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遡った時間
6:商人の申し出に皇女は頷く
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興味深そうに私の話を聞こうとするシドンに、彼の部下達も私に視線を集め始めた。
「まず、シュレケシュの皆さんはこのまま私とアガタをカエオレウムへ連れて行ってください」
「それは勿論です。ですが到着したが最後我々は捕まるでしょうね」
「いいえ、それはありません」
前は陸に着くと、私とコラーロはしばらく放置されて誰かが迎えに来たのだ。
陸に下ろしてくれたのが誰だったのかも、迎えに来たのが誰かも分からない。でもすぐに歓待してもらえなかったのは確かだ。
「何故そう言いきれるので?」
シドンは笑って細めたような目元だった目を大きく見開いて私に顔を寄せてくる。目力に刺し殺されそうだ。
「…カンですかね」
「皇女様のとんでもないカンでございますね。いくら衰退したとはいえ、ペルラ皇女にそのような無礼を働く常識知らずがいるのでしょうか」
アガタの言葉にシドンが口を挟む。
「んー、メイドの方。ちょっとその考えは改めた方が良いですね。無礼を承知で申し上げますが、カエオレウムは勿論、俺らの故郷のリビュアでもペルラはそれほど重要な国ではございません。周囲と交流を断ち、独自の文化を持つ皇女樣方の祖国は、金と地位を持つ者達からすれば魅力的でしょうが、我々庶民や国としても利益を求める者からすれば知らないで一生を終えるレベルです」
「そんなっ!あんまりです!!」
アガタは大きな声で叫んだ。
私もショックではあるが、過去にされた扱いの理由が分かった気がした。
物珍しい国からきた世間知らずの気位だけは高い女。それが私だったのだ。
「正直に教えて下さってありがとうございます。シドン。おかげで腹をくくる事が出来ましたわ」
「ほう。では話を戻しましょう。陸に下りた後、我々はどうすれば良いのでしょう?」
「陸に着きましたら、そのまま私とアガタの乗った馬車を王宮に連れて行って下さい。そうしたら私があなた方に助けていただいたと王と、ーーまぁ不本意ですが『婚約者』にあなた方を紹介させていただきますわ」
「紹介?それはあまりシュケレシュにはうまみがないと思いますが。私どもは血なまぐさい事は嫌いなので、あまりカエオレウム王家とは関わりになりたくないのです」
「それは大丈夫。ちなみに、先ほど私の国『ペルラ』は庶民に魅力がないと仰っていたけど、そことのやり取りを独占的に出来るとしたらーーどうかしら?」
私の一言にシドンは再び目を見開いて私を見つめた。
ペルラはシドンが言った通り周囲と交流を行っていない。それ故にペルラ産の宝石や織物、芸術品は高値で取引される。中でもペルラ産の楽器となると、家一軒買うよりも高くなるのだ。
しかしもったいないことに、その事実をペルラ国民は知らない。
国に籠っているが故に外からの評価や評判を耳にする機会がないのだ。
過去の私が、国を後にして知った事で最も驚いたのはその事であった。
では何故それをペルラに教えなかったのかと言えば、教えられなかったからだ。
婚姻した後、私はペルラの人間と一切の連絡をする事が出来ないようにされた。そしてそれは他国に嫁いでいた姉達への連絡すら厳格に制限されたのだ。
コラーロと2人っきり、一切の縁を断ち切られた私たちは何も情報も得られずに嫁ぎ先で消える事になったのである。
「なるほど。では、私どもはみかえりに皇女様に何をして差し上げれば良いでしょう?」
やはり思った通りシドンは頭の回転が速い。
言って欲しかった通りの申し出に私は微笑んでみせるのだった。
「まず、シュレケシュの皆さんはこのまま私とアガタをカエオレウムへ連れて行ってください」
「それは勿論です。ですが到着したが最後我々は捕まるでしょうね」
「いいえ、それはありません」
前は陸に着くと、私とコラーロはしばらく放置されて誰かが迎えに来たのだ。
陸に下ろしてくれたのが誰だったのかも、迎えに来たのが誰かも分からない。でもすぐに歓待してもらえなかったのは確かだ。
「何故そう言いきれるので?」
シドンは笑って細めたような目元だった目を大きく見開いて私に顔を寄せてくる。目力に刺し殺されそうだ。
「…カンですかね」
「皇女様のとんでもないカンでございますね。いくら衰退したとはいえ、ペルラ皇女にそのような無礼を働く常識知らずがいるのでしょうか」
アガタの言葉にシドンが口を挟む。
「んー、メイドの方。ちょっとその考えは改めた方が良いですね。無礼を承知で申し上げますが、カエオレウムは勿論、俺らの故郷のリビュアでもペルラはそれほど重要な国ではございません。周囲と交流を断ち、独自の文化を持つ皇女樣方の祖国は、金と地位を持つ者達からすれば魅力的でしょうが、我々庶民や国としても利益を求める者からすれば知らないで一生を終えるレベルです」
「そんなっ!あんまりです!!」
アガタは大きな声で叫んだ。
私もショックではあるが、過去にされた扱いの理由が分かった気がした。
物珍しい国からきた世間知らずの気位だけは高い女。それが私だったのだ。
「正直に教えて下さってありがとうございます。シドン。おかげで腹をくくる事が出来ましたわ」
「ほう。では話を戻しましょう。陸に下りた後、我々はどうすれば良いのでしょう?」
「陸に着きましたら、そのまま私とアガタの乗った馬車を王宮に連れて行って下さい。そうしたら私があなた方に助けていただいたと王と、ーーまぁ不本意ですが『婚約者』にあなた方を紹介させていただきますわ」
「紹介?それはあまりシュケレシュにはうまみがないと思いますが。私どもは血なまぐさい事は嫌いなので、あまりカエオレウム王家とは関わりになりたくないのです」
「それは大丈夫。ちなみに、先ほど私の国『ペルラ』は庶民に魅力がないと仰っていたけど、そことのやり取りを独占的に出来るとしたらーーどうかしら?」
私の一言にシドンは再び目を見開いて私を見つめた。
ペルラはシドンが言った通り周囲と交流を行っていない。それ故にペルラ産の宝石や織物、芸術品は高値で取引される。中でもペルラ産の楽器となると、家一軒買うよりも高くなるのだ。
しかしもったいないことに、その事実をペルラ国民は知らない。
国に籠っているが故に外からの評価や評判を耳にする機会がないのだ。
過去の私が、国を後にして知った事で最も驚いたのはその事であった。
では何故それをペルラに教えなかったのかと言えば、教えられなかったからだ。
婚姻した後、私はペルラの人間と一切の連絡をする事が出来ないようにされた。そしてそれは他国に嫁いでいた姉達への連絡すら厳格に制限されたのだ。
コラーロと2人っきり、一切の縁を断ち切られた私たちは何も情報も得られずに嫁ぎ先で消える事になったのである。
「なるほど。では、私どもはみかえりに皇女様に何をして差し上げれば良いでしょう?」
やはり思った通りシドンは頭の回転が速い。
言って欲しかった通りの申し出に私は微笑んでみせるのだった。
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