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迷宮主誕生
冒険者の災難
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紋次郎のダンジョン入り口に、4人の冒険者の姿があった。
「とうとう見つけたぜこの野郎! ベナーここで間違いないんだろうな~」
「ちゃんと調べたよイグニス。例のダンジョンのオーナーの、新しいダンジョンだ」
「うぉー!! 燃えてきたぜ! いくぜおめ~ら!」
「はいはい」
ダンジョンに入った四人は、以前の紋次郎のダンジョンとの違いに、素直に驚いていた。
「なんで~いやにまともなダンジョンになってんな~」
「アンデット系のモンスターが豊富だな、リュラー、今日は出番が多そうだぞ」
「やだな・・別にアンデットが好きってわけじゃないのよ私」
中級冒険者で構成されるこのパーティーにとって、途中のスケルトンやゾンビなど物の数ではなかった。すぐに中ボスが待機している、一階の最深部へと到達した。しかし、彼らは知らない。ここに待ち構えているモンスターは、いつもいるレベル40のボークラッシャーなのではなく、恐怖の腐龍、ドラゴンゾンビが三体も待ち構えていたことに。
「何この匂い・・」
「ぐっ・・死臭か!」
「死臭だけじゃない・・・何だこの禍々しい瘴気は・・・」
それは中級冒険者など、肌に触れるだけで腐食させる、強力な闇の瘴気。イグニス達がそれに気がついた時にはもう遅かった。瘴気に触れたその体は、すべての反応が鈍くなり、思考も鈍る。すでに逃げ出すことすらできなくなっていた。
「う・・嘘だろう・・こんな・・・・・」
腐龍は一斉に淀れた口を大きく開き、そして・その口から吐き出されるのは、冒険者達に恐れられる、死のブレス・・ミアズマ・デスブレス。それをまともに受けた彼らは、死を感じる間もなく、体がボロボロとひび割れ、そして完成したパズルを逆さまにひっくり返したように、地に崩れ落ちた。
★
「早速、どこぞのパーティーがドラゴンゾンビの餌食になっとるぞ。アルティ、一緒に冒険者の回収を頼めるかい、さすがにあんなおっかない部屋に一人じゃ行けん」
「わかりました」
「はぁ~」
アスターシアはため息をついて、先ほどクエストの為に出かけて行った紋次郎の身を案じていた。本当は一緒に行きたかったけど、笑顔で留守番頼むね、とお願いされれば、それを聞かないわけにはいかなかった。
「妖精さん。お兄ちゃん大丈夫かな~」
そう無邪気に聞いてくる、メイルにアスターシアはなるべく心を悟られないように答える。
「ま~大丈夫じゃないですの」
「そうか・・でも前の冒険はメイルも一緒に行ってたからそんなに感じなかったけど、やっぱり離れると心配になるね」
お昼ご飯を食べたばかりで、ゆったり午後の時間を満喫していた聖なる神獣は、そんな二人のやり取りを聞いて、ここにはいない人間の友を誇りに思っていた。他者に身を案じられる者は、それだけでその精神の美しさを示している。自分も彼のそばにいたいと思っていたが、また別の役割があることを理解していた。
★
ミドラクドはアルマームの北にある小さな町であった。規模的にはアルマームの10分の1程度だろうか、こじんまりとしているが、静かで過ごしやすい町のようである。紋次郎たちは、町の南にある、馬車の乗り合い所へ来ていた。ここから依頼者の家は徒歩で30分ほどであろうか、陽がまだある時間なので、そのまま依頼者宅へと向かう。
「そこそこ裕福な家のようですね」
到着したその家は、一般的な水準から考えても、かなり裕福な家柄のように思える、一言で言うなら豪邸と呼べるものであった。
紋次郎たちは早速、家の前にいた門番に声をかけて事情を説明する。すると早速、家の中へと通された。
「皆様、よくお出でくださいました。当家の主のリズーと申します」
それは若い女性であった。年の頃では18歳くらいだろうか、主と言う年齢には見えないのだけど・・・
「依頼内容をお聞かせ願いたいのですがよろしいですか」
「はい。もちろんです」
そう言うと、リズーは立ち上がり、窓の方へと歩いていく、そして窓の外を見てこう話し始めた。
「あの塔をごらんください。あれはこの辺では嘆きの塔と呼ばれているものです。実はあの塔から毎夜怪しげな声が聞こえるのです。その声の元を調べて欲しいのです」
「怪しげな声?」
「はい。叫び声のような・・鳴き声のような・・・」
「それはいつ頃から聞こえ始めたんですか?」
リンスの問いに、リズーは少し曇った顔で、答える。
「い・・1年ほど前でしょうか・・」
ポーズはその不自然な態度に違和感を感じていた。この女何かを隠している・・そう感じ、少し揺さぶることにした。
「俺からも少し聞いていいか」
「はい。何ででしょうか」
「その一年前に何か変わったことはなかったか? 例えばこの家に大きな変化があったとか・・・」
「あ・・」
リズーは明らかに動揺する。
「私の父・・前当主が亡くなったのが丁度1年前になります・・」
「なるほどね・・・」
ポーズはそれを聞くと出されていた茶を一口すすった。
「ポーズ・・何かわかったの?」
ポーズのわかったような態度が気になり、紋次郎は小声で確認する。
「いや・・何もわかんねーよ」
「じゃー何でそんな態度なのよ・・」
リンスがそうポーズに突っ込む。
「何かそれっぽいだろう?」
リンスが本気で呆れている。多分後で折檻されるんじゃないだろうか。
「お部屋を用意いたしますので、本日は当家でお泊りください」
「ありがとうございます。お言葉に甘えさせていただきます」
毎夜、塔から聞こえる声とやらを確認する為にも、今日はここに泊めてもらった方が都合が良かった。それに宿賃も浮くし一石二鳥である。
そして深夜、俺たちは嘆きの塔の声を聞くことになるんだけど・・それは想像を絶する得体の知れない何かだった・・・・
「とうとう見つけたぜこの野郎! ベナーここで間違いないんだろうな~」
「ちゃんと調べたよイグニス。例のダンジョンのオーナーの、新しいダンジョンだ」
「うぉー!! 燃えてきたぜ! いくぜおめ~ら!」
「はいはい」
ダンジョンに入った四人は、以前の紋次郎のダンジョンとの違いに、素直に驚いていた。
「なんで~いやにまともなダンジョンになってんな~」
「アンデット系のモンスターが豊富だな、リュラー、今日は出番が多そうだぞ」
「やだな・・別にアンデットが好きってわけじゃないのよ私」
中級冒険者で構成されるこのパーティーにとって、途中のスケルトンやゾンビなど物の数ではなかった。すぐに中ボスが待機している、一階の最深部へと到達した。しかし、彼らは知らない。ここに待ち構えているモンスターは、いつもいるレベル40のボークラッシャーなのではなく、恐怖の腐龍、ドラゴンゾンビが三体も待ち構えていたことに。
「何この匂い・・」
「ぐっ・・死臭か!」
「死臭だけじゃない・・・何だこの禍々しい瘴気は・・・」
それは中級冒険者など、肌に触れるだけで腐食させる、強力な闇の瘴気。イグニス達がそれに気がついた時にはもう遅かった。瘴気に触れたその体は、すべての反応が鈍くなり、思考も鈍る。すでに逃げ出すことすらできなくなっていた。
「う・・嘘だろう・・こんな・・・・・」
腐龍は一斉に淀れた口を大きく開き、そして・その口から吐き出されるのは、冒険者達に恐れられる、死のブレス・・ミアズマ・デスブレス。それをまともに受けた彼らは、死を感じる間もなく、体がボロボロとひび割れ、そして完成したパズルを逆さまにひっくり返したように、地に崩れ落ちた。
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「早速、どこぞのパーティーがドラゴンゾンビの餌食になっとるぞ。アルティ、一緒に冒険者の回収を頼めるかい、さすがにあんなおっかない部屋に一人じゃ行けん」
「わかりました」
「はぁ~」
アスターシアはため息をついて、先ほどクエストの為に出かけて行った紋次郎の身を案じていた。本当は一緒に行きたかったけど、笑顔で留守番頼むね、とお願いされれば、それを聞かないわけにはいかなかった。
「妖精さん。お兄ちゃん大丈夫かな~」
そう無邪気に聞いてくる、メイルにアスターシアはなるべく心を悟られないように答える。
「ま~大丈夫じゃないですの」
「そうか・・でも前の冒険はメイルも一緒に行ってたからそんなに感じなかったけど、やっぱり離れると心配になるね」
お昼ご飯を食べたばかりで、ゆったり午後の時間を満喫していた聖なる神獣は、そんな二人のやり取りを聞いて、ここにはいない人間の友を誇りに思っていた。他者に身を案じられる者は、それだけでその精神の美しさを示している。自分も彼のそばにいたいと思っていたが、また別の役割があることを理解していた。
★
ミドラクドはアルマームの北にある小さな町であった。規模的にはアルマームの10分の1程度だろうか、こじんまりとしているが、静かで過ごしやすい町のようである。紋次郎たちは、町の南にある、馬車の乗り合い所へ来ていた。ここから依頼者の家は徒歩で30分ほどであろうか、陽がまだある時間なので、そのまま依頼者宅へと向かう。
「そこそこ裕福な家のようですね」
到着したその家は、一般的な水準から考えても、かなり裕福な家柄のように思える、一言で言うなら豪邸と呼べるものであった。
紋次郎たちは早速、家の前にいた門番に声をかけて事情を説明する。すると早速、家の中へと通された。
「皆様、よくお出でくださいました。当家の主のリズーと申します」
それは若い女性であった。年の頃では18歳くらいだろうか、主と言う年齢には見えないのだけど・・・
「依頼内容をお聞かせ願いたいのですがよろしいですか」
「はい。もちろんです」
そう言うと、リズーは立ち上がり、窓の方へと歩いていく、そして窓の外を見てこう話し始めた。
「あの塔をごらんください。あれはこの辺では嘆きの塔と呼ばれているものです。実はあの塔から毎夜怪しげな声が聞こえるのです。その声の元を調べて欲しいのです」
「怪しげな声?」
「はい。叫び声のような・・鳴き声のような・・・」
「それはいつ頃から聞こえ始めたんですか?」
リンスの問いに、リズーは少し曇った顔で、答える。
「い・・1年ほど前でしょうか・・」
ポーズはその不自然な態度に違和感を感じていた。この女何かを隠している・・そう感じ、少し揺さぶることにした。
「俺からも少し聞いていいか」
「はい。何ででしょうか」
「その一年前に何か変わったことはなかったか? 例えばこの家に大きな変化があったとか・・・」
「あ・・」
リズーは明らかに動揺する。
「私の父・・前当主が亡くなったのが丁度1年前になります・・」
「なるほどね・・・」
ポーズはそれを聞くと出されていた茶を一口すすった。
「ポーズ・・何かわかったの?」
ポーズのわかったような態度が気になり、紋次郎は小声で確認する。
「いや・・何もわかんねーよ」
「じゃー何でそんな態度なのよ・・」
リンスがそうポーズに突っ込む。
「何かそれっぽいだろう?」
リンスが本気で呆れている。多分後で折檻されるんじゃないだろうか。
「お部屋を用意いたしますので、本日は当家でお泊りください」
「ありがとうございます。お言葉に甘えさせていただきます」
毎夜、塔から聞こえる声とやらを確認する為にも、今日はここに泊めてもらった方が都合が良かった。それに宿賃も浮くし一石二鳥である。
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