80 / 200
ダンジョンウォー
ウィルオウィスプ
しおりを挟む
言霊宝玉からの報告を聞いて、紋次郎は固まっていた。
「アラクネが殺られた・・・」
リリスが今回の戦いにと召喚してくれた眷属である彼女には、召喚された時に会っていた。
「彼女はよくやってくれたよ、かなりの時間を稼いでくれた」
「生き返らせられるんだよね?」
「リリスなら蘇生できるみたいだから安心していいよ」
「そうか、よかった。それで戦況はどうなってるのかな」
「敵の残りのダンジョンは5つだね、もう少しでデナトスのパーティーが攻略が終わるみたいだから後4つ、1パーティーで1つ攻略すればこちらの勝ちだから悪くないと思うよ、ただ・・・それまでリュヴァとグワドンに耐えてもらう必要があるけどね」
幼いリュヴァに負担をかけるのは忍びない、だけど彼女の力に期待するしかないこの状況に、紋次郎は自分の不甲斐なさを痛感していた。しかし、今やれるのは敵のダンジョンを少しでも早く攻略することだけである。
★
「メイル、プロテクションをかけてくれ!」
「わかったよ、任せて」
「デナトス、援護を頼む!」
「了解よ」
プロテクションで守りを固めたミュラーナは敵の集団に突入する。デナトスは攻撃魔法でそれを援護した。魔波動の力で大幅にアップした攻撃力とスピードで、敵を圧倒するミュラーナ。
「あらかた片付いたわね」
「そうだな、後はボスだけかな」
「ちょっと待って・・何か変な感じがする・・・」
メイルは何かの気配を感じたのか、周りをキョロキョロ見渡す。広い空間の異変に、ランティークの冒険者の一人である、重騎士のバルトが気がついた。
「見てください、あそこに変な空間の歪みがあります」
「何あれ・・・」
空気の歪みがある場所から何やら幾つもの発光体が生み出されてくる。大量に出てくるその物体は、空一面に広がり、その光は周りを異様な光源で照らし出していた。
「ウィルオウィスプ・・・なんて数だよ・・」
1体でも並の冒険者では脅威となるその発光体。それが今空中に何百と浮遊していた。発光体同士にしか分からない合図があったのか、楔を切ったように一斉に攻撃してきた。メイルは急いで防御フィールドを展開する。メイルを中心に、青紫の魔法の障壁が現れる。
「みんな! この中に入って!」
メイルの声に従い、パーティーのメンバーが次々とそこへ飛び込んできた。しかし、ランティークの冒険者の二人が逃げ遅れる。発光体から稲光が走り、その冒険者たちに直撃する。何十という攻撃を受けて、炭のように変色して動かなくなる。
「くっ、間に合わなかったか・・・」
ダンジョンウォー中はルール上、蘇生は出来ない。ただでさえ人数の少ない紋次郎側にとっては、痛い犠牲であった。
メイルのフィールドとウィルオウィスプがぶつかり、激しい火花が散る。数百の発光体が次々に休みなくぶつかってくる。それを障壁が弾きはするが、ぶつかるたびにその力が弱まってくるのがわかる。
「メイル、どれくらい持ちそう?」
「3分くらいだと思う」
「ミュラーナ、あなたの魔波動は、エレメンタル生命体にも有効?」
「もちろん! 万能が売りだからね、なんでもござれだよ」
「では、私がとっておきの魔法を使ってウィルオウィスプの大半を殲滅するわ。でもこれを使うと魔力が枯渇してしばらく役に立たなくなるので、残りの敵をお願いします」
デナトスはそう言うと、長い詠唱に入った。それは彼女の使う魔法では最強の威力を誇るものであった。全ての魔力を絞り出す、本来では使うことの出来ない高レベル、高魔力の攻撃魔法である為に、一時的に己の魔力を暴走させて爆発させる。それは体にも心にも負担のかかる諸刃の剣であった。
「アイシクル・ビックバン!!」
ウィルオウィスプの群れの中心に、白い光の球体が現れる、それが膨らんでいき、一気に弾ける。強烈な冷気と、大地を震わすほどの爆風が巻き起こる。その魔法に巻き込まれたウィルオウィスプが凍りつきながら粉々に粉砕される。
その攻撃で約八割ほどのウィルオウィスプを破壊した。しかし、デナトスは全ての力を使いきり、その場に崩れ落ちる。
メイルのフィールドがもう切れそうなのを見て、ミュラーナがバルトたちに声をかける。
「お前たち、デナトスとメイルを守れ!」
そう言って自分は魔波動を発動して、ウィルオウィスプの群れに突っ込んでいく。
ミュラーナは自ら旋風となり、残ったウィルオウィスプを次々と撃破していく。通常の武器では触れることも出来ないエレメンタル生命体の体を、魔波動の力を秘めた双子鬼は、果物を切るかのように両断していく。
デナトスとメイルを守るバルトたちが数体倒したが、残りは全てミュラーナが片付けた。このダンジョンのボスが大量のウィルオウィスプというのは予想外であったがなんとか攻略できた。しかし、思ったより時間がかかってしまったので、急ぎ次のダンジョンへと向かうのであった。
「アラクネが殺られた・・・」
リリスが今回の戦いにと召喚してくれた眷属である彼女には、召喚された時に会っていた。
「彼女はよくやってくれたよ、かなりの時間を稼いでくれた」
「生き返らせられるんだよね?」
「リリスなら蘇生できるみたいだから安心していいよ」
「そうか、よかった。それで戦況はどうなってるのかな」
「敵の残りのダンジョンは5つだね、もう少しでデナトスのパーティーが攻略が終わるみたいだから後4つ、1パーティーで1つ攻略すればこちらの勝ちだから悪くないと思うよ、ただ・・・それまでリュヴァとグワドンに耐えてもらう必要があるけどね」
幼いリュヴァに負担をかけるのは忍びない、だけど彼女の力に期待するしかないこの状況に、紋次郎は自分の不甲斐なさを痛感していた。しかし、今やれるのは敵のダンジョンを少しでも早く攻略することだけである。
★
「メイル、プロテクションをかけてくれ!」
「わかったよ、任せて」
「デナトス、援護を頼む!」
「了解よ」
プロテクションで守りを固めたミュラーナは敵の集団に突入する。デナトスは攻撃魔法でそれを援護した。魔波動の力で大幅にアップした攻撃力とスピードで、敵を圧倒するミュラーナ。
「あらかた片付いたわね」
「そうだな、後はボスだけかな」
「ちょっと待って・・何か変な感じがする・・・」
メイルは何かの気配を感じたのか、周りをキョロキョロ見渡す。広い空間の異変に、ランティークの冒険者の一人である、重騎士のバルトが気がついた。
「見てください、あそこに変な空間の歪みがあります」
「何あれ・・・」
空気の歪みがある場所から何やら幾つもの発光体が生み出されてくる。大量に出てくるその物体は、空一面に広がり、その光は周りを異様な光源で照らし出していた。
「ウィルオウィスプ・・・なんて数だよ・・」
1体でも並の冒険者では脅威となるその発光体。それが今空中に何百と浮遊していた。発光体同士にしか分からない合図があったのか、楔を切ったように一斉に攻撃してきた。メイルは急いで防御フィールドを展開する。メイルを中心に、青紫の魔法の障壁が現れる。
「みんな! この中に入って!」
メイルの声に従い、パーティーのメンバーが次々とそこへ飛び込んできた。しかし、ランティークの冒険者の二人が逃げ遅れる。発光体から稲光が走り、その冒険者たちに直撃する。何十という攻撃を受けて、炭のように変色して動かなくなる。
「くっ、間に合わなかったか・・・」
ダンジョンウォー中はルール上、蘇生は出来ない。ただでさえ人数の少ない紋次郎側にとっては、痛い犠牲であった。
メイルのフィールドとウィルオウィスプがぶつかり、激しい火花が散る。数百の発光体が次々に休みなくぶつかってくる。それを障壁が弾きはするが、ぶつかるたびにその力が弱まってくるのがわかる。
「メイル、どれくらい持ちそう?」
「3分くらいだと思う」
「ミュラーナ、あなたの魔波動は、エレメンタル生命体にも有効?」
「もちろん! 万能が売りだからね、なんでもござれだよ」
「では、私がとっておきの魔法を使ってウィルオウィスプの大半を殲滅するわ。でもこれを使うと魔力が枯渇してしばらく役に立たなくなるので、残りの敵をお願いします」
デナトスはそう言うと、長い詠唱に入った。それは彼女の使う魔法では最強の威力を誇るものであった。全ての魔力を絞り出す、本来では使うことの出来ない高レベル、高魔力の攻撃魔法である為に、一時的に己の魔力を暴走させて爆発させる。それは体にも心にも負担のかかる諸刃の剣であった。
「アイシクル・ビックバン!!」
ウィルオウィスプの群れの中心に、白い光の球体が現れる、それが膨らんでいき、一気に弾ける。強烈な冷気と、大地を震わすほどの爆風が巻き起こる。その魔法に巻き込まれたウィルオウィスプが凍りつきながら粉々に粉砕される。
その攻撃で約八割ほどのウィルオウィスプを破壊した。しかし、デナトスは全ての力を使いきり、その場に崩れ落ちる。
メイルのフィールドがもう切れそうなのを見て、ミュラーナがバルトたちに声をかける。
「お前たち、デナトスとメイルを守れ!」
そう言って自分は魔波動を発動して、ウィルオウィスプの群れに突っ込んでいく。
ミュラーナは自ら旋風となり、残ったウィルオウィスプを次々と撃破していく。通常の武器では触れることも出来ないエレメンタル生命体の体を、魔波動の力を秘めた双子鬼は、果物を切るかのように両断していく。
デナトスとメイルを守るバルトたちが数体倒したが、残りは全てミュラーナが片付けた。このダンジョンのボスが大量のウィルオウィスプというのは予想外であったがなんとか攻略できた。しかし、思ったより時間がかかってしまったので、急ぎ次のダンジョンへと向かうのであった。
0
お気に入りに追加
179
あなたにおすすめの小説
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。
狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。
街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。
彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する
美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」
御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。
ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。
✳︎不定期更新です。
21/12/17 1巻発売!
22/05/25 2巻発売!
コミカライズ決定!
20/11/19 HOTランキング1位
ありがとうございます!
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる