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知らない時間
68:賢者の意見
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「会頭!会頭!!」
駆け込んで来たトゥットのその様子にシドンは驚いて立ちすくみ、トゥットが抱きついてくるのを避けなかった。
「どうした、革命でも起きたんですか」
「そっちの方が100倍良いです!皇女様が!皇女様が!!」
慌てふためくその様子に嫌な予感がして、自分の背中がサッと冷たくなるのを感じながらトゥットを落ち着かせようと目線を会わせる。そしてその横で同じように驚愕で血の気を引いた賢者が珍しく言葉を発せないまま様子を伺っていた。
「ルカーー皇女様がどうしたのです?」
「毒をっ、毒をご自分から飲まれました!」
「毒!?それにご自分からとはどういうことだ?」
「お部屋に緑色の茶壺が届いたんです。僕もコラーロも『皇女様がご指示された』という手紙を疑いもせず受け取ってしまって」
と、狼狽えながらも経緯を説明しようとするトゥットにアケロンが近寄り威圧的な声をぶつけた。
「『ご自分から飲まれた』ってことは子供、お前が毒を飲ませたんじゃないって思っていいかな?緑色の壷のお茶であることを皇女は知っていて飲んだんだね?そうでなければ小生は今すぐにこの商会を焼き潰すよ」
「そんなことありえません!僕は毒だったなんて知りませんでした!コラーロもアガタも!!皇女様だけがアレが毒って知っていて、僕達は止めたのに、必死で止めたのに!!」
「ーー大賢者様、シュケレシュは皇女様に忠誠を誓っていますのにそんな暴言を吐くとは聞き捨てなりませんね。とくに、トゥットは皇女様が王宮に入ってからずっと一生懸命お手伝いをしていましたよ」
「…ごめん。今のは小生の失言だった。また助けられなかったと思ったら焦ってしまったようだ…。トゥット君許して。ーーそれで皇女は自分で飲んだって?」
自身の失言に呆れたようにアケロンは首を何度も振ってから、トゥットに深々と頭を垂れて謝罪をしてから脱力したように椅子に座った。そして魔法でトゥットを宙に浮かせてから自分の前に座らせ、もてなしのお茶や菓子を目の前にずらりと並べていった。
「宝石姉妹も一緒なら害をなす訳がないよね。ホントごめん」
「とっ、とんでもないです。僕こそ止められずに申し訳ございません。それで、すぐに皇女様を診ていただきたいのですが…」
「うん。でも一応確認するけどさ、皇女様の所に届いたのって大商人殿が持ってる壷と同じ?」
「同じです!全く!!会頭、これは内での取り扱い製品だったんですか?」
「・・・違うねぇ。これは最近『リビュア最高級』かつ、『皇女様お気に入り』と銘打ってカエオレウムに売り出される予定だった物です。阻止しましたがね」
「皇女様お気に入り・・・?ですが皇女様は紅茶しか飲まれませんよ?」
数ヶ月毎日一緒にいた皇女の姿を思い起こしてトゥットは妙に思った。今回の茶壺も『皇女が指示』と言っていたが今まで自分やコラーロ達に『リビュア茶』を名指しで指定されたことはない。それなのにわざわざ頼んだといって部屋に置かざるをえないように置き捨てていって、外にはお気に入りと表する…。
しかもそれは毒だという。
「はぁ…きっとまた皇女様はご自分を軽んじていらっしゃるのだ。さてトゥット君、すぐに皇女様の容態を確認しに行こう。大商人殿は今さっき作った解毒剤を早速瓶に入れてくれると嬉しいんだけど」
「分かりました。まさか皇女様で確認をするとは思いませんでした」
「小生もだよ。まったく、いつの間にこんなに腕白な方になったんだろう」
ぶつぶつと愚痴を良いながら大賢者はゲートの準備を始めるので、トゥットはそれをジッと見つめていた。
「アケロン様、皇女様は昔から今のような無鉄砲なのではなのんですか?」
「んー、小生は直接会ってなかったけどね、聞く限り引っ込み思案で大人しい、裏を返せば上品で楚々とした皇女らしい方だよ。それ相応にプライドも持っていらして、子供ながらに近寄り辛いと大人に感じさせる姫君」
「今と全然違うのですね…。僕なんかにも優しく親しみ易く接してくれるのは社交術なんでしょうかね…」
「表面的な装いではないんじゃないかな。なにか皇女を根本的に変えるショックな出来事で変わったと見えるね。まぁ、小生や宝石姉妹としたら昔のままでいてくれた方が守り易いから有り難いんだけどねぇ」
アケロンの苦笑を見たシドンとトゥットは同意した。
駆け込んで来たトゥットのその様子にシドンは驚いて立ちすくみ、トゥットが抱きついてくるのを避けなかった。
「どうした、革命でも起きたんですか」
「そっちの方が100倍良いです!皇女様が!皇女様が!!」
慌てふためくその様子に嫌な予感がして、自分の背中がサッと冷たくなるのを感じながらトゥットを落ち着かせようと目線を会わせる。そしてその横で同じように驚愕で血の気を引いた賢者が珍しく言葉を発せないまま様子を伺っていた。
「ルカーー皇女様がどうしたのです?」
「毒をっ、毒をご自分から飲まれました!」
「毒!?それにご自分からとはどういうことだ?」
「お部屋に緑色の茶壺が届いたんです。僕もコラーロも『皇女様がご指示された』という手紙を疑いもせず受け取ってしまって」
と、狼狽えながらも経緯を説明しようとするトゥットにアケロンが近寄り威圧的な声をぶつけた。
「『ご自分から飲まれた』ってことは子供、お前が毒を飲ませたんじゃないって思っていいかな?緑色の壷のお茶であることを皇女は知っていて飲んだんだね?そうでなければ小生は今すぐにこの商会を焼き潰すよ」
「そんなことありえません!僕は毒だったなんて知りませんでした!コラーロもアガタも!!皇女様だけがアレが毒って知っていて、僕達は止めたのに、必死で止めたのに!!」
「ーー大賢者様、シュケレシュは皇女様に忠誠を誓っていますのにそんな暴言を吐くとは聞き捨てなりませんね。とくに、トゥットは皇女様が王宮に入ってからずっと一生懸命お手伝いをしていましたよ」
「…ごめん。今のは小生の失言だった。また助けられなかったと思ったら焦ってしまったようだ…。トゥット君許して。ーーそれで皇女は自分で飲んだって?」
自身の失言に呆れたようにアケロンは首を何度も振ってから、トゥットに深々と頭を垂れて謝罪をしてから脱力したように椅子に座った。そして魔法でトゥットを宙に浮かせてから自分の前に座らせ、もてなしのお茶や菓子を目の前にずらりと並べていった。
「宝石姉妹も一緒なら害をなす訳がないよね。ホントごめん」
「とっ、とんでもないです。僕こそ止められずに申し訳ございません。それで、すぐに皇女様を診ていただきたいのですが…」
「うん。でも一応確認するけどさ、皇女様の所に届いたのって大商人殿が持ってる壷と同じ?」
「同じです!全く!!会頭、これは内での取り扱い製品だったんですか?」
「・・・違うねぇ。これは最近『リビュア最高級』かつ、『皇女様お気に入り』と銘打ってカエオレウムに売り出される予定だった物です。阻止しましたがね」
「皇女様お気に入り・・・?ですが皇女様は紅茶しか飲まれませんよ?」
数ヶ月毎日一緒にいた皇女の姿を思い起こしてトゥットは妙に思った。今回の茶壺も『皇女が指示』と言っていたが今まで自分やコラーロ達に『リビュア茶』を名指しで指定されたことはない。それなのにわざわざ頼んだといって部屋に置かざるをえないように置き捨てていって、外にはお気に入りと表する…。
しかもそれは毒だという。
「はぁ…きっとまた皇女様はご自分を軽んじていらっしゃるのだ。さてトゥット君、すぐに皇女様の容態を確認しに行こう。大商人殿は今さっき作った解毒剤を早速瓶に入れてくれると嬉しいんだけど」
「分かりました。まさか皇女様で確認をするとは思いませんでした」
「小生もだよ。まったく、いつの間にこんなに腕白な方になったんだろう」
ぶつぶつと愚痴を良いながら大賢者はゲートの準備を始めるので、トゥットはそれをジッと見つめていた。
「アケロン様、皇女様は昔から今のような無鉄砲なのではなのんですか?」
「んー、小生は直接会ってなかったけどね、聞く限り引っ込み思案で大人しい、裏を返せば上品で楚々とした皇女らしい方だよ。それ相応にプライドも持っていらして、子供ながらに近寄り辛いと大人に感じさせる姫君」
「今と全然違うのですね…。僕なんかにも優しく親しみ易く接してくれるのは社交術なんでしょうかね…」
「表面的な装いではないんじゃないかな。なにか皇女を根本的に変えるショックな出来事で変わったと見えるね。まぁ、小生や宝石姉妹としたら昔のままでいてくれた方が守り易いから有り難いんだけどねぇ」
アケロンの苦笑を見たシドンとトゥットは同意した。
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