ジリ貧迷宮主が教える──ハーレムダンジョンの作り方

RYOMA

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迷宮主誕生

妖精王

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ある山奥に、静かで平和な妖精の国があった。その国には双子の王女がいた。二人はとても仲が良く、何をするのもいつも一緒だった。しかし、そんな時、二人の母親であり、この国の女王が亡くなった。そして二人の王女のうち一人が女王になることになった。それはいつも一緒だった双子が、初めて別々の道を進むことを意味していた。

優しい姉は、妹を女王にと押した。しかしプライドの高い妹は、それを良しとしなかった。妹は国民の投票で決めて欲しいと願った。それは自分が姉より優れているとどこかで思っていたからかもしれない。しかし、投票の結果は、妹の思うものとは違う結果になった。

いつも一緒の双子、いつも同じ行動をする二人、しかし国民は二人の決定的な違いを見抜いていた。それは心の底から優しく接する姉と、その優しさを真似ているだけの妹の姿だった。

妹はプライドを傷つけられた・・すべてを否定されたようだった。自分は優れていると思っていた。しかし周りはそう思っていなかった。それは周りが無能だから・・無能な奴らは自分のことをわからない、そん奴らはいらない。私には誰もいらない。

妹は壊れた。


紋次郎は泣いていた・・・妖精の話を聞いて心から悲しいと思った。彼女は狂変化した実の妹を殺しに来たんだ。それはすごく苦しく、悲しいことだと思う。
「君・・うっ 君はあれな・・グッ・・たいふぇん・・だね・・」
「何言ってるかわかんないわよ! とりあえず泣き止みなさい」

しかし、自分の話に号泣するこの人間の姿を見て、妖精は何やら心に温かいものを感じた。それは彼女にとって初めての感情だった。

「私はアスターシア、妖精王アスターシアよ」

そう自己紹介したアスターシアの小さい手を取った紋次郎は泣きながら頷く。
「俺は紋次郎。迷宮主をやってるんだ」
「そう、紋次郎。変わった名前ね」

この後、ようやく泣き止んだ紋次郎とアスターシアは、ここから出る相談をする。
「さて、あの宝石魔神をどうするかよね」
「アスターシアはすごく強いのに、あのモンスターには勝てないかい?」
「相性の問題よ、アイツは厄介なことに、魔法攻撃が全く効かないの。私を見ればわかると思うけど、物理攻撃は全くできないからね」
「そうか・・どうすればいいんだろう」
「だからね、紋次郎。あなたが|を倒すのよ」
一瞬、アスターシアが何を言っているのか理解できなかった。
「え? 俺があの怪物を倒すの?」
「そう、紋次郎はいい武器持ってるじゃない、それなら勝てるよ」

アスターシアは呪文の詠唱に入った、それは強力な支援魔法だった。
「グラーディア・エビレールエ・アジュラーダ・・彼の者かのものに英雄の力を授け賜え・・ヒロイックブースト!」
それは英雄強化と呼ばれる超級支援魔法だった。対象のステータスを数倍アップさせる。そしてもう一つ、アスターシアは魔法を唱える。
「エンベレル・クラシエル・ナージャナラ・・・彼の者に鉄壁の守りの加護を授け賜え・・・ゲンブプロテクション!」
鉄壁防御・・そう呼ばれる強力な防御魔法であった。

宝石魔神を倒す為の準備は整った。強力な装備と最強の支援魔法。足りないのは中身の実力だけだろう。

「宝石魔神は後頭部が弱点だから、そこを狙って!」

支援魔法で、強力にアップされた俺の動きは、まさに鬼神のごとく。すごい速さで宝石魔神の後ろに回り込む。しかし、それを察知した宝石魔神は、ノーモーションで俺の方にパンチを繰り出す。その攻撃を左手のアルゴシールドで辛うじて受ける。しかし、重く、強力なそのパンチは、そのまま俺を10メートルほどぶっ飛ばす。

鉄壁防御の支援魔法を受けていなければ、この攻撃で、紋次郎は盾ごしに粉々にされていただろう。

ただ、今の一撃は紋次郎の恐怖心を取り除くには十分であった。攻撃を受けても耐えられる。それは大きな勇気を与えた。

「いける!」
立ち上がった紋次郎は加速する。それは先程より早く、そして鋭い。宝石魔神の攻撃を紙一重で避けて、そのまま後ろに回り込む。そして大きくジャンプした。目の前には宝石魔神の弱点である、後頭部が手に届く距離にある。

「そこよ、紋次郎! 決めなさい!」
力いっぱい、最大限の力で、紋次郎は閃光丸の刀身を叩きつけた。英雄強化により、大幅にアップしたその攻撃は、空気を四散させるほどの衝撃とオレンジ色の閃光を生んだ。宝石魔神の後頭部は大きな亀裂が入り、そこから徐々に崩れていく。

「やった・・・」
「よくやったわ、紋次郎」
そう言ってアスターシアは俺の首元に抱きついてきた。

宝石魔神は崩れて、大きな宝石の欠片の山になった。それを見て俺はちょっと疑問ができたので聞いてみる。
「この宝石って価値あるのかな?」
俺の首にまとわりつきながら、アスターシアは答える。
「どうだろう、多少の魔力は感じるから、無価値では無いと思うけど」
「じゃー少し持って帰ろうかな、戦利品、戦利品」

俺は持てるだけの宝石をカバンに入れた。どれくらいの価値があるか楽しみである。


リンス達は洞窟の下層部へ向かっていた。それは遭難した紋次郎を救出する為である。しかし複雑な洞窟の構造に苦戦していた。

「思ったより複雑ね」
「じゃのう。紋次郎のやつ、厄介な場所へ行きおって」
「ここ、さっき通りませんでした?」
「アルティねーちゃん、多分似てるだけだよ」

「ちょっと見て、あそこ変な光り方してない?」
リンスが指摘した場所は確かに妙な光を帯びていた。一同はそこに近づき、様子を見てみる。それは卵のような形の何かの塊で、淡い光が点灯するように光っていた。
「何じゃろうなこれは」
「これは・・すごい魔力・・・ダメです、少し離れましょう」
アルティの警告で皆、少し距離をとる。

「これはもしかすると魔神玉かもしれないわね・・」
「確かにその可能性はありますね、長く生きていますが、私も見るのは初めてですが・・」
「何じゃそのまじんぎょくってのは?」

「魔物の魔神化の孵化形態です。魔神変異ともいいすが、複数の条件が重なると魔物は魔神化することがあるんです。その変異前に卵のような形態になると聞いたことがありまが、それが魔神玉と呼ばれるものです」

「そんな物騒なもん、さっさと壊した方がいいじゃないか」
「ダメです・・この大きさの魔神玉を破壊すれば、大爆発を起こし、この洞窟が崩壊しかねません」
「ダメだよ! そんなことしたら、お兄ちゃんが・・死んじゃうよ」

「余計な心配は無用かもしれないわよ・・・」
リンスは真剣な眼差しで魔神玉を睨みつけ、そう告げる。そして静かに戦闘の態勢に入った。魔神玉はその点灯が無くなり、外壁に亀裂が入っていた。

「孵化するのか!!」
「そのようです」

4人はそれぞれ戦闘の準備をする。生まれてくる相手は魔神級の強敵。さすがの高レベルの冒険者でも緊張が走る。
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