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迷宮主誕生

激闘

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巨大な火球が俺たちに襲いかかる。ミュラーナはその火球を双剣で一刀両断する。普通の剣では魔法攻撃を真っ二つにするなんて、そんな芸当はできない。ミュラーナの双剣はラグリュナ級の名剣であった。右に持つのは赤鬼、炎の力を持ち、オリハルコンをも両断する攻撃力を持つ。左に持つのは青鬼、氷結の力を持ち、魔力すら凍らす、絶対零度の魔剣であった。この二振りで双剣、双子鬼と呼ばれている。

ミュラーナはアンチ・マジック・シェルを唱え、魔法防御力を上げる。紋次郎はリュヴァを守りながら、閃光丸改を構え、敵の攻撃に備えていた。

このまま囲まれた状態では形勢は圧倒的に不利である。ミュラーナは少しずつ移動して包囲のされないように位置を調整する。しかし、そんな行動も英雄級が動き出したことで意味をなさなくなってしまった。

天眼のアゾルテ・・真紅の重鎧である、赤竜の鎧を身にまとい。巨大な魔剣、グリュナブルを振り回し、ミュラーナへと襲いかかる。重い両手剣の一撃は、双剣で受けたミュラーナの体を地面に少し沈ます。強烈な攻撃に体のすべてが痺れるような感覚になる。魔波動を発動して、そのアゾルテの剣を弾き返す。しかし、アゾルテは体をひねって、すぐに次の攻撃を叩き込んでくる。それは紙一重で避けて、アゾルテの体に双剣の攻撃を叩き込む。オリハルコンをも切り裂く赤鬼の刃は、赤竜の鎧を切り裂く。しかし、その刃はアゾルテの体には届いていなかった。

さすがに、一進一退の攻防を繰り広げるミュラーナに、紋次郎のフォローはできなかった。敵の冒険者が3人、紋次郎とリュヴァを殺すために近づいてくる。紋次郎は閃光丸改の射程まで近づいた冒険者たちに、それを振り抜いた。

光の閃光は、冒険者の一人を切り裂き焼き尽くす。しかし、残りの二人はその攻撃を避け、両サイドから、紋次郎たちに斬りかかる。その攻撃が目の前に迫ったその時、リュヴァは静かに言葉を発した。人間には理解できないその詠唱は、龍の力の発動を意味していた。敵の前に丸い球体が出現する、それは炎とも吹雪とも言えない、虹色のブレスを吹き出した。それを受けた二人の冒険者は、体を凍らせながら、炎によって焼き尽くされる。

「リュヴァ、今の君がやったのかい?」
「・・・そう。紋次郎守る・・」
「俺が君を守らないといけないのにね・・ありがとうリュヴァ」
そう言った俺の言葉を聞くと、リュヴァは顔を赤くして照れていた。

リュヴァの不思議な攻撃を見ていたベリヒトは困惑していた。ミュラーナに、あんな仲間がいたのは計算外であった。

「これは早めにカタをつけた方がいいな」
ベリヒトはそう言うと、一番厄介な敵である、アマゾネスの女に向かって、最大級の魔法の詠唱に入った。それは超級の雷撃魔法であった。
「エクスキュージョン・プラズマ・ブラスト!」
一筋の閃光が、まっすぐミュラーナに向かって伸びていく。それはまさに死の光であった。アゾルテの攻撃を受けていた絶妙のタイミングだったこともあり、ミュラーナにそれを避けることはできなかった。背中にまともに受け、落雷の何倍もの威力の攻撃が、ミュラーナに直撃した。それはアンチ・マジック・シェルの加護をもってしても防ぎきれるものではなかった。想像を絶するダメージを受けて、その場に崩れ落ちる。

身動きのとらなくなったミュラーナに、とどめを刺す為にアゾルテが剣を振り上げる。
「ミュラーナ!」
自分の力ではそれを止めることはできないかもしれない、でも紋次郎は動かずにはいられなかった。魔導器の飛脚の力で、最大限加速した。まだ、距離があるが、高くジャンプしたそこから閃光丸改を振りかざす。光の閃光が、アゾルテに向かって襲いかかった。その攻撃はアゾルテに直撃するが、巨大な英雄に、閃光丸改の攻撃ではひるませるのがやっとであった。

だが、その少しの隙が大きかった。動きの止まっていたミュラーナは、その隙の間に復活する。ふらつきながらも、魔波動で強化した斬撃で、アゾルテを吹き飛ばす。

「紋次郎・・すまない・・」
「気にしなくていいよ、ミュラーナ。でも・・これはあまり良くない状況だね・・」
状況は最悪だった。敵は包囲しながら少しずつ近づいてきていた。少し離れたところでは、英雄級の二人が、遠距離からこちらを狙っている。いよいよあたいの命をかけて、紋次郎たちを守らなければいけないか・・・ミュラーナがそう覚悟を決めた時、異変は起こった。

ベリヒトは不意に気配を感じた。それは複数人の冒険者のようだった。その気配のする方を見やると、何人かの冒険者がそこに立っていた。

その気配はミュラーナも感じていた。突如現れたパーティーに目線を移す。紋次郎もミュラーナが見ている方向を見る、そこには絶対的な安心感が立っていた。紋次郎はそのパーティーに叫び伝える。

「リンス! みんな、助けて~冒険者狩りだよ! ミュラーナ、もう大丈夫だよ。あれは俺の仲間だ」
確かに希望は生まれた。しかし、英雄級が3人が相手である。五、六人の冒険者の助力で、どこまで戦えるか・・・

「リンス、知った顔が何人かいる。あそこに立ってる魔導士は雷王ベリヒト、その隣がエルダーハンターの風切りのルダナ、そしてあの真紅の鎧を着た大男は天眼のアゾルテだな、英雄級の冒険者が冒険者狩りとは・・世も末だね」
デナトスはそうリンスに伝える。
「そう・・英雄級冒険者・・でもそんなの関係ない・・紋次郎様に危害を及ぼす者は誰も許さない。アルティ、リリス、あなたちはあの魔導士とエルダーハンターをお願い、それ以外は紋次郎様の救出よ」

そう言うとリンスたちは動き出した。

高速で迫ってくる敵に、ベリヒトは得体の知れない恐怖を感じていた。英雄級の自分を恐れさす何か・・・その答えは出なかったが、最大級の魔法で返答することにした。それはベリヒトの最強の攻撃魔法であった。雷撃魔法が得意な彼には、絶対的な威力を持つ雷撃魔法を一つ持っていた。テンペスト・スプリームと呼ばれる魔法で、あのエルティカの炎獣を一撃で仕留めた至高の法撃であった。この魔法を持っているが故に、彼は雷王と呼ばれている。
「テンペスト・スプリーム!」
数十の稲妻の光が、対象に向かって伸びていく。それはまさに地獄界の雷雨を想像させる、絶望的な光景であった。

ベリヒトのその魔法の詠唱を見て、アルティはすぐに追撃の魔法を唱える。
「テンペスト・アルティメット!」

アルティは雷撃魔法が得意ではなかった。しかし、雷王なんてふざけた呼び名を持つ魔導士に、自分の犯した罪を思い知らせるために、あえて雷撃魔法を選択した。

空中で二つの雷撃が衝突する。激しい稲光が渦巻くように爆発する。最初は拮抗していた二つの魔法は、徐々に雷王の呼び名の方へと押されていく。それを見てその雷王は驚愕する。雷王である自分の魔法が、雷撃魔法の打ち合いで押し負けている・・それは到底承服できるものではなかった。

英雄級のベリヒトのそのレベルは178、驚異的なレベルではあるが、相手が悪かった。アルティ・ルソッティ・・全能の秘神・・そう呼ばれる彼女のレベルは217、歴史上、17人しかいないレベル200越えの冒険者、それは伝説級冒険者と呼ばれる、まさに名の通り、伝説の存在であった。
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