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ダンジョンウォー
ホビットの冒険
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宿の屋上にあるテラスで、ポーズは日向ぼっこをしていた。手には強いアルコールの飲み物を持って、それをチビチビやりながら、幸せな時間を過ごしていた。他の仲間のほとんどは浜辺に遊びに行っていて宿にはいなかった。
そこへ紋次郎が浮かない顔をして現れる。
「なんでえ主、浜辺に行かなかったのか?」
浮かない顔をさらに沈めて、紋次郎は答える。
「いや・・そんな気分になれなくてね・・・」
紋次郎は昨日から少し元気がない、何かしらあったようだけどポーズは気にもとめていなかった。
ポーズは手持ちの酒を全て飲み尽くしてしまう。仕方ないので新しい酒を調達しに、宿の下へと降りていった。
その道すがら、階段の途中に女の子が座っていた。ポーズはそれを避けてそこを通ろうとする。だが、その女の子の隣をすれ違う瞬間、小さな手が伸びてきて、ポーズの足をいきなり掴んだ。まさかそんなことをしてくるとは思わなかったポーズは、思いっきり階段を転げ落ちる。しかし、さすがはシーフスキルを持つ彼である、その身軽さは常人のそれを大きく上回り、階段の下に到達する前に体勢を立て直して着地する。
「おい! なにすんだてめー!」
ポーズは女の子相手にもその口ぶりは変わらない。怒鳴られた女の子は特に彼を恐れることもなく、歩み寄ってくる。
「ホビット、ちょっと頼みがあります」
いきなりのその言葉に、ポーズは驚き答える。
「はぁ? なに言ってんだ、それが人にものを頼む行動か?」
「あれくらい軽くいなせないようでは頼りになりませんから、ちょっと試させてもらいました。謝罪はしますけど、頼みは聞いてください」
「チッ、謝罪しているようには見えねえけどな、まあいい、それで頼みってのはなんだよ」
「ちょっと手伝って欲しいことがあります」
「手伝い? お使いか何かか?」
「いえ、ちょっとしたドロボーです」
女の子はアビットと名乗った。この宿の一人娘だそうだ。彼女の話を聞くと、泥棒と言っても盗みに入るわけではなく、進入禁止の遺跡からあるものを一緒に取りに行って欲しいそうだ。
「なんだよそのある物って」
「それは言えません」
「ふん、まあいいわ、それじゃあ、お前の願い事を聞いて俺にはなんの得があるんだ」
「名誉と達成感、それと少しばかりのお菓子をあげます」
「いらねえよ!」
間髪入れずに否定されたアビットは、少し困ったようで考え込む、そして何かを思いつきポーズに提案した。
「仕方ありませんね・・ではこうしましょう。遺跡には他に宝があると言われています。私には興味のないものですから、それはあなたに差し上げます」
「ふんっ、それはお前のもんじゃねえだろうに・・まあ、いいわ、その遺跡ってのには興味があるから手伝ってやるよ」
アビットはそんなポーズの返事に、無表情だった顔が少し笑顔に変わる。ポーズは遺跡の宝に興味があったわけではなかった、ただ・・淡々とお願いしてくるアビットの心の奥に、必死な思いを見つけ、彼女の願いを聞いてあげる気になったのである。それは彼の優しさで、決して自分から言うことはない本音であった。
その遺跡は、宿の裏手の森の中にあった。石でできた入り口の扉には何やら紋章が刻まれている。アビットはそこに宝石のような石をかざす。すると石の扉は音を立てて少しづつ開いていった。
「その宝石は何だ」
ポーズの質問に、アビットは淡々と答える。
「これはこの遺跡の鍵です。うちに家に代々伝わるものなんですけど、親から黙って借りてきました」
「この遺跡はお前の家のものなのか?」
「正確には違いますけど、管理を任されている一族ではあります」
こいつは一体何が目的なんだ・・そんな疑問が沸きつつもポーズは、遺跡に中に堂々と入っていくアビットに黙ってついていった。
入り口を入ってすぐの通路、床が色とりどりのタイルが敷き詰められているその場所で、ポーズは違和感を感じて、すぐに先に行くアビットを止めた。
「ちょっと待て! お前ここの中に入る初めてか?」
「そうです、ここに入るのは初めてですが何か?」
「バカヤロー! それを早く言え! ここの床はトラップだらけだぞ、何ズカズカ先に行っててんだよ。俺が先頭に行くから俺の後をついてこい。足を踏む床も同じものを踏めよ」
あまりにも堂々と進むので、前に来たことある場所だと思ってしまった。危なく二人とも大変な目にあうところであった。
「そこの真ん中のタイルは絶対に踏むなよ、100%トラップだ」
ポーズは慎重に罠を確認しながら進んだ、その後をアビットは素直についていく。床のトラップのある通路を抜けると、大きな円形の部屋へと出た。そこには5つの丸石が置かれた台座が並んでいて、先の進む通路が見当たらない。
「行き止まりですね・・」
「何かの仕掛けがあるな・・ちょっと待ってな」
そ午後午後ッう言ってポーズは5つの丸石と台座を念入りに調べる。特に変わったところはなさそうであったけど、1つの丸石に違和感を感じた。
「これかな・・」
他の丸石と台座は強く固定されているのだけど、1つの丸石だけ台座の上に置いてあるだけであった。ポーズはその丸石を持ち上げてどかしてみる。するとどこかでガチガチっと何かの動く音がして、丸石を置いていた台座がせり上がってくる。その動きと連動して目の前の壁が重い音を響かせながら開いていった。
「よし、先に進むぞ」
「やるわねホビット」
「俺の名はポーズだ、覚えな嬢ちゃん」
「覚えたはホビット」
「・・・まあ、それでいい」
ポーズとアビットは開いた壁の向こうへと歩みを進める。薄暗い通路のその先には淡い光が見える。そしてそこからは得体の知れない不気味な声が響いていた。二人は心臓をえぐられるようなその声に、身震いするような恐怖を感じていた。
そこへ紋次郎が浮かない顔をして現れる。
「なんでえ主、浜辺に行かなかったのか?」
浮かない顔をさらに沈めて、紋次郎は答える。
「いや・・そんな気分になれなくてね・・・」
紋次郎は昨日から少し元気がない、何かしらあったようだけどポーズは気にもとめていなかった。
ポーズは手持ちの酒を全て飲み尽くしてしまう。仕方ないので新しい酒を調達しに、宿の下へと降りていった。
その道すがら、階段の途中に女の子が座っていた。ポーズはそれを避けてそこを通ろうとする。だが、その女の子の隣をすれ違う瞬間、小さな手が伸びてきて、ポーズの足をいきなり掴んだ。まさかそんなことをしてくるとは思わなかったポーズは、思いっきり階段を転げ落ちる。しかし、さすがはシーフスキルを持つ彼である、その身軽さは常人のそれを大きく上回り、階段の下に到達する前に体勢を立て直して着地する。
「おい! なにすんだてめー!」
ポーズは女の子相手にもその口ぶりは変わらない。怒鳴られた女の子は特に彼を恐れることもなく、歩み寄ってくる。
「ホビット、ちょっと頼みがあります」
いきなりのその言葉に、ポーズは驚き答える。
「はぁ? なに言ってんだ、それが人にものを頼む行動か?」
「あれくらい軽くいなせないようでは頼りになりませんから、ちょっと試させてもらいました。謝罪はしますけど、頼みは聞いてください」
「チッ、謝罪しているようには見えねえけどな、まあいい、それで頼みってのはなんだよ」
「ちょっと手伝って欲しいことがあります」
「手伝い? お使いか何かか?」
「いえ、ちょっとしたドロボーです」
女の子はアビットと名乗った。この宿の一人娘だそうだ。彼女の話を聞くと、泥棒と言っても盗みに入るわけではなく、進入禁止の遺跡からあるものを一緒に取りに行って欲しいそうだ。
「なんだよそのある物って」
「それは言えません」
「ふん、まあいいわ、それじゃあ、お前の願い事を聞いて俺にはなんの得があるんだ」
「名誉と達成感、それと少しばかりのお菓子をあげます」
「いらねえよ!」
間髪入れずに否定されたアビットは、少し困ったようで考え込む、そして何かを思いつきポーズに提案した。
「仕方ありませんね・・ではこうしましょう。遺跡には他に宝があると言われています。私には興味のないものですから、それはあなたに差し上げます」
「ふんっ、それはお前のもんじゃねえだろうに・・まあ、いいわ、その遺跡ってのには興味があるから手伝ってやるよ」
アビットはそんなポーズの返事に、無表情だった顔が少し笑顔に変わる。ポーズは遺跡の宝に興味があったわけではなかった、ただ・・淡々とお願いしてくるアビットの心の奥に、必死な思いを見つけ、彼女の願いを聞いてあげる気になったのである。それは彼の優しさで、決して自分から言うことはない本音であった。
その遺跡は、宿の裏手の森の中にあった。石でできた入り口の扉には何やら紋章が刻まれている。アビットはそこに宝石のような石をかざす。すると石の扉は音を立てて少しづつ開いていった。
「その宝石は何だ」
ポーズの質問に、アビットは淡々と答える。
「これはこの遺跡の鍵です。うちに家に代々伝わるものなんですけど、親から黙って借りてきました」
「この遺跡はお前の家のものなのか?」
「正確には違いますけど、管理を任されている一族ではあります」
こいつは一体何が目的なんだ・・そんな疑問が沸きつつもポーズは、遺跡に中に堂々と入っていくアビットに黙ってついていった。
入り口を入ってすぐの通路、床が色とりどりのタイルが敷き詰められているその場所で、ポーズは違和感を感じて、すぐに先に行くアビットを止めた。
「ちょっと待て! お前ここの中に入る初めてか?」
「そうです、ここに入るのは初めてですが何か?」
「バカヤロー! それを早く言え! ここの床はトラップだらけだぞ、何ズカズカ先に行っててんだよ。俺が先頭に行くから俺の後をついてこい。足を踏む床も同じものを踏めよ」
あまりにも堂々と進むので、前に来たことある場所だと思ってしまった。危なく二人とも大変な目にあうところであった。
「そこの真ん中のタイルは絶対に踏むなよ、100%トラップだ」
ポーズは慎重に罠を確認しながら進んだ、その後をアビットは素直についていく。床のトラップのある通路を抜けると、大きな円形の部屋へと出た。そこには5つの丸石が置かれた台座が並んでいて、先の進む通路が見当たらない。
「行き止まりですね・・」
「何かの仕掛けがあるな・・ちょっと待ってな」
そ午後午後ッう言ってポーズは5つの丸石と台座を念入りに調べる。特に変わったところはなさそうであったけど、1つの丸石に違和感を感じた。
「これかな・・」
他の丸石と台座は強く固定されているのだけど、1つの丸石だけ台座の上に置いてあるだけであった。ポーズはその丸石を持ち上げてどかしてみる。するとどこかでガチガチっと何かの動く音がして、丸石を置いていた台座がせり上がってくる。その動きと連動して目の前の壁が重い音を響かせながら開いていった。
「よし、先に進むぞ」
「やるわねホビット」
「俺の名はポーズだ、覚えな嬢ちゃん」
「覚えたはホビット」
「・・・まあ、それでいい」
ポーズとアビットは開いた壁の向こうへと歩みを進める。薄暗い通路のその先には淡い光が見える。そしてそこからは得体の知れない不気味な声が響いていた。二人は心臓をえぐられるようなその声に、身震いするような恐怖を感じていた。
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