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左江内編

いつかは、その時が

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深夜十二時

よろよろと帰宅し、家のドアを開ける


左「あ"ぁ~…ただいま……」


わかってはいたけれど返事は帰って来ない

あまりの静けさに、もしかしたら最初からいなかったのかな何て思ってしまう


左「…はぁ、…飯いいや、もう寝よ……」

終電ギリギリになるのは時折ある事だが、きっと二週間はこの生活が続くのだろう





渉「資料作って一度向こうと会議が必要になった。それに上手く進んだら向こうの傘下とも一気に契約繋ぐとの事だから暫く休めねーぞ」

オフィス内に緊張が走った

早速動き回る同僚達、俺達も遅れを取らないよう資料制作に務める

返「佐江先輩が繁忙期まで連れて帰ってきたから、帰るの遅くなりそうスね」

渉「これで会議も成功して契約締結したら俺たちのチームが一番好成績になるんだ。頑張ろーぜ?」

返「はあ」

渉「…給料アップも夢じゃねーぞ」

返「ならやります」

左「現金なヤツだな、本当に」





商談先との契約締結までは休めない

…つまり、琥珀君に会えないという事だ


また出そうになる溜息を抑え、食卓の椅子にバッグを置こうとし

机に貼られたメモに気づいた


左「……琥珀君?」


『冷蔵庫に、キムチチャーハンを入れてあります。良ければ温めて食べてください!
お仕事お疲れ様です』


へちゃむくれの猫ともパンダとも似つかない何かの生命体の絵が端っこに添えてある


左「……やっぱり天使なんかな、あの子」


冷蔵庫を開けるとラップで蓋をしたお皿があった


琥珀君だって疲れているだろうに、俺のご飯をわざわざ用意してくれたなんて…

会えない辛さで荒んでいた心にじんわりと暖かさが広がる


左「…ありがとう、琥珀君。いただきます」


ちゃんと食べて、風呂入って寝よう


早く琥珀君と…また一緒に食べたいな

彼がお金を貯めてここから出ていくまでに、沢山思い出を残しておきたい




…いつかはその時が来るのだろうか

温めたキムチチャーハンは、ほんのりしょっぱく感じた
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