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ダンジョンウォー

最後の一振り

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「人間よ何をしている、早く斬ればいいだろう」
エミロの前で紋次郎は立ちすくんでいた。元々、紋次郎は無抵抗の小動物を斬り伏せれるような人間ではない。

「紋次郎・・君が無抵抗の者に剣を振り下ろすことができない人間なのは知っている・・でもエミロはここで斬っておかないとダメなんだ、彼を生かしておけばもっと多くの人が命を失うことになるんだよ」

紋次郎にも、ニャン太の言葉はすごく理解することはできていた。でもどうしても剣を振り下ろすことができなかった・・

「人間よ・・勝負は決まった、負けてまで私は生きようと思うない・・さぁ、早く斬るんだ」

それでも剣を振り下ろせない紋次郎に、エミロは仕方ない・・と顔をしかめて行動を起こした。
「今神力の波長を変えた。後少しで、私とフェルキーの神力は暴走して大爆発起こす。そうなればここにいる私や人間、そしてフェルキーだけではなく、上にいるであろうお前の仲間全員が死ぬことになるぞ・・」

驚きの顔でエミロを見つめる紋次郎に、ニャン太が声をかける。
「エミロの話は本当だよ紋次郎・・早くしないとみんな死んでしまう・・」

紋次郎は意を決したように剣を振り上げ、力強く目を閉じ、それを振り下ろした。それが神獣エミロの地上での生の終わりであった。


ポーズたちは空中城の城内へ入る入り口を探していた。だけどそれを中断することが起こった。城内へ続く大きな扉がゆっくり開き始めたのである。そして開いた扉から、紋次郎とニャン太がゆっくり歩いて出てきた。

「紋次郎!ニャン太」

みんなの顔を見て安心した紋次郎はその場へへたり込んだ。紋次郎にみんな急いで近く。
「どうしたアホ主! 怪我したのか!」
「紋次郎様、大丈夫ですか!」
「紋次郎何があったの?」
「紋次郎さん、どこか痛いんですか?」
「お兄ちゃん! メイルはここにいるよ!」
「紋次郎・・大丈夫か・・・」
「オレ・・・紋次郎・・心配・・」
「紋次郎しっかりするのじゃ」
「ご主人様、薬さぁ持ってくるかぁ」
「紋次郎、ほらしっかりせんか」
「紋次郎、紋次郎、紋次郎!」
「紋次郎! あたいの肩に掴まれ!」
「紋次郎、私は今回すごく頑張りました、褒めてください」

そんなみんなの心配の声を紋次郎は意外な言葉で返す。

「お腹すいた・・・・」

その言葉は、皆を安心させる一言であった。


「ほら主! 飯出来だぞー」
空中城にある小さな森で、俺たちはキャンプをしていた。腹ペコで動けなくなった俺の為に、ソォードがすぐに食事を作ってくれた。

「うわ・・美味しいよ・・生き返る・・・」
俺は何気ない芋汁の味に感動の涙を流す。泣きながら気持ち悪いくらいに一心不乱に食べる俺を見ながら、みんな戦いの情報を共有していた。

「神獣エミロが黒幕だったの?」
デナトスの驚きの声が響く。ニャン太が、はぐれた後の経緯をみんなに説明しているようだ。

「どうもその裏にも誰かいるようだけどね」
「おいおい・・神獣エミロより上がいるってのかよ・・」

メタラギが俺の剣に目が行き、信じられないような顔で悲鳴をあげる。
「なぁ・・も・・紋次郎! その剣は何じゃ!!」
「あ、これね、空中城の中で手に入れたんだよ、すごく強いんだよ」
「紋次郎様・・・それってゴット級の剣じゃないですか!」

鑑識眼で剣の性能を見たリンスも驚いている。それを聞きつけたポーズが話に入ってくる。
「ゴット級だって! そりゃあすげえ値段で売れんじゃなえか! すぐに売りに行こうぜえ!」
「嫌だよ、そんな勿体無いことしない」
「なんでだよ、これを売ればでっけえダンジョンだって買えるぜ」

「ポーズ、その剣はそんな大きなダンジョンなんかより、ずっと価値があるかもしれないよ、それくらいのものなんだよ」
「なんだよニャン太まで反対かよ、金があれば色んなもんが買えるんだぜ」

「どうせ大金が入ったら小遣いが上がるくらいに考えてるんでしょう。あんたの小遣いは大金が入ってきても上がらないわよ」
デナトスのその宣言に、ポーズはしょんぼりと落ち込む。

そこで紋次郎は、空中城の内部の宝物庫に、財宝があったのを思い出した。
「ポーズ、そういえば城内に財宝があるんだよ、これを売らないでも宝がわんさかあるから、帰りに持って帰ればいいと思うよ」

「何!!財宝だと! どこだ主! どこにあるんだよ!」
「だから、帰りにしようよ」
「いや! 今取りに行く! 案内しろ主!」
「嫌だよ・・今日はもう休みたい」
そのやり取りを聞いていたリンスがポーズに雷を落とす。
「ポーズ! そんなの明日の解呪が終わった後でいいでしょう、今は紋次郎様を休ませてあげないさい」
「チッ・・・」
そう言ってポーズはなんとか引き下がった。

食事も終わり、その日は戦いの疲れもあって、そのまま泥のように眠りについた。明日にはデナトスの呪いが解ける・・それを思うと、たまらなく嬉しかった。

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