上 下
180 / 200
魔界奮闘

巨人兵

しおりを挟む
その巨体からは想像できないよう高い跳躍で、砦の直ぐ近くに一人の巨人兵は着地する。砦の兵が矢や手槍で攻撃するが、固く強固な巨人兵の肌を傷つけることはできない。

兵たちの武器の攻撃が通用しないよを見て、紋次郎は炎の閃光の魔法を唱えて攻撃した。しかし、強力な魔法攻撃が直撃したにもかかわらず、巨人兵は平然と砦をよじ登ってくる。

「パーシルの巨人兵に攻撃魔法は効果が薄いです。もとより高い魔法耐性に加えて、彼らは対魔法防具を装備しています。それに加えて再生力を持っているので、連続攻撃で少しずつダメージを蓄積させていくのも難しいかもしれません」

スフィルドの説明に、どう対処すればいいのか迷っていると、巨人兵が砦の城壁に手をかけてきた。それを見た紋次郎はとっさに動く。剣を構えて巨神兵の元へ跳躍した。

紋次郎はすでにターボを発動していた。空中で体をうねらせながら巨人兵に斬りかかった。紋次郎の一撃目の攻撃は、巨人兵の胸を横に切り裂く。巨人兵は想像もしていなかった衝撃を胸に受けて、思わず体を退け反らした。そこへ紋次郎のさらなる剣撃が、連続で繰り出される。

一瞬で数十手に及ぶ剣撃を巨人兵は体に受けた。強兵とされるこの巨人兵が肉片へと変えられていく姿を見て、敵も味方も言葉を失っていた。

「あの者は剣も使えるのか・・・」
アースロッドは、紋次郎が剣を持っているのは、その魔法発動の効果の為だけだと思い込んでいた。しかし、蓋を開ければ、自分と同等以上のその剣の技量に、素直に驚いていた。

紋次郎が最初の巨人兵を倒すと、すぐに次の巨人兵が城壁を登ってきていた。ターボで加速した紋次郎は、すぐに巨人兵に近づき懐に入る。そして下から突き上げるように剣で切りつけた。その一撃は強固であるはずの巨人兵の体を、腹から頭にかけて切り裂いた。

もはや紋次郎の強さを疑うものはこの戦場にはいなかった。味方はその姿を頼もしく思い、敵は恐怖と戦慄を蔓延させていた。

戦況を見ていたブファメ軍の司令官は、高い戦闘力を持っている敵の存在に眉をしかめる。さすがに戦力的に負けるとは考えていなかったが、想像以上の被害を覚悟していた。

「パーシルの巨人兵の部隊の攻撃と同時に、黒飛竜を何体か空から攻撃させろ」
ブファメ軍の司令官は、隣にいた副官にそう命じた。黒飛竜は、竜種としては知能はあまり高くないが、その空での戦闘力はレベル200以上と非常に高い。

紋次郎が四人目の巨人兵を倒すと、敵の動きに変化が起こった。先ほどまで数にものを言わせて、ただひたすら突っ込んできていた敵の侵攻が止まった。敵が攻撃を諦めたとは思えない。おそらく、嵐の前の静けさであろう・・

敵の攻撃が止んで、砦では、怪我人の手当てや休息を取っていた。紋次郎もスフィルドもエネルギー補給に、水を飲んで、乾燥豆餅という保存食を食べている。そこへアースロッドが声をかけてきた。

「紋次郎どの、スフィルドどの、お主たちは途轍もなく強いの。これまで出会った者の中でも五指に入る強さじゃ」

そう言っているアースロッドも相当な実力者だと紋次郎は気がついていた。紋次郎の隣で戦う彼は、巨人兵を相手にその全てにおいて圧倒していた。さすがにその戦いぶりを見れば、紋次郎にもその強さがわかった。実はその戦闘において、アースロッドは、実力のほんの少ししか出していないかった。だが、実力を出していなかったのは手を抜いているのではなく、王の契約に縛られていたからである。魔界の国々の王は、魔界の土地を治める権利を得る為に、その能力の半分を魔界の神に預けていた。それは魔界の王である限り続き、王をやめない限りその能力は戻ってこない。

「それよりアースロッド王、どうしますか。この後、敵は本格的に攻めてくると思いますけど」

紋次郎の問いに、アースロッドは困った顔で返答する。
「うむ・・わからん・・どうすれば良いかのう・・」

何の策もないことを聞いて、紋次郎も言葉を失う。
「え・・とスフィルド、なんかいい案ないかな」

「そうですね・・私と紋次郎、それと王一人であれば、私の高速飛行で、強制離脱することは可能ですけど・・」
「ならん! それはならん・・部下達を見捨てるなどわしにはできん」

この王ならそう言うと思った。なので部下を含めて何とか助かる方法を考えないといけない。

だけど、それを考える時間など敵は与えてくれなかった。敵のすべての兵が、この砦に向かって一斉に動き始めたのだ。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する

美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」 御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。 ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。 ✳︎不定期更新です。 21/12/17 1巻発売! 22/05/25 2巻発売! コミカライズ決定! 20/11/19 HOTランキング1位 ありがとうございます!

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

処理中です...