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ダンジョンウォー
偉大なるアルケミスト
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おじいさんからいきなりメイドの少女を貰ってくれと言われた紋次郎だが、その意図も意味もわからなかった。なのでそのまま、詳しく話を聞くことにした。
「まず、ワシの名じゃがユルジールと言うものじゃ、もう死んで100年にはなるかのう、そしてこの子はカリス、わしの最高傑作じゃ」
最高傑作・・今おじいさん・・いやユルジールさんはカリスのことを最高傑作と言った・・普通、人をそんな風には呼んだりしないよね・・
「ユルジールさん、最高傑作ってことはつまり・・・」
「そうじゃ、この子は人間ではないんじゃよ、ワシが作ったオートマタじゃよ」
正直驚いた、今、目も前にいるカリスが、人間ではなく人形である事実に・・とてもそんな感じには見えず、普通の人間の少女にしか見えない。俺が驚いているとユルジールさんはさらに話を続ける。
「しかもこの子は普通の自動人形なんかじゃなくてのう・・そうこの子には魂があるんじゃ・・人と同じ魂がのう」
魂がある・・人と同じ魂がある人形・・それは一体何者なんだろうか。
「ユルジールさん・・それは一体・・」
「ははははっ、ちょっと昔話をしても良いかのう、この子を作った話を・・」
俺はここまでの話を聞いて頭の中はいろんなモヤモヤが渦巻き、混乱状態であった。とにかく自分の納得のいく説明が知りたいと思い、その昔話とやらを聞くことにした。そう言って話を催促すると、ユルジールさんは静かに語り始めた。
それは少し切なく、すごく悲しい話だった。
★
山奥にある小さな村の、さらに奥地にある屋敷にユルジールは住んでいた。すでに老人と言っていい年齢に達していたが、彼に家族と呼べるものはなかった。一人その屋敷で研究に明け暮れ、たまに買い出しで村まで降りてくることがあるだけであった。
彼の屋敷のそばには、孤児を預かる施設があったのだが、そこの子供たちは、ユルジールの屋敷をお化け屋敷と認識して、よく肝試しとして活用されていた。たまに屋敷内に入ってくる子供たちにユルジールは気にもとめていなかった。研究の邪魔さえしなければ何の問題もなかったのだ。お化け屋敷の老人が何も言ってこないのをいいことに、子供たちの行動はどんどんエスカレートする。当たり前のように屋敷内に入り、置いてある食べ物を食べたりとやりたい放題でった。
そんな中、一部の子供がユルジールの研究に興味を持ち始めた。その子供たちは彼の研究を遠巻きに見るようになり、それに興味を惹かれていた。その子供の中に、人の子であったカリスがいた。
カリスは熱心にユルジールの研究を見るようになっていた。最初は遠巻きに見ていただけであったが、そのうち恐る恐る、彼から話を聞くようになった。最初は疎ましく思っていたユルジールだが、熱心な彼女にやがて心を開き、研究の話をするようになった。この頃には、他の子供たちは興味を失って、この屋敷に足を運ばなくなっていた。
カリスは毎日にように屋敷に足を運び、やがて彼の手伝いをするようになった。いつも笑顔で接してくる彼女に、気づかないうちにユルジールは癒されていた。彼の親は、ユルジールの幼い時にモンスターに殺され亡くなっていた。自分も孤児だった経験からか、孤児であるカリスに1つの共感みたいなものを感じていたのかもしれない。また、家族との関係をほとんど経験していない二人はその何かの穴をお互いが埋めるように親き関係を築いていくのである。
そんな時、いつものように研究を二人で行っていると、ユルジールは不意にこの時間が失われるのが怖くなった。そしてカリスにこんな話をする。
「カリス、お前ワシの子になるか?」
それを聞いたカリスは最初すごく驚いた顔をしたけど、やがてすごい笑顔でこう返してきた。
「私、おじちゃんの子になってもよかよぉ、おじちゃんの家族になるだよぉ」
ユルジールはその返事がすごく嬉しかった。カリスは先ほどの言葉が嘘でもなんでもない証拠に、帰る間際、こんな話をしていった。
「明日、孤児院で出発の儀式があるだ、それが終わったら院長におじちゃんの子になるって言うだぁ」
出発の儀式、孤児院を出るものを送り出す儀式であろうか、どんなものかはわからないが、今はカリスのその言葉が嬉しかった。ユルジールは明日の日が楽しみであった。どんな言葉をカリスは持ってくるのか待ちどうしかった。
だけど、次の日、カリスは屋敷に来なかった・・
心配になったユルジールは孤児院へと足を運んだ。どんな理由があるにせよ、彼女が屋敷にこない理由が見当たらない。急ぎ足で到着した彼が見たのは、開き放たれた孤児院の扉・・子供たちは・・出荷中であった・・・
そこは孤児院などではなかった。食用で人間の子供を育てている養人場だった。話には聞いたことがあった。貴重な鉱石などと交換で、魔族が子供の死体を買ってくれると・・無造作に積み重なった子供たちの死体、それを無表情で運ぶ大人たち・・その死体の中にカリスを見つけユルジールは我を失う。
アルケミストの多くは優秀な魔導士でもある。ユルジールは強力な魔法でそんな悪党を次々と殺していった。すべての者を殺すと、カリスの死体を抱え、屋敷へと戻った。加護を受けてないカリスは生き返らせることができない。しかし、アルケミストである自分ならもしかしたら・・それは禁断の秘術であった。
すぐに蘇生を開始する。今までの知識と経験をフルに活用して、それは行われた。しかし、蘇生時にカリスの肉体は砂と崩れる。もはや肉体の蘇生は不可能と判断したユルジールは、その魂だけを救うことを考えた。そして再生した魂を入れる器を作り、その中へカリスを移植した。
オートマタに入れられた魂は幸いにも定着できた。大部分の記憶の消失と、少しの思考力の減少が代償となった。それでもカリスは、1つの蘇生の形の成功例と言えるであろう。
「まず、ワシの名じゃがユルジールと言うものじゃ、もう死んで100年にはなるかのう、そしてこの子はカリス、わしの最高傑作じゃ」
最高傑作・・今おじいさん・・いやユルジールさんはカリスのことを最高傑作と言った・・普通、人をそんな風には呼んだりしないよね・・
「ユルジールさん、最高傑作ってことはつまり・・・」
「そうじゃ、この子は人間ではないんじゃよ、ワシが作ったオートマタじゃよ」
正直驚いた、今、目も前にいるカリスが、人間ではなく人形である事実に・・とてもそんな感じには見えず、普通の人間の少女にしか見えない。俺が驚いているとユルジールさんはさらに話を続ける。
「しかもこの子は普通の自動人形なんかじゃなくてのう・・そうこの子には魂があるんじゃ・・人と同じ魂がのう」
魂がある・・人と同じ魂がある人形・・それは一体何者なんだろうか。
「ユルジールさん・・それは一体・・」
「ははははっ、ちょっと昔話をしても良いかのう、この子を作った話を・・」
俺はここまでの話を聞いて頭の中はいろんなモヤモヤが渦巻き、混乱状態であった。とにかく自分の納得のいく説明が知りたいと思い、その昔話とやらを聞くことにした。そう言って話を催促すると、ユルジールさんは静かに語り始めた。
それは少し切なく、すごく悲しい話だった。
★
山奥にある小さな村の、さらに奥地にある屋敷にユルジールは住んでいた。すでに老人と言っていい年齢に達していたが、彼に家族と呼べるものはなかった。一人その屋敷で研究に明け暮れ、たまに買い出しで村まで降りてくることがあるだけであった。
彼の屋敷のそばには、孤児を預かる施設があったのだが、そこの子供たちは、ユルジールの屋敷をお化け屋敷と認識して、よく肝試しとして活用されていた。たまに屋敷内に入ってくる子供たちにユルジールは気にもとめていなかった。研究の邪魔さえしなければ何の問題もなかったのだ。お化け屋敷の老人が何も言ってこないのをいいことに、子供たちの行動はどんどんエスカレートする。当たり前のように屋敷内に入り、置いてある食べ物を食べたりとやりたい放題でった。
そんな中、一部の子供がユルジールの研究に興味を持ち始めた。その子供たちは彼の研究を遠巻きに見るようになり、それに興味を惹かれていた。その子供の中に、人の子であったカリスがいた。
カリスは熱心にユルジールの研究を見るようになっていた。最初は遠巻きに見ていただけであったが、そのうち恐る恐る、彼から話を聞くようになった。最初は疎ましく思っていたユルジールだが、熱心な彼女にやがて心を開き、研究の話をするようになった。この頃には、他の子供たちは興味を失って、この屋敷に足を運ばなくなっていた。
カリスは毎日にように屋敷に足を運び、やがて彼の手伝いをするようになった。いつも笑顔で接してくる彼女に、気づかないうちにユルジールは癒されていた。彼の親は、ユルジールの幼い時にモンスターに殺され亡くなっていた。自分も孤児だった経験からか、孤児であるカリスに1つの共感みたいなものを感じていたのかもしれない。また、家族との関係をほとんど経験していない二人はその何かの穴をお互いが埋めるように親き関係を築いていくのである。
そんな時、いつものように研究を二人で行っていると、ユルジールは不意にこの時間が失われるのが怖くなった。そしてカリスにこんな話をする。
「カリス、お前ワシの子になるか?」
それを聞いたカリスは最初すごく驚いた顔をしたけど、やがてすごい笑顔でこう返してきた。
「私、おじちゃんの子になってもよかよぉ、おじちゃんの家族になるだよぉ」
ユルジールはその返事がすごく嬉しかった。カリスは先ほどの言葉が嘘でもなんでもない証拠に、帰る間際、こんな話をしていった。
「明日、孤児院で出発の儀式があるだ、それが終わったら院長におじちゃんの子になるって言うだぁ」
出発の儀式、孤児院を出るものを送り出す儀式であろうか、どんなものかはわからないが、今はカリスのその言葉が嬉しかった。ユルジールは明日の日が楽しみであった。どんな言葉をカリスは持ってくるのか待ちどうしかった。
だけど、次の日、カリスは屋敷に来なかった・・
心配になったユルジールは孤児院へと足を運んだ。どんな理由があるにせよ、彼女が屋敷にこない理由が見当たらない。急ぎ足で到着した彼が見たのは、開き放たれた孤児院の扉・・子供たちは・・出荷中であった・・・
そこは孤児院などではなかった。食用で人間の子供を育てている養人場だった。話には聞いたことがあった。貴重な鉱石などと交換で、魔族が子供の死体を買ってくれると・・無造作に積み重なった子供たちの死体、それを無表情で運ぶ大人たち・・その死体の中にカリスを見つけユルジールは我を失う。
アルケミストの多くは優秀な魔導士でもある。ユルジールは強力な魔法でそんな悪党を次々と殺していった。すべての者を殺すと、カリスの死体を抱え、屋敷へと戻った。加護を受けてないカリスは生き返らせることができない。しかし、アルケミストである自分ならもしかしたら・・それは禁断の秘術であった。
すぐに蘇生を開始する。今までの知識と経験をフルに活用して、それは行われた。しかし、蘇生時にカリスの肉体は砂と崩れる。もはや肉体の蘇生は不可能と判断したユルジールは、その魂だけを救うことを考えた。そして再生した魂を入れる器を作り、その中へカリスを移植した。
オートマタに入れられた魂は幸いにも定着できた。大部分の記憶の消失と、少しの思考力の減少が代償となった。それでもカリスは、1つの蘇生の形の成功例と言えるであろう。
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