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左江内編

居ないんだろうな

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あれから三日が経過した

毎回帰り道を何となく見回して、琥珀君が居ないかなんて探してみたりもしたが

それらしき人は居なかった

やっぱりたまたまだったんだな……残念


…何言ってんだ、近くに住んでいる可能性があるだけでも嬉しいじゃないか!

推しの空気が近くで吸えてるかもだろう!!!!高望みするなよ俺!!


…でも、気になる事がある

何で深夜に、丸腰であんな所に居たんだろう?


待ち合わせにしては分かりにくいし、それならあの大通りの方がいいに決まってる

迷子…なら有り得るかもだけれど、それならスマホで地図見ればいいだけだし

スマホも何も持ってないまま外に出て迷子って、琥珀君はそんなド天然なキャラでもないし

何だか違和感があるんだよな


……まあ、いちいち考えても仕方ないか


渉「おーい巨輝おおき~手ェ止まってんぞ~~」

左「…んぁ、ああ悪ぃ」

渉「納期近いの溜まってんだから急げよ、んで俺のもやべぇから手伝ってくれ」

左「自分で何とかしろっつーの」

渉「ひっどい!!」


渉はここ数日新作のスマホゲームに夢中で、ちまちまとやりやがるから仕事が溜まっていた

完全に自業自得だろ

…俺も溜まってはいるが、精神的不調だから調子出ないって事で


横でうだうだ言っている渉を無視してキーボードをカタカタ叩く


ふと、視界の横からにゅっと手が伸びてきた

「佐江先輩、資料寄越して下さい。手が空いたんで」

渉「返田ぁ~~~!!!大好き!今度メシ奢る!!」

返「今日明日の昼と晩飯、どっちもスよ」

左「またやってるよ…」


渉の反対側の隣に座っている、去年から入社した後輩の返田 伊代かえりた いよ君だ

こうやって定期的に貸しを作ってはメシを奢らせる、仕事は出来るがめつい後輩だ


返「金が浮いて助かるんスよ、左江内先輩も良ければ仕事寄越して下さいッス」

左「いや、まぁ俺はいいわ…」


別に仕事が多い方がいい訳じゃないけど

仕事していた方が、変な事考えなくて済むしな…



夜八時頃

渉と返田君が仕事のケリを付けたようで、先に上がる

渉「よーし何とか片付いた!!返田マジサンキュな!」

返「んじゃ、上がります。先輩奢ってください」

渉「はいはい分かった分かった、好きなの食いに行こうぜ」

返「ッス。左江内先輩も、お疲れ様ッス。」

左「ああ、お疲れ様~」


二人が帰って行ったのを見て、俺も帰ろうと思うが

左「……先に、明後日の資料作っとくか」

何だか帰るのが億劫で、またパソコンと向き合った





気づけば深夜手前まで作業していた

いつも行く惣菜屋さんが閉まってしまう時間が迫っているのに気づき慌てて帰路に着いた



無事に晩飯を買え、凝り固まった肩を伸ばしつつ歩く

あの惣菜屋さん安いから助かるんだよなぁ~…
ここ数ヶ月毎日欠かさず青椒肉絲と唐揚げ買ってるから覚えられてたみたいで
おばちゃんに少し量増やして貰えたし…ラッキー!

そんな事を思いつつも、目線は無意識にきょろきょろと動き回っていた


あの時は、丁度この位の時間に

もう少し先の人気の少ない通路に居たんだよな



…何だか、また会える様な錯覚がしてしまう

まあ、結局居ないんだろうな
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