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26:無計画と言う名の計画
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「とは言いましても、はっきり申し上げまして計画と言える程のものはないのです」
「あれ、そうなの?ーーそうなのですかな?」
「手紙に書かせた頂きました通り、幽閉されているフルクトス様へ王位継承者としても教育をしていただきたい、あなたが過去に教えて来た名だたる王達に匹敵する教育を与えて欲しい、それ以外いま出来る事がないのです」
「ほう。わざわざ王位継承者の教育をさせるというもんじゃから、ペルラ側に都合の良い王にすげ替えようと思っているのかと思ったのじゃが…違うみたいだねぇ」
「ペルラに都合が良いかは分からないけど、オケアノスに対する最大の復讐になると思うのよ。フルクトス様に直接お会いした事がないからどうなるか見当もついていないわ」
「くくっ。面白いのぅ…皇女様は。こーんな面白いことに小生を呼んでいただけて光栄だ」
「あのさぁ、アケロン様」
アケロンが体を振るわせて笑っているとトゥットが声をかけている。
「なんじゃ小僧」
「小僧じゃないですよ。トゥットと申します。一個聞いて良いですか?」
「小生への質問は高いぞ?くだらない事ならトゥットをペルラの海の底に送ってしまうよ」
「ちょっとした疑問なんだけど、なんで無理してそんな変に長老みたいな口調してるんですか?」
と、私も気になっていたことをスルッと言葉にすると、アケロンの動きがピシッと固まる。
なにやらマズい事を聞いたようだけど、アガタ達の方を見ると2人も気になっていたようでウンウンと頷いている。
「……トゥットは小生のこの話し方は変だと言うのかの?」
「うん。統一出来てなくて、所々で素が出ちゃってるし、なによりアケロン様の見かけに似合ってないよ」
「似合ってない…」
だめ押しのような言葉にアケロンは絶句している。これはフォローしないと本当にペルラの海に連れて行かれてしまうかもしれない。
「アッ、アケロン?あれですわよ、多分長く生きているから色々混ざってしまっているだけ」
「変か~。じゃあ止める!だって、結構頑張ってこの口調にしてたのに変って言われるなら無駄だし」
怒るかと思えば、そんな風に簡単に言い放つではないか。あまりにすぐに切り替えるので驚いていると、コラーロが質問を重ねた。
「頑張っていたと仰るということは、何か意図があっての事なのではないのですか?」
「いや?小生ってちょっと若く見えるらしくて、『300年以上生きてまーす』って信じてもらえないんだよね。だから言葉遣いだけでも長生きしてる人っぽくしてみたんだけど」
「似合ってないから止めた方が良いですよ!僕はそう思いました!」
「って、トゥットが言うから止めることにする」
「さようでございますか。…皇女様からは250年って聞きましたが、300年以上生きていらっしゃるんですか?」
「多分?150超えた辺りで数えるの止めちゃったから、確かじゃないけど。そんくらい」
「50年程度は誤差でございますね」
いやいや、結構長いでしょう。
「皆さん、本題に入ってもよろしいでしょうか?」
パンパンと手を叩いて皆の視線を向ける。
「良いよ~皇女様はただフルクトス様に後継者としての知識を与えたいってことでしょう?それなら構わないよ。ゼロから何かを教えられるって始めてだし」
「ゼロどころか、完全に獣のようかもしれません。赤子の頃から牢獄に入れられ仮面を付けるように強要されて生きているのですから。それに居場所は分かりますが、アケロンが会いに行けるようになるにはどれほどかかるのかもわかりません」
そう言うと、アケロンは不思議そうに首を傾げている。
私なにか変な事を言ったかしら。
「皇女様、小生が今ここにどうやって来たのか覚えている?」
「あ…」
気がついたらいらっしゃっていましたね。
つまり、アケロンには塀も壁も門番も関係ない。場所さえ分かれば入って行けてしまうのだ。
「問題なのは見張りが多いかどうかくらいかな。見張りが沢山いたら小生が言って勉強なんてし始めたら即対策されるだろうしね」
「それは避けていただきたいですね」
「だから皇女様にはどうにかして牢屋の状況を知ってもらいたい。もし見張りが手薄であればそのまま小生が入って状況を確認するなり、誰か連れて行くなりするからさ」
「連れて行く事もできるのですか!?」
考えてもいなかったことに思わず声を張り上げてしまえば、アケロン含めその場の全員が目を丸くしているが、このまま話を進めてしまいましょう。
「連れて行っていただけると言う事は、私をここから出していただくことも」
「ああそう言う事ね。出来るよ。行き先さえ決めてくれればかんたーん!」
「ありがとうございます!アガタ、やはりその枕を私の姿に見えるようにして、コラーロはこの部屋に入ったら私の声が聞こえるようにしておいて」
「「かしこまりました」」
よし、顔を見せないという理由もある事ですし2~3日くらい外に出て動き回ってみましょう。
「あれ、そうなの?ーーそうなのですかな?」
「手紙に書かせた頂きました通り、幽閉されているフルクトス様へ王位継承者としても教育をしていただきたい、あなたが過去に教えて来た名だたる王達に匹敵する教育を与えて欲しい、それ以外いま出来る事がないのです」
「ほう。わざわざ王位継承者の教育をさせるというもんじゃから、ペルラ側に都合の良い王にすげ替えようと思っているのかと思ったのじゃが…違うみたいだねぇ」
「ペルラに都合が良いかは分からないけど、オケアノスに対する最大の復讐になると思うのよ。フルクトス様に直接お会いした事がないからどうなるか見当もついていないわ」
「くくっ。面白いのぅ…皇女様は。こーんな面白いことに小生を呼んでいただけて光栄だ」
「あのさぁ、アケロン様」
アケロンが体を振るわせて笑っているとトゥットが声をかけている。
「なんじゃ小僧」
「小僧じゃないですよ。トゥットと申します。一個聞いて良いですか?」
「小生への質問は高いぞ?くだらない事ならトゥットをペルラの海の底に送ってしまうよ」
「ちょっとした疑問なんだけど、なんで無理してそんな変に長老みたいな口調してるんですか?」
と、私も気になっていたことをスルッと言葉にすると、アケロンの動きがピシッと固まる。
なにやらマズい事を聞いたようだけど、アガタ達の方を見ると2人も気になっていたようでウンウンと頷いている。
「……トゥットは小生のこの話し方は変だと言うのかの?」
「うん。統一出来てなくて、所々で素が出ちゃってるし、なによりアケロン様の見かけに似合ってないよ」
「似合ってない…」
だめ押しのような言葉にアケロンは絶句している。これはフォローしないと本当にペルラの海に連れて行かれてしまうかもしれない。
「アッ、アケロン?あれですわよ、多分長く生きているから色々混ざってしまっているだけ」
「変か~。じゃあ止める!だって、結構頑張ってこの口調にしてたのに変って言われるなら無駄だし」
怒るかと思えば、そんな風に簡単に言い放つではないか。あまりにすぐに切り替えるので驚いていると、コラーロが質問を重ねた。
「頑張っていたと仰るということは、何か意図があっての事なのではないのですか?」
「いや?小生ってちょっと若く見えるらしくて、『300年以上生きてまーす』って信じてもらえないんだよね。だから言葉遣いだけでも長生きしてる人っぽくしてみたんだけど」
「似合ってないから止めた方が良いですよ!僕はそう思いました!」
「って、トゥットが言うから止めることにする」
「さようでございますか。…皇女様からは250年って聞きましたが、300年以上生きていらっしゃるんですか?」
「多分?150超えた辺りで数えるの止めちゃったから、確かじゃないけど。そんくらい」
「50年程度は誤差でございますね」
いやいや、結構長いでしょう。
「皆さん、本題に入ってもよろしいでしょうか?」
パンパンと手を叩いて皆の視線を向ける。
「良いよ~皇女様はただフルクトス様に後継者としての知識を与えたいってことでしょう?それなら構わないよ。ゼロから何かを教えられるって始めてだし」
「ゼロどころか、完全に獣のようかもしれません。赤子の頃から牢獄に入れられ仮面を付けるように強要されて生きているのですから。それに居場所は分かりますが、アケロンが会いに行けるようになるにはどれほどかかるのかもわかりません」
そう言うと、アケロンは不思議そうに首を傾げている。
私なにか変な事を言ったかしら。
「皇女様、小生が今ここにどうやって来たのか覚えている?」
「あ…」
気がついたらいらっしゃっていましたね。
つまり、アケロンには塀も壁も門番も関係ない。場所さえ分かれば入って行けてしまうのだ。
「問題なのは見張りが多いかどうかくらいかな。見張りが沢山いたら小生が言って勉強なんてし始めたら即対策されるだろうしね」
「それは避けていただきたいですね」
「だから皇女様にはどうにかして牢屋の状況を知ってもらいたい。もし見張りが手薄であればそのまま小生が入って状況を確認するなり、誰か連れて行くなりするからさ」
「連れて行く事もできるのですか!?」
考えてもいなかったことに思わず声を張り上げてしまえば、アケロン含めその場の全員が目を丸くしているが、このまま話を進めてしまいましょう。
「連れて行っていただけると言う事は、私をここから出していただくことも」
「ああそう言う事ね。出来るよ。行き先さえ決めてくれればかんたーん!」
「ありがとうございます!アガタ、やはりその枕を私の姿に見えるようにして、コラーロはこの部屋に入ったら私の声が聞こえるようにしておいて」
「「かしこまりました」」
よし、顔を見せないという理由もある事ですし2~3日くらい外に出て動き回ってみましょう。
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