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メイドという名の国家公務員
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「お茶をお持ちしますね」
「いいか、絶対にやるな。給仕ロボットにやらせろ」
カップが空になっていたので声をかけると、私のお仕えするご主人様は嫌そうに整った眉を顰めてクールに言い放った。
「でもご主人様、私のお仕事無くなっちゃいます……」
「絶対にひっくり返すだろうが。お前にやらせるぐらいなら俺がやる」
私は浅井萌、18歳。職業はメイドという名の国家公務員である。
私には物心ついた頃から前世の記憶があった。
それによると、どうやらここは男性向けハーレム小説の世界らしい。
前世も女性だった私がなぜその小説の内容を知っているのかと言うと、同じクラスだった陰キャな男子グループが教室で感想を言い合っていたからだ。
よほどハマっていたらしく、毎日のように細かい部分まで掘り下げて大声で討論されれば嫌でも覚えてしまう。
この国は日本とほぼ同じ……というか三百年後の日本という設定の国だ。
多少近未来的な要素はあれど前世と似たような生活をしているが、所々前世と違う歴史があったので、未来ではなくパラレルワールドに転生したのだという事はすぐに分かった。
この世界には、百年前に世界中で広がった疫病により女性ばかり産まれるようになってしまったため、一夫多妻制がスタンダードになったという歴史がある。男女比はだいたい1:30くらいかな。
全く男性に出会えない訳ではないが、男性からすれば女性はよりどりみどりなので、よほどの美女でないと出会ったところで相手にはされない。
しかも希少な男性は産まれた時から下にも置かない扱いをされて育つため、ワガママ放題で女を便利な道具としか考えていない者が大半を占める。
この世界の主人公はそんな男尊女卑の世界で唯一女性に優しくするイケメンだ。
……と言うのも、この世界は男性のみ美醜逆転しているため、前世では不細工だった主人公がイケメンと言われてチヤホヤされるのが嬉しくてデレデレしていたら、周囲が勘違いして性格の良いイケメンだと思い込んだだけである。いわゆる勘違いされる系の主人公ってやつ。
本当の善人ではない証拠に、小説内で不細工な女性に対する対応については全く触れられていない。主人公の世界は美女だけで構成されているのだ。
しかも主人公に都合の良いことに、女性は性欲が強いが男性に出会えないので処女ビッチな美少女が多い。主人公が学校で先生や同級生と乱交する程度には割とオープンエロな世界だ。
私はその小説に登場するサブヒロインだ。
小説内でも今この現実となった世界でも、私はメイドとして働いている。
……ちなみにドジっ子メイド枠なので仕事は苦手である。
モテない男の夢を詰め込んだヒロイン達は基本的に処女なのだが、私だけはハーレム加入時に既に非処女となっている。なぜなら私は過酷な状況を救われて主人公を崇拝する系のヒロイン担当なので、物語の開始前は不細工な悪役から性奴隷のような扱いをされているからだ。
──この不細工な悪役というのが、今私がメイドとしてお仕えしているご主人様だ。
性奴隷にされると分かっていてなぜここに就職したのか? 話は私がメイド試験を受けるためにメイド養成学校に通っていた所まで遡る。
まずこの世界では男性と日常的に触れ合えるメイドは大人気の職業で、全ての男性国民に国から派遣される公務員だ。メイドになるには養成学校で優秀な成績を修めて国家試験に挑む事が必須条件となる。
また、メイドになるには家事スキルの他に優れた容姿が必要とされる。不細工はそもそも入学すらできない。
私は頭脳明晰で成績も優秀かつ、サブヒロインなだけあってロリ巨乳の超絶美少女なのだが、いかんせんドジっ子メイド枠である事が災いして運動神経だけは無かった。
具体的に言うと何も無い所でしょっちゅう転ぶせいでお茶をひっくり返すのは日常茶飯事、終いには転んだ拍子に女性試験官の胸ぐらを掴んでブラをずり下げてしまい、彼女の胸が上げ底である事を人前で暴いてしまった。どんなミラクルだよ。
そんな私が何故メイド試験に受かったのか。それは偏に嫌がらせである。
不細工で有名なご主人様には進んで仕えようというメイドがいない。しかし、国には男性国民にメイドを派遣する義務がある。
そのため美しく成績も優秀だが、試験官の不興を思いっきり買ってしまった私に白羽の矢が立ったのだ。
「いいか、絶対にやるな。給仕ロボットにやらせろ」
カップが空になっていたので声をかけると、私のお仕えするご主人様は嫌そうに整った眉を顰めてクールに言い放った。
「でもご主人様、私のお仕事無くなっちゃいます……」
「絶対にひっくり返すだろうが。お前にやらせるぐらいなら俺がやる」
私は浅井萌、18歳。職業はメイドという名の国家公務員である。
私には物心ついた頃から前世の記憶があった。
それによると、どうやらここは男性向けハーレム小説の世界らしい。
前世も女性だった私がなぜその小説の内容を知っているのかと言うと、同じクラスだった陰キャな男子グループが教室で感想を言い合っていたからだ。
よほどハマっていたらしく、毎日のように細かい部分まで掘り下げて大声で討論されれば嫌でも覚えてしまう。
この国は日本とほぼ同じ……というか三百年後の日本という設定の国だ。
多少近未来的な要素はあれど前世と似たような生活をしているが、所々前世と違う歴史があったので、未来ではなくパラレルワールドに転生したのだという事はすぐに分かった。
この世界には、百年前に世界中で広がった疫病により女性ばかり産まれるようになってしまったため、一夫多妻制がスタンダードになったという歴史がある。男女比はだいたい1:30くらいかな。
全く男性に出会えない訳ではないが、男性からすれば女性はよりどりみどりなので、よほどの美女でないと出会ったところで相手にはされない。
しかも希少な男性は産まれた時から下にも置かない扱いをされて育つため、ワガママ放題で女を便利な道具としか考えていない者が大半を占める。
この世界の主人公はそんな男尊女卑の世界で唯一女性に優しくするイケメンだ。
……と言うのも、この世界は男性のみ美醜逆転しているため、前世では不細工だった主人公がイケメンと言われてチヤホヤされるのが嬉しくてデレデレしていたら、周囲が勘違いして性格の良いイケメンだと思い込んだだけである。いわゆる勘違いされる系の主人公ってやつ。
本当の善人ではない証拠に、小説内で不細工な女性に対する対応については全く触れられていない。主人公の世界は美女だけで構成されているのだ。
しかも主人公に都合の良いことに、女性は性欲が強いが男性に出会えないので処女ビッチな美少女が多い。主人公が学校で先生や同級生と乱交する程度には割とオープンエロな世界だ。
私はその小説に登場するサブヒロインだ。
小説内でも今この現実となった世界でも、私はメイドとして働いている。
……ちなみにドジっ子メイド枠なので仕事は苦手である。
モテない男の夢を詰め込んだヒロイン達は基本的に処女なのだが、私だけはハーレム加入時に既に非処女となっている。なぜなら私は過酷な状況を救われて主人公を崇拝する系のヒロイン担当なので、物語の開始前は不細工な悪役から性奴隷のような扱いをされているからだ。
──この不細工な悪役というのが、今私がメイドとしてお仕えしているご主人様だ。
性奴隷にされると分かっていてなぜここに就職したのか? 話は私がメイド試験を受けるためにメイド養成学校に通っていた所まで遡る。
まずこの世界では男性と日常的に触れ合えるメイドは大人気の職業で、全ての男性国民に国から派遣される公務員だ。メイドになるには養成学校で優秀な成績を修めて国家試験に挑む事が必須条件となる。
また、メイドになるには家事スキルの他に優れた容姿が必要とされる。不細工はそもそも入学すらできない。
私は頭脳明晰で成績も優秀かつ、サブヒロインなだけあってロリ巨乳の超絶美少女なのだが、いかんせんドジっ子メイド枠である事が災いして運動神経だけは無かった。
具体的に言うと何も無い所でしょっちゅう転ぶせいでお茶をひっくり返すのは日常茶飯事、終いには転んだ拍子に女性試験官の胸ぐらを掴んでブラをずり下げてしまい、彼女の胸が上げ底である事を人前で暴いてしまった。どんなミラクルだよ。
そんな私が何故メイド試験に受かったのか。それは偏に嫌がらせである。
不細工で有名なご主人様には進んで仕えようというメイドがいない。しかし、国には男性国民にメイドを派遣する義務がある。
そのため美しく成績も優秀だが、試験官の不興を思いっきり買ってしまった私に白羽の矢が立ったのだ。
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