クラス群雄伝 異世界でクラスメートと覇権を争うことになりました──

RYOMA

文字の大きさ
上 下
111 / 174
北の列国

双頭の竜

しおりを挟む
デナソイエスは、族長の家の者を皆殺しにすると、外の部下に命令を下した。
「里の者を皆殺しにしろ! 竜騎士など飛竜に乗らなければ恐れる必要はない!」

外の兵の合図で、里の下で待機していたアクザリエル帝国の兵が、里へ突入してきた。その兵数は五千。不意をついたこの規模の集落を殲滅するには十分の戦力であった。

アクザリエル軍は、まずは飛竜のいる飛空所を狙った。竜騎士に飛竜に乗られることを恐れているのである。

「あの建物が飛空所だ。火を放って焼き払え!」

ドラグネ族も異変に気がついて、次々と集まってきた。飛空所に火がついたのを見て、すぐに消化しに行く。そんなドラグネ族をアクザリエル軍は容赦なく襲いかかる。

竜騎士として絶対的な力を持っているドラグネ族であったが、陸に降りては、その力を発揮することはできなかった。多勢に無勢のこの状況で、少しずつ追い詰められていく。


ファシーとヒュレルは、山の上の山小屋で、下の里の異変に気がついた。外に出て里の様子を見ると、里が燃えているが見える。
「あ・・里が・・」
一緒に居たアフオンもその光景を見て言葉を失う。

「すぐに里に戻りましょう。アフオン。あなたはここにいなさい」
「そうね。行きましょう」

「ぼ・・僕も行きます」
「ダメです。あなたはここにいなさい」
「そうね。危険ね」
「あれは僕の里です! 家族も、相棒も待ってるし・・僕は行かないと・・・」
「・・・わかりました。私たちから離れないでください」
「そうね。守ってあげます」

ファシーたちは山を降りてすぐに里へ戻った。そこは激しい戦地へと変わっていた。すぐに数人の兵がファシーたちに襲いかかるが、双子の華麗な連携で素早く斬り伏せる。

三人はアフオンの家に向かった。家に近づくに連れて、少年の顔色が不安なものへと変わっていく。

「母さん! 父さん!」
家に着くと、すぐにアフオンは叫びながら家に飛び込んだ。それに続いてファシーとヒュレルも中に入る。だが、家の中はすでに血の海であった。アフオンの母も父も血だらけで倒れていて、すでに事切れていた。そんな家族を見て、アフオンはその場に泣き崩れる。

ファシーもヒュレルもそれを見て、激しい怒りが湧いてくるのを感じていた。
「アフオン・・・家に隠れていなさい」
「そうね。私たちは少し外で暴れてきます」

アフオンの家を飛び出した双子の少女に、いつもの優しい面影は無くなっていた。そこにいるのはまさに鬼神であり、アクザリエル軍にとっては厄災そのものだった。

二人は、目につくアクザリエル兵はすべて斬り伏せていた。凄まじい速さの斬撃と、トリッキーな動きに、数多くいるアクザリエル兵は為す術もなく屍を増やしていく。そんな二人の目に、その辺の雑兵とは明らかに違う気配の集団を見つける。それはデナソイエスと、その護衛であった。

「ヒューちゃん。敵将見たいだよ」
「そうね。ファーちゃん。倒しちゃいましょう」

ファシーとヒュレルは神速の速さで接近すると、取り巻きの数人を一瞬で斬り倒す。そして小太りの敵将を討ち取ろうと斬りかかった。だが、二人の刃は、寸前のところで弾き返された。

「くっ・・」
二人の攻撃を防いだのはシフーカとブガデイであった。二人の剣士は、さらに襲撃者である少女に、斬撃を繰り出して返り討ちにしようとした。だが、その攻撃は簡単に避けられる。そこから二人の剣士と、二人の少女の激しい攻防が始まる。

「おい。早く片付けろ」
デナソイエスにそう言われたシフーカとブガデイであったが、心の中ではこう返事をしていた。簡単に言うな、この女ども只者じゃないと・・

ファシーとヒュレルは、相手がかなりの使い手だと感じて、本気の戦闘モードに移行する。普段二人は、いつ終わるかわからない戦場では、全力でその力を使うことはせず、常に余力を持って動いていた。しかし、手を抜いて戦える相手ではないと悟ると、そのリミッターを解除した。

一瞬で形勢が双子の少女たちに傾く。シフーカとブガデイは追い詰められていき、ファシーの一撃が、ブガデイの体を貫く。ブガデイが倒れ、2対1の状況になると、シフーカは勝てる見込みがないと後ろに引いた。

さらにファシーとヒュレルが後ろに引いたシフーカを斬ろうと前に踏み込むが、異様な気配を感じて、逆に後ろに下がる。

「ヒューちゃん・・気をつけて・・兄様と同じ匂いがする・・」
「そうね。ファーちゃん。危険な匂いよ・・」

シフーカとブガデイでは手に負えないと前に出てきたのは、黒衣の騎士であった。

「そうだジベルディ。斬り伏せろ!」
威勢の良いデナソイエスの声に応えるように、ジベルディが動いた。それは常人では消えたようにしか見えない、凄まじい速さであった。兄、クリシュナとの訓練で、常人でない速さに慣れているファシーとヒュレルでも、辛うじて反応するのがやっとであった。強烈な一撃をヒュレルが剣で受けると、受けた細身の剣がすごい音でブッチと折れる。ファシーは二つの短剣を重ねるように攻撃を受けるが、軽い彼女の体ごと、ものすごい勢いで吹き飛ばされた。

殺られる・・・二人は敵の力量を図り、そう感じていた。
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

Re:Monster(リモンスター)――怪物転生鬼――

金斬 児狐
ファンタジー
 ある日、優秀だけど肝心な所が抜けている主人公は同僚と飲みに行った。酔っぱらった同僚を仕方無く家に運び、自分は飲みたらない酒を買い求めに行ったその帰り道、街灯の下に静かに佇む妹的存在兼ストーカーな少女と出逢い、そして、満月の夜に主人公は殺される事となった。どうしようもないバッド・エンドだ。  しかしこの話はそこから始まりを告げる。殺された主人公がなんと、ゴブリンに転生してしまったのだ。普通ならパニックになる所だろうがしかし切り替えが非常に早い主人公はそれでも生きていく事を決意。そして何故か持ち越してしまった能力と知識を駆使し、弱肉強食な世界で力強く生きていくのであった。  しかし彼はまだ知らない。全てはとある存在によって監視されているという事を……。  ◆ ◆ ◆  今回は召喚から転生モノに挑戦。普通とはちょっと違った物語を目指します。主人公の能力は基本チート性能ですが、前作程では無いと思われます。  あと日記帳風? で気楽に書かせてもらうので、説明不足な所も多々あるでしょうが納得して下さい。  不定期更新、更新遅進です。  話数は少ないですが、その割には文量が多いので暇なら読んでやって下さい。    ※ダイジェ禁止に伴いなろうでは本編を削除し、外伝を掲載しています。

婚約破棄?一体何のお話ですか?

リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。 エルバルド学園卒業記念パーティー。 それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる… ※エブリスタさんでも投稿しています

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

転生した体のスペックがチート

モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。 目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい このサイトでは10話まで投稿しています。 続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

ファンタジー
〈あらすじ〉 信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。 目が覚めると、そこは異世界!? あぁ、よくあるやつか。 食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに…… 面倒ごとは御免なんだが。 魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。 誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。 やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

処理中です...