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迷宮主誕生

迷宮の罠

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アダータイの天然ダンジョン5階層。ここまで、先行している大規模パーティーのおかげか、戦闘らしいものは一度だけ、それもデナトスとアルティの攻撃魔法で瞬殺された。なので今の所、大変危険なダンジョンの片鱗も見せられていなかった。そんな理由もあり、予定より早く進んでいたので、本日はひとまずこの階層でキャンプをすることにした。

岩がゴロゴロと転がっているエリアで、テントを張り、火を起こした。今回の旅では料理の得意なソォードが同行しているので食事の心配はなさそうである。

「ちょっとソォード! 鍋にその果実を入れるの?」
「この果実の甘みと酸味は隠し味として最高ですからね」
「合うの? 本当に合うの?」
「大丈夫ですよ信じてください」

ソォードの少し怖い鍋だが、これが思いの外美味しかった。確かに果実の甘みと酸味が絶妙なアクセントとなっていて、不思議な味わいを出していた。食事でお腹いっぱいになると、すぐに休む準備をする。ダンジョン内のキャンプでは就寝時には、見張りを交代で行うのが基本で、2時間ごとの交代で、二人が見張りについた。最初の見張りは、俺とアルティであった。

「みんな寝るの早いな~」
「ま~それも冒険者の技能ですからね、寝れる時にいつでもどこでも寝れるってのは」
「そういえば、アルティとこうやって二人っきりで話すのってあまりないよね」
「そうですね、紋次郎さんの周りにはいつも誰かいますから」
「そういえばアルティって日本人なんだよね、どこに住んでたの?」
「東京ですよ、東京の杉並区です」
「なっ・・俺も杉並区だよ」
「そうなんですか!」

その後、俺たちは地元の話で盛り上がった。そういえば、話をしていて気がついたんだけど、アルティはこっちへ来て500年が経つそうだけど、どうやら元の世界の時間では、俺と大差のないことがわかった。そういえばそうだよね、元の世界で500年前ってなると戦国時代とかだから、セーラー服とか着てるしちょっとおかしいとは思ったんだ。

十分に休みを取った俺たちは、すぐに冒険を再開する。昨日と同じように順調に階層を降りていく、しかし、問題なく進められたのは7階層までであった。そこで俺たちは迷路のような複雑なフロアーに迷い込んでしまった。

「そこ見て、また同じ場所に来たわよ」
「ソォード、マッピングちゃんとしてる?」
「いや・・私、こういうのは苦手なのですよ・・」
このパーティー大丈夫だろうか、マッピングが苦手な人間ばかりのようで、この迷路を抜けれるか心配になってきた。

そんな感じで迷路をウロウロしていると、小さな部屋へと迷い込んだ。そこの部屋の中央には小さな宝箱が置いてあった。一番最初に部屋に入った俺は、何も考えずにその宝箱を開けてみた。

「紋次郎様!! ダメです!」
「え?」
リンスの警告も時すでに遅し・・・・一瞬で俺の視界が歪む・・そして次の瞬間、俺は先ほどいた小部屋とは全く違った場所に立っていた。

「・・・テレポートの罠・・・」
そう呟くリンスの顔は蒼白になっていた。トラップテレポート・・それは宝箱の罠の中でも特に厄介な代物だった。
「本当に紋次郎はあれだけ注意したのに・・何考えてんのよ・・」
「リンスさん、絶対探索!」
いつものようにリンスは絶対探索で紋次郎の居場所を調べる。
「・・・200m下の階層・・・北西200m」
「このダンジョンは1階層が深いから、2~3階層下かしら」
「とにかくすぐに行きましょう、さすがに危険すぎます」

アルティの声で、皆、すぐに動きだす、その顔には焦りの表情が見えていた。


絶体絶命とはこういうことを言うのだと思う。俺の目の前には、牙をむき出し、その口からはよだれを垂らして、凶悪な顔で俺を見つめるドラゴンが立っていた。

ドラゴンの口元の様子が何やらおかしい・・ぷすぷすとまばらに火が飛び出している。これはもしかして火を噴き出すんじゃ・・・その予想は的中する。大きく上に首を振ったドラゴンが、そのまま俺に向かって炎のブレスを吹いてきた。

俺は電光石火で逃げ出す。後ろを少しそのブレスで焦がされ、無茶苦茶熱かったけどそのまま逃走して、岩陰に逃げ込んだ。

「マジでやばい・・・」
紋次郎は、入った岩陰の横に、人がなんとか中腰で通れるくらいの穴があるのを見つける。そこへ入り込めばドラゴンからは逃げれそうであった。迷ってる暇はないので、そこへと飛び込む。

腰が痛くなってくるくらいの時間、中腰で奥に進むと、少し広い空間へと出た。そして周りの様子を見ようとキョロキョロと見渡すと、少し先の、突起した岩の陰に、横たわった人影があった。紋次郎はすぐにそこへ駆け寄る。見ると背中に矢の刺さった冒険者が倒れていた。ボロボロのその姿は痛々しい・・紋次郎はすぐにバックからポーションを幾つか取り出した。回復の魔法の使えない紋次郎は、いざという時のために、ポーションを10個ほど持たされていたのが幸いした。

「まず・・矢を抜かないと・・」
紋次郎は矢をぐっと握ると、勢いよく引き抜いた。その瞬間、冒険者から苦痛の悲鳴が出る。すぐにポーションを傷口にかける。さすがメイル特製のハイポーションは効果が抜群で、傷口をみるみるふさいでいく。それでも冒険者は回復していないようなので、他の箇所の傷にもポーションを使用しようと、冒険者の体を起こした時に、この人が女性であることに気がついた。髪がショートカットだったのでそれまで気がつかなった。

ちょっと悪いとは思ったが、傷口を見るのに装備や衣服が邪魔だったので少し脱がさしてもらった。下着姿になった彼女に、ポーションを三本ほど使って身体中を癒す。しかし、ほとんど傷は癒えたようなのに、彼女は苦しいそうであった。

「もしかして・・毒かな・・」
矢に毒が塗ってあった可能性を考え、俺はポイズンポーションをバックから取り出す。それを彼女に飲まそうとするのだけど、意識を失っている彼女にうまく飲ませることができない。これはもうあの方法しかないか・・俺は自分の口にそのポーションを含むと、彼女の口に直接流し込んだ。

3度目の口移しでポイズンポーションを飲ましたその時、彼女の意識が回復した。


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