さらさらと流れるように描くように

はじめての死後の世界、右も左もわからない。
紅香は最期の記憶がないまま常世で暮らしはじめた。
これが夢であれなんであれ、現世とおなじく暮らさねばならず――未知も怪異も、衣食住の前では些細なこと。
角の生えた少年・多娥丸のもと、紅香は頼まれていないのに掃除やお使いをはじめ、居場所の確保に成功する。
しかし亡者は亡者でも、紅香は理からはぐれた特異な存在だった――安穏とした時間は短く、招いてもいない客が現れはじめた。
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