろうと…思って…おりますの…。」
養子として…と小さく呟く声に思わず私は目をぱちくりさせてしまった。
高貴な女性も照れることがあるのかと驚いてしまった。
「…私だけならともかくどうして弟たちまでですか?」
思わず溢れた疑問にオリビアンヌ様は驚いた表情を見せた。
「だって、弟のルベウスさんと妹のサファイロスさんは魔力が高くまだ幼いのでしょう?魔力が高く体の均衡が崩れやすい状態の幼子を見捨てるなんて、貴族の風上にも置けませんわ‼︎」
当たり前のように私たち姉弟の心配をするオリビアンヌ様に少し胸が暖かくなった。
「…それに……離れ離れになってしまうのは誰だって寂しいものですわ…。」
少し悲しそうに目を伏せたオリビアンヌ様を見て去年亡くなった母を思い出した。
「しぇんしぇは、ぺりゅどなたちをまもりたいんでしゅよね?」
お嬢様が笑いながら楽しそうにオリビアンヌ様に顔を向けた。
後から聞いた話ではあるが魔力量の多い孤児を無理やり家族から引き剥がして貴族の養子にするという卑劣な大人もいるのだとか…。
(どちらにしろ、私の命運はお嬢様方にかかっているということが…)
オリビアンヌ様のことはとりあえず家族を引き剥がす外道じゃないことだけは信じてみようと思った。
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