上 下
97 / 200
ダンジョンウォー

新しい仲間

しおりを挟む
食堂で経緯を簡単に説明して、俺はカリスをみんなに紹介した。
「カリスと言いますだぁ、皆様、よろしくおねげえしますだぁ」

みんな突然の展開に驚いていたのだけど、リンスとアルティの驚きようは異常であった。
「紋次郎様! その者はユルジールと名乗ったんでか? それは間違いないですか?」
「そうだよ。アルケミストのユルジールさんだよ」
「紋次郎さん・・・それが私の知っているユルジールだとすれば、とんでもない人ですよ。アルケミスト、ユルジール。歴史上ただ一人の伝説級アルケミスト。今だに彼を超えるアルケミストは現れていません」

リンスもアルティに続いて話を進める。
「しかもユルジールはこの子を最高傑作と言ったんですよね?」
「そ・・そうだよ」
俺はリンスとアルティの話に押されて狼狽えてしまう。
「ユルジール作のオートマタで有名なのはカブラチュカの破壊神・・カブラチュカの街を1日で滅ぼした怪物です。その時、英雄級冒険者数人を始めとする討伐隊が手も足も出なかったと聞いています。この子はその怪物を上回るオートマタだと彼が言ったんですよね」

「いや・・そんな意味かどうかはわからないよ、ただユルジールさんにとっては彼女は特別なんだよ・・」

彼女がそんな破壊神と同じとは思わないし、だからこそユルジールさんの最高傑作なんだと思う。

「まぁ、そんなとこで突っ立ってねえで、こっち来て一杯やりな」
ポーズのそんな声かけに、カリスは戸惑っていた。俺はその戸惑いに背中を押してあげる。
「カリス、君を歓迎してくれるって言ってるよ、行っておいで」
「は・・はぁい、いただきますだぁ」

彼女はそう言ってポーズたちが飲んでいるテーブルへ走り寄る。満面の笑みで微笑みながら飲み物を注いでもらう彼女を見て、俺は少し疑問に思ったのだけど・・・オートマタって飲み食いできるのかな・・しかし、その疑問はリンスが答えてくれた。

「紋次郎様、オートマタが飲み食いできるか心配してるのですか? だとすればご心配無用ですよ。ほとんどのオートマタは食事や飲み物で稼働魔力の生成ができるように作られていますから」

「そうなんだ、よかった」
カリスは飲み食いを楽しむことができる。それはすごく嬉しいことであった。


幽霊屋敷の件は解決したので幽霊はもう出ないと老人に伝えた。すると老人は喜び、お礼にお金をくれると言ってくれたけど、それを丁重にお断りした。特に何かしたわけでもないし、無料で宿にも泊めてもらったのに、これでお礼なんてもらえないよね。

俺たちは、カリスを新しい仲間に加え、湖のリゾート地ムーンランベへと向かう。カリスは紋次郎の馬車に搭乗することになった。馬車が走り出すと、すぐにカリスは紋次郎に質問する。

「つかぬ事お伺いしますだがぁ、私は皆様のところで、何さぁすればいいですかいね、私のできることと言えば、掃除と洗濯くらいですんがぁ・・」
「今はうちは慰安旅行中だから、特にお仕事のことは考えなくて大丈夫だよ。うちに戻ったら少しお手伝いをお願いすると思うけど、今はみんなに打ち解けるように頑張ろうか」

「慰安旅行っつうのがよくわからなねぇが、わかっただぁ、一生懸命頑張るだぁ」

まぁ、何を頑張るかはわからないけど、前向きでいいと思う。

さて、馬車だけど半日も走ると、目的地の湖が遠くの方に見えてきた。途中、その湖が見える丘の高台で、ソォードが作ってくれた弁当を広げ、ピクニック気分で昼食をみんなで食べた。

楽しい昼食の後は、眺めの良いその場所で、ゆったりとティータイム。これには、そういう経験の少ないカリスがすごく感動してこんなことを言っていた。
「私ぃこんなのぉ初めてだぁ、ご飯は美味しいし、お茶は美味しいし、幸せだぁ」

長めの休憩を終わると、馬車に乗り先へと進む、揺れる馬車の覗き窓から目的地の湖が近づいてくるのが見える。湖から流れてくる冷たい風が、水の匂いを運んでくる。その匂いが強くなるほど、目的地への到着が近づいてくるのを実感する。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する

美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」 御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。 ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。 ✳︎不定期更新です。 21/12/17 1巻発売! 22/05/25 2巻発売! コミカライズ決定! 20/11/19 HOTランキング1位 ありがとうございます!

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

処理中です...