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職員室

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なぜかその後の話で、俺と天野さんは生徒会付けというよくわからない役職を与えられた。要は便利に使われる為だけの名目なのだろうけど、それをクラスメイトたちは良く思って無いようだ。

「うちのクラスの仕事は職員室前の瓦礫の撤去に決まった。動ける者は用意してすぐに向かうよ」
「めんどくせえな、俺たちがどうしてそんな力仕事しなくちゃいけねえんだよ」
「城之内、どうしてそんなの受けてきたんだよ! 馬鹿じゃねえのか!」

東雲たちはよほど動きたくないようで城之内を批判する。

「仕方ないだろ、生徒会長に決められたんだから」
「そもそも生徒会長って言っても俺たちと変わらないただの生徒だろうが、そんな奴にどうして指示されないといえないんだ」
「そうだそうだ! 断固抗議するべきだ!」

よほど力仕事をするのが嫌なのか猛烈に拒否してる。さらに不満の矛先は俺と天野さんにも向かってきた。

「しかも桜宮と天野は生徒会付けってなんだよ! どうやって生徒会長に取り入ったか知らねえけど、俺たちを監視するとか調子のいいこと言ってんじゃないのか!」

苦労するのが嫌なだけのヒステリーに付き合う気はない。的確になるべく短く反論した。
「クラスに割り当てられた作業にも参加して、生徒会の手伝いもしなきゃいけなくなった俺たちに、そんなことしてなんのメリットがあるんだ? できれば代わって欲しいくらいなんだけど」

いつも反論もしてこない俺からの的確なカウンターに東雲たちはわかりやすく動揺していた。そこへさらに言葉を続ける。

「別に俺たちは生徒会の回し者ってわけじゃないけど、この先、物資は生徒会が管理することになっている。わざわざ印象を悪くして、分配に影響がでても馬鹿らしいんじゃないのか?」

あの生徒会長が、自分に逆らったといって配給を少なくするような人間には思えないけど、自分がすることは他人も必ずすると考えているクラスメイトたちには効果があったようだ。険しい表情には変わりないが文句を言う口は塞がった。


それから俺たちは他のクラスの連中と共同で、職員室前の瓦礫の撤去の作業に取り掛かった。五つのクラスが作業に参加しているので100人くらいの人数がいる。これはすぐに終わると最初は思ったけど、がれき撤去なんてしたことない生徒にとっては未知の作業だったようで、思い通りには進まない。

「明かりをこっちにもくれ、怪物が襲ってきたらどうするんだよ!」
「スマホの充電だって限界があるだんぞ! そんなにそこらじゅう照らすほど余裕があるわけないだろ! バリケード担当のクラスが侵入できそうな場所を塞いでいるから、暗くても多少なら大丈夫だから心配するな!」

職員室の前の廊下は損傷が激しく、蛍光灯が壊れて明かりをつけることができなかった。その為に、スマホで照らしながら作業しているのだけど、やはり暗闇の恐怖が植え付けられたのか、暗い場所での作業はみんな嫌がる。

「もうちょっとで職員室のドアが開くぞ、頑張ろう!」
どこかの三年生が声をかける。もう少しだとわかると元気が戻ってくるもので、作業スピードがあがった。

半日ほどの作業で、なんとか瓦礫を撤去できた。丁度良い頃合いに、生徒会長が様子を見に来ていて、すぐに職員室の中の様子を確認することになった。

「中に怪物がまだいるかもしれない、注意して開けてくれ」
あの怪物が潜んでいるかもしれないので、明かり照らしながらゆっくりと扉を開ける。少し開いた隙間から中を覗き込むが、動く気配はない。どうやら怪物はいないようだ。

「なんか変な匂いしないか?」
扉を開いた生徒が異臭に気が付いた。確かに芳香剤のような少し甘い香りがする。

「ちょっと見ろ、あれはなんだ!?」

職員室の窓際に、何かが並んでいた。最初は観賞植物が並んで置いているかとも思ったけど、よく見るとそれは少し動いていた。ゆっくりと近づき確認すると、その正体が判明する。冷静なことには自信があったが、流石にその正体がわかるとゾクッと全身に寒気が走る。

「みんなくるな!」

そう警告したが遅かった。俺の後ろから、恐る恐る一緒に職員室に入って来た連中もそれを見てしまった。全員が悲鳴を上げて騒ぎ始めた。

「きゃーー!!」
「うっわわわ~!」

そこにあったのは人の生首だった。恐怖を感じるのは頭だけになっているのにまだ動いていることだった。口をパクパクさせて何か言いたそうにこちらを見ている。よく見ると、切り口の首にいくつもの植物の蔦のようなものが接続されているけど、まだ動いていることと関係しているのだろうか。

「皆川先生!」
「ちょっとこっちきてみろよ、学年主任の新井もいるぞ……おえっ……気持ち悪い」

「何が起こってるのかもわからないのに不用意に近づかない方がいい」

生徒会長の声にみんな従い、生首の並ぶ場所から遠ざかる。しかし、それと反して、近づくなと言った生徒会長は生首に近づいた。

「この蔦から生かすために栄養を送っているか……違うな、人間の脳から栄養素を吸い取ってる」
「俺もそう思います。見て下さい、あそこに蕾が……どうやら先生たちはこの植物の栄養源にされているようです」

俺の意見に生徒会長は頷く。
「もう、先生たちは助からないだろう。この植物ごと焼却するのがいいかもね」

先生たちを焼却するという判断を迷いもなく行えるのは凄いと思った。やはり、この生徒会長はただ者じゃない。
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