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第3章

闇魔力の産まれた意味

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真っ暗な闇が続く夜道を馬に跨り二人の後を追い駆けた。

(一体どこに向かっているの……?)

走ること数十分、行き着いた先はマートン図書館だった。
図書館の出入り口に立つ門番達へどうやら話しかけている様子だ。

(図書館って事は二人で調べ物をしてるだけなのかな? でもおかしい……。わざわざ夜中の人目を盗んで行くのが必要な調べ物ってどんな物なんだろう。“アレ”って言ってた物と関係している?)

図書館へと入って行くのを確認し、ロゼッタはまず乗ってきた馬を少し離れた木に括り付けた。
優しく撫で少し待ってて欲しいと伝え図書館の方へと歩んだ。

(さすがに出入り口に直接行くのはマズイよね。どこかに入り口ないかな。)

門番にバレないようこっそりと裏側に周り窓から中へと侵入した。
図書館の中が暗いお陰でどうやらロゼッタの事は気付かれていないようだ。
二人の手に持つカンテラの仄かな灯りだけが室内を照らしている状態だ、ロゼッタのいる場所までには灯りが届かなかった。
ヘルトは室内の端まで歩み、壁際から生えている火の付いていない燭台を下へ向かって下げた。
すると歯車のような機械音が響き渡り床は左右に開き地下へ繋がる隠し階段が現れた。

「……ッ!」

(あっぶない……! テンション上がって声出しそうになっちゃった! この図書館には地下室があってそれを知ってるのがヘルトさんやライアンさんだけって事……?)

気付かれないように二人がいる壁際より離れた所の床にしゃがみ込み机と椅子隙間から見やる。
二人は地下室へと迷いなく進んで行った。

(このまま私が入っちゃうと鉢合わせになっちゃうからみんなが出て行った後に確認しよう。)

まずロゼッタは螺旋階段で2階まで上がり、下から上を覗かれても見つかりにくい壁際へともたれ掛かりその場にしゃがみ込んだ。
地下室へと入って行った人々が出て行くまで待つ事にしたロゼッタだったが、心の中は慌ただしい気持ちでいっぱいだった。

(ヘルトさんはもしかして私の魔力を欲しがっているのかな。あの地下室に入れば全部分かるかな? とりあえずもうしばらく待っておこう。)

待つ事2時間後、地下室からやっと出てきたのはライアンとヘルトや他の者達だ。
地下室への階段は閉じてしまいその場で急に話し始めその場にとどまっているようだ。
ロゼッタは興味本位で話し声に耳を傾けた、するとどうやらこの場で今日は解散するようであった。
行動の方が早かったのか、皆図書館からそそくさと出て行ってしまい室内にいるのはロゼッタだけになってしまった。

(もうみんな帰ったのかな? もうちょっと待って誰もこなさそうなら地下室に入ってみよう。何かわかるかもしれない。)

30分ほど待ったが誰もここへ戻ってくることが無く安堵したロゼッタは螺旋階段を降り、興味がそそられた地下室へ続く階段に繋がるカラクリを開けた。

「もう、入っても大丈夫だよね……? 何があるんだろう。」

恐る恐る手で壁を押さえながら冷えた石畳の階段を一歩、一歩と少しずつ降り進んで行く。
カンテラをもっていなかった為、図書館内で使う持ち手のある燭台を持ちその灯りだけで下へと向かって進んだ。

目に現れたのは古びた木で出来た扉だった。
鍵は運良く無く扉を開けるのに不安を思いながらもゆっくりと開け中へと入った。
予想通り中には誰一人もいない空の状態だった。
燭台で周りを照らしながら周りを見渡す、室内は狭く乱雑に積み上げられた石で出来ており暗く怖さを感じた。
しかし驚いたのが、この図書館でも滅多にお目にかかれなかった古い書物達が保管されている事だった。
家具という家具は無くあるのは本棚と机、椅子だ。
そしてその机には古びた破れたりもしている茶色の書物と横には羊皮紙が置かれておりどうやら複製しているようだった。

「何が書かれているの? この複製の字はライアンさんかな? “解読”ってこの茶色の本の事だったんだ。えーと、なになに……。」

複製が出来た羊皮紙を手に取り燭台で照らしながら書かれた内容を見てみた。


―*―*―*―*―*ー
             

_______遥か昔、初代ベスティニア国王には《闇魔力》を有していた。
彼は自らのベスティニア国だけに及ばず“力”を使い一切の容赦もなく他国にまで手を出し始めてしまった。
まず目を付けたのは《火魔力》を有した者が多いとされるサルベルド国だ。
ベスティニア国王は人の力では倒せない、剛鉄の兵や氷の兵、炎の兵など幾つもの兵隊を生み出し進軍し土地に住まう民達を残虐した。
サルベルド国王はベスティニア国王の心無い悪行に酷く苛まれた。
ベスティニア国王の悪行を鎮めるため行動に移したのはカイザラル国の王だった。
カイザラル国王は【黒石】を使用する事を決断した。
____【黒石】見た目は真っ黒なただの石だがそれは魔力を奪う力を持つとされる石だ。
サルベルド国王とカイザラル国王は力を合わせベスティニア国王の残虐な悪行をやめさせるため【黒石】を使い彼の《闇魔力》を奪い、そして……ベスティニア国王は処刑された。
【黒石】は《闇魔力》を吸収したせいか“紫色”に変色した。
そしてべスティニア国の者達は二度とこのような過ちがないようしっかりと【黒石】を保管する事を硬く誓った。
……数百年後、あの悪夢のような日々から時は過ぎベスティニア国、カイザラル国、サルベルド国は平和になった。


―*―*―*―*―*ー


「こんな事ってあんまりだよ! どうして人は争いを止められないの。あれ……? じゃあなんで私の身体には《闇魔力》が宿っているの……?」
「……それは僕のお母様リゼ・ラヴァートが《闇魔力》を持っていたからですよ。こんばんは、ロゼッタ様。」

ロゼッタの真後ろから現れ声を出したのはヘルトだった。
図書館を出たと思ったが、ロゼッタが書かれた本を読み終えるのを隠れて見ていたのだろう。

「……ッ!? ヘルト様。何故貴方がここに? そのリゼ・ラヴァート様と私が何か関係があるのですか……?」
「関係を言うとすれば貴女と僕は同じ母の元産まれたからですよ。まぁ実際お母様が《闇魔力》に宿ってしまったのは僕の過ちでしたが。」
「お、母様……? 私のお母様がヘルト様のお母様でもある、ということですか?」
「ええ。そうです、僕のお母様は現国王の王妃だったのですが僕が幼い頃に触れちゃいけない【黒石】に触れようとしてしまいましてね、それを見た母は防ぐために誤ってその“石”に触れてしまい身体には《闇魔力》が宿ってしまったってわけです。」
「そ、それじゃあお母様は今どこに……? あ、確かライアンからは私を産んですぐに亡くなってしまったのでしたね……。それもですが、ライアンとは一緒ではないのですか?」

辺りを見渡したがライアンの姿は一切無く他の者達もいない様子だった。

「ライアンは僕が捕縛して今は隠れた小屋に入って貰っています。どうしても貴女と二人で話し合いたかったのでね。ふふ、やはり君は美しい、この艶のある髪に透き通った紫色の瞳。まさに芸術品だと思いませんか?」

ジリジリと迫り来るヘルトに対しロゼッタは怯えながら一歩一歩と後ろに下りドンっと壁に背があたってしまった。

「さ、触らないでください……!」

ーーーバンッ!
ロゼッタの髪へ容赦なく触れようとしたヘルトの手を弾いてしまった。
恐怖、その感情がロゼッタの心を掻き乱す。
何をされるのかこの場でもしかすれば殺されてしまうのか、ライアンは無事なのか溢れ出てくる感情にポロポロと涙が溢れた。

「おや……泣かせてしまいましたね。僕が怖いですか? 怖がる事はありませんよ。ライアンを開放する代わりにお願いが一つありまして。」
「お願い事、ですか……?」
「ーーーそう、今から僕と一緒にベスティニア国のお城へ来て頂きたいのです。」

まるで今夜ダンスを誘うような手を差し出すヘルトにロゼッタは拒否権が無いのを承知し、はじめて彼の手を受け取った。
この先にある絶望に一歩一歩と近づいていくロゼッタであった。

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