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魔界奮闘

君主の魔剣

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アースロッドは愛刀であるソード・オブ・ムラサメを握りしめる。そして由王宮の入口へと向かって歩みを進めようとした。
「お待ち下さいアースロッド様! どこへ行かれるのですか」
「決まっておろう! 裏切り者のユルダを斬り伏せてくれるわ!」

近衛兵たちは必死で王を止める。鬼神のごとく強さを持つこの王でも、敵だらけの由王宮の外に出れば一溜まりもない。なんとか王を宥めて、部屋に戻ってもらう。

由王宮は、硬い岩山をくりぬいて造られた宮殿であった。入口は一箇所しかなく、しかも細い通路となっていて、大群が攻めてきても一度にそこに入ってこれるのは少数であり、守るのは容易であった。

近衛兵は由王宮の中へ突入してきたユルダの兵を、取り囲んで倒していた。ユルダの兵は次々と屍を重ねていく。圧倒的に地理の優位のある近衛兵たちであったが、止め処なく攻め寄せるユルダの兵に、少なからず犠牲が出ていた。その犠牲はユルダの兵10人に対して近衛兵1人の割合であった。ユルダの兵は一万ほどで、近衛兵は300人・・このまま攻撃が続けば、間違いなく、この通路は突破されるであろうと思われた。

壮大にそびえ建つリネイの主城、その裏手の岩山に、由王宮はあった。そこを見下ろすように立っている塔の上に、ユルダがいた。

「ずいぶん手こずっているな」
「はっ、由王宮は入り口が狭く。また王の近衛兵は精強で苦戦しているようです」

「ブファメの竜騎兵は何をしている」

ユルダは、謀反を起こすに対して、自らの兵力に不安があった。そこでブファメに助力を頼んでいた。そして少数精鋭の希望に応えてやってきたのが、ブファメの500人の竜騎兵であった。一人一人が推定レベル140以上の力を持つ竜騎兵の部隊は驚異の戦力であった。

「彼らは戦況を見ているだけでまだ動いていません」
「チッ・・竜騎兵の隊長に伝えろ。すぐに動くようにワシが言っていると」
「はっ。伝えに参ります」

そう言うと兵は、塔を降りていった。

ユルダの要請に、ブファメの竜騎兵はすぐに動いた。それはユルダが支援の要請を待ってたかのように迅速な行動であった。5人一組の編隊を組んで、すぐに由王宮の狭い通路へと突入する。

入り口の回廊を出ると、すぐにブファメの竜騎兵と近衛兵は戦闘に突入した。ユルダの兵とは比べものにならない戦闘力に、近衛兵たちはいきなり苦戦を強いられる。地理的優位な状態でありながら、互角に戦うのがやっとであった。

「どうした・・入り口が騒がしくなったな」
先ほどまでと、明らかに違う様子にアースロッドが気づいた。近くに控えていた近衛兵の隊長が答える。
「はっ・・それがあのブファメの竜騎兵が突入してきまして・・・」
「なんだと!」

ブファメの竜騎兵の話は、アースロッドも聞いたことがある。ブファメでも五指に入るほどの精鋭部隊で、一人一人の戦闘力が相当高いと聞いている。その部隊が今、近衛兵と戦闘をしている・・アースロッドはすぐに入り口へ向けて歩みを進める。
「おやめくださいアースロッド様! ここは我らにお任せください」
「心配するな、ブファメの竜騎兵の力を見るだけだ」

そう言ってアースロッドは近衛兵の隊長を制止を振り切った。

近衛兵の頭を吹き飛ばした竜騎兵を、アースロッドはその刀で斬り伏せる。さすがの竜騎兵でも、アースロッドの武名は彼らを怯ませるには十分の効果を発揮していた。アースロッドの使っている刀は魔剣であった。その刀に傷つけられた者は、それがたとえ小さな傷であっても、その傷口から生命力を吸い取られていき、放置すれば死を免れない。

竜騎兵たちは怯みはしたが、攻撃を緩めることはなかった。仲間がその魔剣の刃に倒れていっても、その槍の握りを弱めることはない。少しづつではあったが、アースロッドを追い詰めていく。


紋次郎は由王宮の近くの森の中にいた。そこでスフィルドに由王宮の中の様子を探ってもらう。
「まずいですね・・早く助けないと王は殺されるでしょう」

「じゃあ急がないと・・でもどうやって助ければいいかな・・」
俺がそう呟くと、スフィルドがすぐに何かを見始めた。そして何かを見つけると話し始める。
「・・・・見つけました。由王宮の裏に秘密の通路があります。そこから助け出せそうですね」

その秘密通路はかなり古い物のようで、もしかしたらアースロッド王たちも知らない可能性があるようである。俺たちはその秘密の抜け道へと急いだ。

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