ジリ貧迷宮主が教える──ハーレムダンジョンの作り方

RYOMA

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迷宮主誕生

吹雪の結晶石

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冒険者狩りとの戦闘を行った11階層の下、12階層に紋次郎たちはきていた。そこは万年桜のある10階層と同じで、大きな自然フロアーとなっていた。しかし、木々が生え
綺麗な小川が流れている10階層と違い、ここ12階層は寂しい雰囲気を漂わせている。気温は急激に低下して、階層の中心にある湖は厚い氷に覆われていた。

「むちゃくちゃ寒いんだけど・・・」
「こんなの聞いていませんわよ。私は寒いのが苦手なのです」
「ええ若いもんが何言っとるんじゃ。気合じゃ気合、気合でなんとかなる」
「そんな精神論でなんとかできないよ・・・」

リンスはそんなやり取りを聞いて、荷物袋から何やら取り出す。
「紋次郎様、これをお使いください」
それは白銀のマントだった。
「ありがとうリンス、すげー助かるよ」
早速装備してみる。見た目以上に暖かく驚いた。
「紋次郎ちょっとずるいわよ、私も入れなさいよ」
そう言ってアスターシアが首元からマントの中へ入ってきた。俺は自分だけこんなにぬくぬくとして申し訳なく思い、みんなに寒くないか聞いてみた。
「私は温度調整のできる魔法石を持っていますので」
「メイルもそれ持ってる~」
「私もです」
「わしもじゃ」
「そもそも僕は、これくらいの温度では寒さなんて感じない」
すごく気になる答えが多く聞こえたけどどういうことだろ。
「ちょっと待って、何その温度調整できる魔法石って?」
「冒険者で一般的に使われている魔法具のひとつです、ある程度の寒さや暑さを調整してくれる物です」
「ちょっとそれなんかずるくない? メタラギなんか、さっき気合でどうとか言ってたじゃないか!」
「まーワシは若くないからのう」

そもそも一般的に使われているそんな便利アイテムがあるんなら、教えて欲しいものである。俺は今度街に行ったら必ず買おうと心に決めた。

アルティはみんなを凍りついた湖の真ん中に連れてきた。ただでさえ寒いフロアーの中でもそこは特に冷え込んでいて、マントを着ていても、その寒さが伝わって来る。

「この湖の底に、ブフの結晶石が発掘できる岩がありまして、その名も永久氷河岩と言います。このフロアーの異常な寒さは、すべてこの岩から発する冷気によるものなんですよ」
「なるほど・・でもどーやってその岩から発掘すればいいの? 湖は凍ってるし・・」
「この凍った湖は私が魔法で溶かします。その後に、湖を50mほど潜って採掘してくるだけです。それほど難しくはないですね」
それを聞いたリンスは、少し納得のいった表情をして発言する。
「なぜアルティにしかこの場所がわからなかったか理解しました」
「そうなのリンス?」
「はい。この凍った湖を溶かすなんて化け物じみた芸当、並の魔導士では不可能です」
「僕にも簡単にできるけどね」
「いや・・あなたは別格ですから・・」

氷もそうだけど、湖を50m潜って採掘するってのもすごいことだと思うけど・・聞くと、エア・フィールドって魔法があるそうで、それを使えば水の中に入っても地上と同じように行動できるらしい。


ノヴァ・クリムゾン・グレイグ超炎の激発!」
アルティの炎の魔法が凍った湖に炸裂する。轟音が響き渡り、凄まじい水蒸気がうねりながら立ち上がる。湖周りの視界がなくなり、アルティの姿が見えなくなった。俺たちは危ないからと、彼女に言われてかなり離れた場所からそれを見ていた。

「あいつ、人間のくせに相当強力な魔力を持ってるね」
「ニャン太でもそう思うかい、彼女は全能の秘神と呼ばれている、伝説の大賢者らしいからね」
「ほほう、その名なら聞いた事あるよ、確かアルティ、ルソッティ」
「そうそう、すごいよニャン太、物知りじゃないか」
「紋次郎様、一応その方は神族ですから・・・」
リンスは少し呆れ気味にそう紋次郎に指摘する。
「あ! すごい氷全部溶けてる」
水蒸気が晴れ、視界が回復すると、そこには凍った湖はなくなり、普通の地底湖が存在するだけであった。紋次郎は子供のようにはしゃぎ、湖の方に走っていく。

「ハーフエルフ君。紋次郎はあれでいいんじゃないかな。君たち人が僕たち神族を敬ってくれるのはよく知っているけど、たまには隣にずけずけ座り込んでくれるのも悪くはないものだよ」
「そうですね」
そう言ってリンスは少し微笑む。そしてニャン太に向かって意地悪い笑顔でこう言う。
「じゃーニャン太。私たちも行きましょう」
「うぬ・・」

「さて、採掘には誰が行きますか?」
「ワシが行こう。採掘スキルを持っておるし、結晶石の知識もあるから適任じゃろう」
「そうですね。ここはメタラギに任せましょう」
「わかりました、では魔法をかけます。エア・フィールドは20分しか持ちませんのでそれまでに上がってきてくださいね。あと、永久氷河岩の周りはすごく気温が下がっています。長くそこにいると凍えてしまいますので気をつけてください」

エア・フィールド大気空間!」
アルティの声とともに、メタラギの体の周りに、しっかりとしたシャボン玉のような丸い層ができる。
「それじゃあ、行ってくるわい」
そう言ってメタラギは湖の中へ入っていた。ふわりふわり、ゆっくりメタラギは沈んでいく。

それから15分ほど経って、メタラギが戻ってきた。手には美しく白銀に輝く青白い石を持っていた。どうやら採掘は成功したようだ。

「無事でよかったよメタラギ」
「無事なもんかぁ! 永久氷河岩の周りは信じられんほど寒かったんじゃぞ! 震えが止まらんわ」
そう言うメタラギは確かにブルブルと寒そうに震えている。確かにこの湖を凍らすよな冷気を放っている所だからそりゃ~寒いよね。

「間違いなくブフの結晶石ですね。ミッション達成です」

今回の目的であるブフの結晶石を手に入れることができた。後はこれを餌に、リンスの仇をおびき出すだけである。
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